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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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2万リク:Machine child_04(夕多様)

2009/02/21(Sat)18:34

最後です。
3ではエアーがへたれてすいませんでした;彼は不器用な男です。








【Machine child_04】





 第二ラボはプログラムを組むための端末が置かれている場所だ。クラッシュは入り口のセンサーにコードを送って扉を開けると、そっと中を覗き込む。
 照明はついておらず、モニターと計器のランプだけが明かりとなってメタルのシルエットを浮かび上がらせていた。どうやら端末に向かってプログラムを作っているようだ。戦闘以外でもさまざまな面で優秀さを発揮するメタルには仕事が多く、任務の後もこうして別行動を取っていることは多い。
(俺の代わりを作ってる……?)
 そう思うと、どことも知れない場所がずきりと軋みんだ。驚いて回路をチェックしたが、異常はない。背部にややダメージが残っているが、今の軋みとは無関係に思える。
(俺……ほんとに、壊れちゃったのかな)
 役立たずは廃棄されても仕方がない、と思う。だが、一度も褒められないまま捨てられるのかと思うと哀しかった。それとも、褒められることのない存在だから捨てられるのか。
 入り口に立ち尽くしていると、不意にメタルがこちらを向いた。
「何か用か?」
「あ……お、俺……」
 ごめんなさいと言いにきたのに、何も言えず俯いてしまう。その様子を見て何を思ったのか、メタルは言った。
「こっちへおいで」
 それは常のメタルに比べれば驚くほど優しい口調で、クラッシュに少しだけ勇気をくれた。傍に行き、兄の座っていたベンチの隣に腰掛ける。メタルは端末のデータを保存すると弟に向き直った。
「どこか異常はないか? 内部にダメージを与えたから、後でお前もメンテナンスをしないとな」
 メタルは言葉を切り、弟の頬に触れた。
「……殴って済まなかった」
 それは背中を強打したことを言っているのだろうか。
 それとも、頬を打ったことだろうか。
 多分後者だろうと思った。メタルはクラッシュに手を上げるつもりなどなかった。だからすぐ後悔して、痛そうな顔をしていたのだ。
「……ごめんなさい」
 メタルに手を上げさせた自分は何と悪い子なのだろう。
 自己嫌悪に打ちひしがれるクラッシュにメタルが言う。
「皆には謝ったか?」
「うん」
「仲間を傷つけたことを、後悔しているか?」
「うん」
「ならいい」
 どうやらメタルはもう怒っていないらしい。それでもクラッシュの心は晴れず、しょんぼりしたまま画面を指した。
「これ、俺の代わりの新しい子?」
「…………?」
 問われたメタルは、何を言われたか理解ができないという顔をした。
 クラッシュはもう一度尋ねる。
「俺は廃棄して、新しい『クラッシュマン』を作るんだろ?」
「……何を言っているんだ、お前は?」
「だって俺、一度もメタルに褒められたことない……だめな子だから……」
「…………ああ」
 言われて記憶を検索したメタルは、やや肩を落とした。
「そういえば、そうだったな」
「だから、もっと……ちゃんとした弟を作るんだろ?」
「そうじゃない、クラッシュ」
 自分の言葉にどんどん落ち込んでいく弟を遮り、メタルはため息をついた。
「これは新しいナンバーズじゃない。お前のメインシステムと戦闘プログラムの摩擦を軽減するためのソフトだ……まだ開発中だがな」
「……?」
「暴走の元になる戦意や破壊衝動は、本来は戦闘プログラムにキックされた正常な反応だ。『心』を持つ俺たちは、人間と同じく攻撃的な感情なしに戦うことはできないからな」
 自分の代わりになるロボットを作っているものと思い込んでいたクラッシュは、ぽかんとした表情で生真面目に説明を続けるメタルを見つめた。
「だが、それに飲み込まれれば自我を失う可能性がある。これは俺たちだけでなく、古来から戦いの場に置かれた人間にこそ起きてきたことだ。力に溺れ、血に酔って正気を失った人間は数え切れない。お前に搭載された戦闘プログラムはかなり高度なものだが、その演算能力とメインシステムであるおまえ自身の意志のすりあわせが上手くいっていないようでな……これはむしろ、お前よりも戦闘プログラムの方の欠陥だ。齟齬によるストレスでオーバーヒートする前に安全装置が働き、メインシステムに裂く領域を減らしてしまう――以前、暴走中は半分眠ったようになると言っていただろう」
「……う、うん」
 最後の部分だけ何とかわかったクラッシュは慌てて頷く。相手が自分の話をまったく理解していないことを知ってか知らずか、頷き返したメタルは淡々と続けた。
「それもまたお前を守るための正常な働きではあるが、その間敵味方識別信号が作動しなくなるバグが発生するし、度が過ぎれば『心』を――人格を失ってしまう可能性もある」
 メタルは言葉を切り、じっと弟を見つめた。
 その赤い瞳の中に浮かぶ淡い揺らぎを、クラッシュは『怯え』だと思った。
「お前が意志を手放して戦うとき、お前が壊しているのは周りのものだけじゃない。自分自身を、一番危険にさらしているんだ」
 メタルは怖がっている。
 きっといつも、怖がっている。
 失うかもしれないと怯えてる。
 でも、メタルは皆のリーダーだから、一生懸命それを隠している。
「クラッシュ……お前には『破壊』の名がつけられたが、お前はただの爆弾ではない。意志を持った爆弾だ。お前が破壊をもたらすとき、そこにはお前の意志がなければならない。衝動の命じるままに壊すのではなく、お前が壊すべきと思ったものを壊すために戦闘プログラムの力を借りるのでなければならない」
 メタルの言葉はどこまでも厳しく、要求されることはとても難しいけれど。
 それは全て――
「お前が『力』に振り回されずに済むよう、俺もワイリー博士も全力を傾ける。だから……自分を欠陥品などといって卑下したり、自分を無駄に危険にさらすようなことはするな」

 ――俺から大事な弟を奪わないでくれ。

 最後のかすかな囁きも、ロボットであるクラッシュにははっきり聞こえていた。クラッシュは幼さの残る顔をくしゃくしゃに歪め、ぼろぼろと涙を零した。
「お、おれ……メタルに、嫌われたと、思……っ」
「俺が弟を嫌いになることなどない」
「じゃあ、……じゃあ、俺、いらない子じゃ、ない? メタルの……おとうとで、いて、いい……?」
「さっきからそう言っている」
「ゔ~っ……ゔゔ~~っ」
 喜びと安堵と共に、相手に嫌われ捨てられると思い込んでいた自分への情けなさがぐるぐる回って、クラッシュは泣きわめく代わりに唸った。メタルは不器用に泣く弟に手を伸ばし、肩の刃に触れないようにそっと抱き寄せる。
 クラッシュは驚いたが、よしよしと頭を撫でられて喜びに胸が熱くなった。
「俺に褒められようとしたのか」
 こくりと頷く弟を抱きしめ、メタルは「すまない」と言った。
「何も言わなくても、ちゃんと見ている。だから、無理をするな」
 そしてメタルは今までクラッシュに与えてきた任務を思い出し、反省する。
「確かに、今までお前には『壊せ』としか命じて来なかったな……今度はもっと別の役目を与えることにしよう」
「え……?」
 壊す以外の任務――クラッシュには想像もつかない。
「おれ……っ、ちゃんと、できる……か……わからない」
「そんなことはない。お前がやろうと決意したことなら、どんなことだって出来る」
 メタルは淡々と――しかし自信満々に言い切った。
「お前はワイリー博士の造った優秀なロボットだ。そして、『優秀なロボット』とは不得手があっても不可能のないロボットのことを言う。お前は、いい子なんだよ……クラッシュ」
「…………っ」
 穏やかな声に含まれた深い愛情に新たな涙が溢れる。クラッシュはメタルを抱きしめ返し、自分たちを包む鋼鉄の匂いに気づいた。
 脳裏に再生されるのは、目覚めた自分を祝福する創造主と兄の声だ。
 人に造られし機械の子は、それゆえに幸いに満ちている。
 生じた『心』は奇跡。意志こそ『力』だ。
 もう、忘れはしない。
 メタルは自分を『いい子』だと言ってくれたのだから――誇りを抱いて、戦える。


 後日、クラッシュに話を聞いた兄弟たちが、「メタルによしよしされた」彼をひそかに羨んだのは言うまでもない。





+++++++


長くなりましたが、これで終わりです。
夕多様、リクエストありがとうございました。ご想像より重い話になってしまったと思いますが、ちゃんと兄弟なメタルとクラッシュが書けているでしょうか?(汗)楽しんでいただければ幸いです。



拍手[4回]

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No.108|キリバンComment(2)Trackback()

Comment

ふおおお…!!!

2009/02/21(Sat)20:12

 クラッシュ……わたしにもよしよしさせてぇええ!! ε=\__○ノズザー  →クラッシュ


 と、取り乱してしまってすみません…。まさかあんな端的なリクエストで、こんなに素晴らしいお話が拝めるなんて! 感激極まりないです!
 リク内容以外にも、兄弟総出演だったり、クイックとフラッシュが軽口を叩き合ってたり、みんな仲が良かったり、メタルお兄ちゃんの激怒が見られたり、サプライズ満載でとても楽しく読めました。以前『速度狂の停滞』で怒られていたクイックが今回は褒められて嬉しそうなのも、微笑ましかったです(^^)
 メタル兄さん、今度は他の弟にも是非よしよししてあげてください。……もしよければわたしにm(ry


 リクエストに応えて頂いて、どうもありがとうございました!
 これからも末永くストーk…もとい、見学させていただきたく思います。お心のままに、がんばってください。

 読後の勢いの感想ですので見苦しい点も御座いますが、勘弁願います;;

No.1|by 夕多|URLMailEdit

無題

2009/02/22(Sun)23:41

夕多さま、コメントありがとうございます。うちのクラッシュでよければいくらでもよしよししてあげてください!!

いろいろネタを詰め込みすぎてしまいましたが、楽しんでいただけてよかったです。クイックのアレは……なんだかすごく書きたくなってしまいまして(^^;)リーダーに褒められたいなんて、なんだか弟たちが犬っころのようですね。メタル、犬嫌いなのにww


この度はリクエストありがとうございました!これからものぞいてやってください!

No.2|by 朱月|URLMailEdit

Comment Thanks★

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