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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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2万リク:Machine guardian_01(sei様)

2009/02/22(Sun)22:33

sei様のリクエストも書き終わりました!大変お待たせいたしました!

リクエストはAIメタルとブルースの話ということで、ブルースがワイリーに拾われた後の話を書かせていただきました。ブルースが無口なのでややメタルのセリフが多いです。また、最後のほう、ちょっとだけギャグになります。でも愛は込めてますよ!!
seiさま、受け取ってくださいませ!


<ブルースの設定について>
そもそもブルースは世界初の人型ロボットでよかったのかと調べたのですがよくわからず……「ライト博士が作った」中では始めての戦闘用人型ロボットだとすると、先に他の人が人型ロボットは作ってたことになりますし……そもそも初めてなのは「人型」なのか「人型でかつ戦闘用」なのか。後者だとブルースの前にも人型ロボットがいたことになってしまうし……と悩みまして、結局「世界で初めてライト博士が完成させた人型ロボットであり、世界初の『心(感情)』を持ったロボットであり、メインの機能は戦闘である(戦闘用ロボット)」ということにしました。
本当は違うかもしれませんが、ご了解下さい。




では本編。5つに分けてアップします。




【Machine guardian_01】




右の剣で災いを裂き 左の盾で護りますよう


「ふう……」
 窓辺の椅子に腰掛けたブルースは、何度目かのため息をついた。建物の最上階に位置するこの部屋からは、知らない街の景色が良く見える。ちょっと外を歩き回ってみるくらいたやすいことなのに、何故か自分はそうしない。
 DRN.000ブルースが製作者であるトーマス・ライト博士の元を逃げ出したのは二週間ほど前のことだ。思い返せば、ライト博士の研究所にいたときも自分はこうして外を眺めてばかりいた。ライト博士は何度も「外に出たいのかい?」と聞いてくれたが、いつも首を横に振って断った。
 外に出てみたい――その思いは強かったけれど、恐怖が勝っていた。
 ブルースが研究所を出るのはいつもライト博士と一緒で、行く先では常に大勢の人たちに囲まれていた。彼らは口々にライト博士とブルースを誉めそやし、質問し、あるいは離れた場所から悪意ある視線と囁きを向けていた。
(ヒトは嫌いだ……)
 外には出てみたかったが、話しかけられるのが嫌だった。
 何せ自分は『世界初の心を持った人型戦闘用ロボット』なのだ。興味を示すのはロボット工学者だけではない。人工的に作られた心は果たして本当に心と呼べるのかと議論する心理学者、ブルースの戦闘能力に興味を示す軍事関係者、人型ロボットを介護などに役立てられないかと思案する福祉関係者――人が『ヒト』を生み出すことを禁忌と考え、ライト博士を非難する宗教関係者。
 誰にとってもブルースはモノでしかなかった。今はまだ格専門家の間だけに知られる存在だったが、一般の人々にも公開されればさらに多くの好奇と懐疑の目にさらされるのだろう。所詮自分は目新しい玩具に過ぎない。そう悟ってブルースは心を閉ざした。表面上は丁寧に受け答えし愛想笑いさえしてみせたが、他者に興味を抱くことはなかった。『ブルース』を、人格を持った個人として扱ってくれるのはライト博士だけ――そう思っていた。
 それが揺らいだのは、作られてから半年ほどしてからだ。
 ブルースの動力炉に欠陥が見つかったのだ。それを修理する際、人格が変わってしまうかもしれないと告げられたブルースは、そこで初めて製作者に疑いを抱いた。
 動力炉と人格をつかさどるコアは別物のはず。
『お前自身に関わることじゃからな……周りはなんのかの言っておるが、わしは無理強いしたくない。よく考えて決めなさい』
 ブルースは考えた。
 ロボット工学のことなど何も知らなかったが、研究所のライブラリを使って必死に調べた。なぜ動力炉を直すことで人格が変わってしまうのか――どれだけ調べても因果関係ははっきりせず、答えは出なかった。
 このままでは自分は死ぬ。
 生きることを選択すれば、自分が自分でなくなってしまう。
 ブルースの苦悩が始まっても世界は何一つ変わりなく、いつか外を歩いてみたいと願った姿のまま、ガラス窓の向こうに景色は広がっていた。
 人格が変われば、その願いは叶えられることなく消えてしまう。
 外に出たい、と強く思った。
 動力炉が停止する最後の瞬間まで歩き続けて、この窓の外に広がっている景色を見たい。
 この強い衝動を『感情』と呼ぶのだと、初めて知った。
 ブルースは、研究所を逃げだした。
 何処へでも、行きたい場所へ行けるという歓びを知った。
 誰も自分のことを知らないのが可笑しくてたまらない。
 人間の服を着ていれば、誰も自分のことを『モノ』だとは思わない。
 何処までも広がる空の、なんと美しいことか。
 肌に触れる風の、なんと心地よいことか。
 あらゆるセンサーを駆使して感じた世界の全てが愛しく、一歩ごとに少しずつ壊れていく自分の中身のことなど、もはやどうでも良かった。
 歩いて、歩いて、結局隣の街まで辿り着いて、そこで遂に力尽きた。
 後悔はなかった。
(まぁ……こうして生き残ってしまったわけだが)
 ブルースを修理したのはライト博士のライバル、ワイリーだった。動力炉を修理するのではなく別のものに入れ替えることでブルースを生きながらえさせたのだが、彼にも動力炉の修理と人格のフォーマットは結びつかないという。
(ライトは俺に一体何をするつもりだったんだ?)
 製作者への疑心と、人間への嫌気がブルースから敬意を失わせていた。かつては敬語で話していた口調も通常の男性口調に設定し直している。もう誰のことも尊称をつけて呼ぶ気になれない。父であるライト博士でさえ。
 それにしても、死にかけていた時はあれほど外に出たかったと言うのに、命を拾った途端以前と同じ状況に逆戻りしてしまったのは何故なのか。もう十分『外』を見たとは思っていない。もっとたくさんのものを見てみたい。それなのに――
 うつむくブルースの聴覚センサーに、電子合成された成人男性の声が届く。
《ブルース様、先ほどからまったく動いておられませんが、機能停止しておいでですか?》




>>【Machine guardian_02】







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No.109|キリバンComment(0)Trackback()

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