フラロールです。フラロルのほうが短くていい。
4月1日ネタです。本人たちに聞けば否定すると思いますが、もう付き合ってるみたいです。時間軸的には結構先なのかな。
少女マンガですよ?ええ、少女マンガですとも。ハッピーではありませんが暗くもないです。
フラロル同志さんはメタクイ同志さんと同様随時募集中です。応募しても何もありませんけどねww
タイトルはお題配布サイトからいただきました。
【できるだけ心を込めて嘘をついてあげる】
私は今日、街の南にある公園へ行った。いつもは行かない公園だけど、市が立ってると聞いたから。「誰にそんなことを聞いたのか」とは訊かれなかった。代わりに「一緒に行こうか?」と荷物持ちを買って出てくれた弟がいた。けれど私は「そんなに沢山買うつもりじゃないから」と断った。今日は嘘をついてもいい日で良かった。
ほんとは一緒に来て欲しくなかっただけなんだけど、そんな事言えるわけない。
公園であの人といつものように『偶然会』った。
「よぉ、お嬢ちゃん」
噴水の前にいたあの人は、私を見てそう言う。
皮肉っぽく唇を歪めて、でも目許だけで優しそうに笑う。
苦しい。故障したのは私の『心』だ。これはライト博士にも直せない。直して欲しくもない。
駆け寄りたくなるのを必死に我慢して、私はすまし顔を作る。
「あら、奇遇ねフラッシュマン?」
「アンタがこっちに来るのは珍しいな」
「たまたま、気が向いただけよ」
お決まりのやり取りの後、私たちは『たまたま』同じ方向に歩き出して、『偶然』同じ店に興味を持ち、いくつか買い物をして、あの人は荷物を持ってくれて、『一つ食べるのは多すぎるから』と露天で買ったアップルパイを二人で分け合って試食した。美味しかったらお土産に買おうと思ったけど、これなら私の方が上手だ。新鮮なリンゴが売っていたから、代わりにあれを買って帰ろう。
デートなんかじゃないって苦しい言い訳だと思うけど、やっぱり本当のことは言えない。
これからも私とあの人は『偶然会』い続けるだろう。
時間と場所を知らせるメールは秘密の回線で私に直接送られてくるし、数バイトのメッセージは三十秒後に自壊してメンテナンスにも引っかからない。
私はそこへ行ってもいいし、行かなくてもいい。
だって、約束なんかしていないのだから。
あの人は自分の用事で近くに来るのを知らせてくれるだけで、私がいようといまいと用事を済ませるだけだから。
だからこれは、デートなんかじゃないの。
五十センチの間を空けて、私とあの人は並んで歩いた。沢山の花を並べた露天でチューリップを買った。私は研究所に飾るつもりだったけど、あの人は二つ下の弟が好きだからと言って球根をいくつか買っていた。それから、私が買ったのと同じ色を一本だけ。
何のつもりだろう。
公園の出口で、あの人は持ってくれていた重い荷物を私に返した。ここでお別れという印。
研究所までは自分で持って帰らなきゃいけないから、あの人と『偶然会』った時は買い過ぎないように気をつけている。
「これやるよ」
あの人は持っていたチューリップを私が買ったチューリップの中に紛れ込ませた。
「何のつもりよ」
「お嬢ちゃん」
「何よ」
「好きだよ」
いつも意地悪なことばかり言う声は、優しくさらりとそう言った。
「何でこんな日に限ってそういうこと言うの」
「こんな日だからだよ。他の奴は嘘だと思えばいい。でも俺はそういう嘘は言いたくないし、お嬢ちゃんだけはそれを知っていればいいだろ?」
嘘のふりをして本当のことを言ったのだと、あの人はそう言っていた。
チューリップは四月一日の誕生花で、花言葉は『恋の告白、思いやり、真面目な愛、正直』。あの人は目つきが悪いし、たまにチンピラみたいだけど、時々すごく気障だ。
皮肉な笑みを浮かべた口元と、優しく細められた目を見つめて私は言った。
「嫌いよ」
あの人が嘘のふりをして本当のことを言うのなら、私はできるだけ心を込めて――
「貴方なんか大嫌いよ」
ロボットは便利だ。
迸りそうな感情も、プログラムで縛ってすまし顔の下に隠せるから。
昔はこんなこと出来なかったのにな。
あの人に会って、私は随分嘘が上手くなった。
「そっか」
あの人は優しく笑って、大きな手で私の頭を撫でた。
「じゃあな」
「ばいばい」
後ろ姿が軽く手を上げて別れの挨拶を送ってくる。
苦しかったけど、この故障は直して欲しくなかった。
私はあの人の側には行けないし、あの人が私の側に来るわけがない。
いつまでも偽りの『偶然』を重ね続けられるわけもない。
大好きと叫んであの人を抱きしめられないなら、ずっとこの痛みを抱いていたかった。
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フラロルネタを考えていたら「You got mail」が浮かんだのでこんな話に。「~で偶然会わないか?」ってシーンがすごく好きなんですよ。あの映画大好きです。私の中のフラロルってあんな感じです。久しぶりにDVD観たいな。
二人が必死に隠してるのはバレたら危険だからです。主にフラッシュの命が(笑)
前にもちらっと書いたけど、うちの子たちは味覚もあるしものを食べることもできるけどエネルギーにはなりません。お土産にするかどうかの純粋な味見だから一切れ食べるのは「多い」んです。そんなどうでもいい補足。
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