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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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2024/05/15(Wed)15:15

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006-03:再構築_05(ALL、exM)

2009/04/01(Wed)23:15

昨日半分書いたので文章のイメージがなんか違うかも。尻切れ気味なのはいつもと同じダメ使用。
……本当は腐向けになるのかなぁ。M←Qカミングアウト編です。エアーが超絶鈍感になった。









【再構築_05 sleeping you】



 いつだったか、家族全員で乗ってハイウェイを走らせ、遠くの街までお出かけしたあのトレーラーは、廃棄された基地の隅にまだ放置されていた。
 埃と油にまみれて汚れたそいつを、主に運転手を務めていたクイックが綺麗にした。
 兄弟が生まれたいくつものラボは半分くらい壊されていたが、無事な修理用カプセルが一つだけ見つかった。大柄なエアーやウッドも入れるような、縦置きの円筒形のやつ。ナノマシン溶液を満たして、神経回路の微細な破損を直すためのもの。
 カプセルは専用の端末やチューブを含めるとトレーラーの中にぎりぎり納まるサイズで、これでは自分たちが乗れないのでコンテナを一台後ろに繋げることになった。
 基地の中には、きちんと直してやればまだ動けるロボットたちが沢山いた。
 一体一体には名前はなかったけれど、自分たちほどの個性は持っていなかったけれど、彼らも大切な家族だった。けれど今は、連れてはいけない。鋼鉄の亡骸はいつまでも朽ちぬまま、埃を被っていくだろう。
「いつか必ず、迎えに来るから」
 そう呟いたのは誰だったのか。
 それは儚い約束か、それとも優しい嘘だったか。
 トレーラーは荒野へ去り、基地は元の廃墟に戻った。
 引越し作業は夜を徹して行われ、カプセルは無事研究室の片隅に設置された。
 九割方修理した兄の身体をカプセルに入れ、溶液で満たす。液状ナノマシンは破損したコアを修復するようプログラムしてある。
 父から送られてきたデータにしたがって、バブルとフラッシュがプログラムして、デバッグに半月以上掛けた。それでも、完全にバグが取り除けたとはいえない。修理中にプログラムがバグったら大変なことになる。
 大変なことになる――オブラートに包まざるを得なかったバブルの気持ちは皆わかっていた。
 その言葉を、口になんか出せなかった。


「今夜の当番は俺か」
「03:00から俺」
 チラシの裏紙(住人の正体を知ってか知らずか、この手の広告は毎朝エントランス前に投げ出されている)に汚い字でクラッシュが書いた『メタル当番表』は、キッチンの隅、E缶が詰め込まれた電源の入っていない冷蔵庫に貼り出されている。
 それを見て頷いたのはエアーとクラッシュだった。クラッシュは目を細め、スリープモードから強制的に叩き起こしてくれるフラッシュ特性目覚ましプログラムのタイマーを合わせている。
 『メタル当番』とは、ナノマシンを監視するための寝ずの番のことである。
 寝ずの番といっても二人組みで数時間交代なのでさほどの負担ではないし、ナノマシンの監視という名目ができたのもカプセルが稼動し始めてからだ。それまでも研究室の隣の部屋に安置されていたメタルに交代で添い寝(同じ部屋でスリープモードに入るだけ)していた。
 これはヒートが「ひとりぼっちじゃメタルがかわいそう」と言い出したせいで、今までだって皆一人で寝ていたのに特に反論するものはいなかった。
 心配だったのかもしれないし、心細かったのかもしれないし、もしかしたら突然目を覚ましてくれるかもしれない――そんな風に誰もが思っていたのかもしれなかった。
 そんな思いに明確な形が与えられ、『メタル当番』は文句を言うものもないまま今日も続いている。クラッシュは毎週ヒートやウッドと一緒に当番表を書き、電源の入っていない冷蔵庫に貼り出す。今の表は三枚目で、その字は毎週少しずつ読みやすくなっている。
「今日は俺もつきあうから」
 エアーとクラッシュが振り向くと、再起動後から妙に表情の乏しくなったクイックがいた。
「お前の当番は明後日だぞ」
「別にいいだろ、気分だ、気分。クラッシュは嫌か?」
 エアーに指摘されたクイックは面倒くさそうに答えると一つ下の弟を見た。クラッシュはじっとその目を見つめ返すと、ぷるぷると首を横に振る。
「いいよ」
「エアーはダメか?」
「構わんが……」
 そのときキッチンには兄弟全員がいて、思い思いにE缶を飲んでいたのだが、実際のところわかっていないのはエアーだけだった。クイックが自分の当番でもないのに「つきあう」と言い出すのは珍しいことではなく、次兄はたまたま今まで聞いたことがなかっただけだ。
 わかっていないエアーは言った。
「お前が兄弟思いなのは知っていたが……メタルとは喧嘩していたと思っていた。俺の知らぬ間に仲直りしていたのか?」
「いや……うん、まあ……したよ」
 歯切れの悪い返答をそのままの意味で受け取り、生真面目な次兄はうんうんと頷く。
「そうだったか……昔は仲間に関心のなかったお前がと思うと、少し感慨深くなってな」
「ああ、まあ……そんなこともあったっけな」
「だがあまり焦っても仕方がない。お前には研究所の警備まで任せてしまっているのだからな。プログラム任せにするしかないのだから、休める時はきちんと休んでくれ」
「だから、気分だって言ってるだろ」
「あのね、エアー。もうそれくらいにしてあげて?」
「何がだ?」
 バブルが助け舟を出してもエアーは本気でわかってくれず、「ああもう」この鈍感と悶える弟を訝しげに見つめてた後懲りずにクイックに顔を向ける。
「気分だというならなおさらだ。お前には負担を掛けてしまっているのだから、メタルのことは俺たちに任せて――」
「頼むよ、兄貴……少しでもあいつの傍に居たいんだ!」
 クイックが苦しそうにそう言った瞬間、バブルとフラッシュの顔に力のない笑みが浮かんだ。
「…………何故だ?」
 心の底から疑問に思ったらしいエアーの声音に、他の兄弟の顔にも温い笑みが浮かぶ。
「メタルが好きだからだ!」
「俺も兄者が好きだが……」
「違う! 俺の『好き』とお前の『好き』は違うんだよ!」
「わからん! もっとわかるように説明してくれ!」
 ちっともわかってくれない次男に、当事者である二人を除いた全員が「ああああああ」と頭を抱える。背景でいることにも耐えられない。
 クイックが叫ぶ。
「俺はメタルが好きなんだ! 傍に居たくて何が悪いんだよ!」
「だからどう違うのか全然わからん!」
「何でわからねぇんだよ馬鹿エアー!!」
 兄弟中最もそういった感情に疎い次兄に婉曲表現でわかってもらうのは無理だが、クイックにも照れがあるのだろう。見かねたバブルがとうとうエアーの背中を叩いた。
「あの……あのね、エアー?」
「何だバブル?」
「つまりね、クイックはメタルに恋をしてるの。恋。わかる?」
「な――――」
 エアーは驚きの余りエラーを起こして固まった。
「なん……、だと……?」
「そこまで驚かなくても……」
「まさか、知らなかったのは俺だけなのか!?」
「まさか、お前ら気づいてたのか!?」
 同時に叫んだエアーとクイックの問い両方に、兄弟たちは「うん」と頷いた。
「クイックはモロバレなんだよなー……」
「クイック、ずっとメタルのこと好きだった。素直なのがいい」
「僕も知ってたよぉ? クイックねー、当番交代するとき、いっつも朝まで付き合うからっていうの。それなのに全然お話してくれないで、メタルのことばっかりみてるんだもん」
「メタル兄ちゃんとクイック兄ちゃん、ちょっと前まで仲悪かったから心配してたんだけど……ほんとに良かった」
「せっかく気を使って黙っててあげたのに……エアーが鈍感すぎるから」
「俺が悪いのか?」
 呆れたような、それでいて温かい空気の中で、クイックは自分の頬に触れていた。指先のセンサーで確かめても、自分の顔面温度が上昇している気配はない。内心は今すぐこの場から逃げ出したいほど恥ずかしいのに、壊れてしまった感情表現プログラムのおかげでクールな表情をしていられる。
 昔からあれこれ相談に乗ってくれていた一つ上の兄が言った。
「ちゃんと告白した? 返事は聞いたの?」
「いや……好きだって言ったけど、まだ返事は聞いてない。だから、諦められない。どんな答えでもいいから、メタルの口から聞きたいんだ」
「君らしいね」
 そしてバブルは「応援するからね」と言った。エアーはまだ困惑しているようだったが、バブルに言われて当番を代わってくれた。


 灯りを落とした研究室で、クイックは青白い光を放つカプセルを見つめている。無数のコートやチューブに接続されたメタルのコアはまだ光を失ったままだ。
 クイックはいつものように声を出さず思い人に話しかける。
 ――お前を一人にはしない。
 どんなに走っても皆が俺を一人にしない。俺は一人じゃない――そう教えてくれたのはお前だ。
 だからこの身は仲間のために駆ける。
 皆がいるから、俺は走れる。
 お前一人だけ先に行ってしまうなんて許さない。
 ナノマシン溶液に揺れる相手の顔にカプセル越しに触れて、そっと口づけした。
 ――人間の御伽噺のように、キスで目を覚ましてくれたらいいのに。
 あいにくここは現実でメタルは人間ではなく、呪いにかけられているわけでもなかった。コアが完全に修復されれば目を覚ます。そう信じることだけが自分たちを支えている。
 もしものことなんて考えたくなかった。
 顔には出ない苦しみだけが胸を灼く。回路を、回路でないどこかを、狂おしいほど埋めつくす言葉。
 好きだ、好きだ、好きだ。
 俺を見てくれ。俺を呼んでくれ。俺に触れてくれ――またお前の隣を歩きたい。
 敵に回したのは世界で、誰よりも信じあえる仲間がいて、守るべき人たちと、叶えたい夢があって、この上ない誇りと共に戦うことができた――その日々はもう、戻っては来ないけれど。
 敗北して地に伏せたとしても、この目は天を睨み、この足はまた地を駆けるから。
 だから、戻ってきてくれ。
 恋しい。
 苦しい。
 無表情のまま涙もなく、冷たいカプセルに身を寄せて、ただ恋しいと0と1ではない声で訴える。



>>【再構築_06】




+++++



そろそろいろいろ別の原稿がヤバゲな感じなので、我慢できればしばらく更新がなくなるかもしれません。我慢できれば……無理かもしれないけど。昔から自重とか我慢とか無理です。できた試しがない。だって早くメタルを起こしてあげたいんだもの……更新されてたら後ろ指さしてやって下さいorz

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No.132|ロックマン小話Comment(0)Trackback()

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