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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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3万4万リク:Peaceful like the sprig breeze(晶子様)

2009/05/28(Thu)22:41

3万&4万ヒットリクエスト、「エアー視点での兄弟たちの日常」です。
大変お待たせいたしました;
「日常……?」という感じになりましたが、お受け取りいただけると嬉しいです。


【Peaceful like the sprig breeze】



○ 月×日 
今日はとても穏やかな一日だった。
ずっとこんな日が続けばいい。そう思った。


   +++


 俺がリビングに入ると、キッチンの方でクラッシュ、ヒート、ウッドといういつもの三人組がなにやら荷物を広げてわいわいやっていた。しかも、玩具などではなく食材や調理器具ばかりだ。
 しかも、よく見れば三人ともエプロンまでつけている――あれはメタルの予備ではなかっただろうか? 身長の足りないヒートなど、安全ピンで無理矢理サイズを合わせている。
「お前たち……いったい何をしている?」
 まさかとは思うが、食べ物で遊ぶつもりなら止めなければ。
 そう思って声をかけたのだが、違うようだ。ヒートがにこにこしながら答える。
「最近メタル忙しいでしょぉ? だから、今日は僕らが博士のご飯作るの!」
「……お前たちが?」
 疑念があからさまに出てしまったらしい。ヒートがびしっと音がしそうな勢いで指を突きつけてくる。
「もぉ~、エアー疑ってるでしょ! ウッドがメタルから料理用のプログラムとレシピもらったんだからね! ちゃんとできるもん!!」
「僕が一番容量余ってたから……でも、一人じゃ不安だから、兄ちゃんたちにも手伝ってもらおうかなって」
 ウッドの言葉にクラッシュがこくこく頷いている。彼の手はちゃんとハンドパーツに換装され、すりこぎを握っていた。どうやら鍋の中のかぼちゃを潰しているらしい。
「なるほどな……」
 家事全般までこなすメタルが蓄えたデータをもらったのならば疑問は解ける。だが、クラッシュとヒートが手伝うのは不安が増すのではないだろうか……勿論、口に出したりはしないが。
 俺の考えをよそに、ウッドが楽しげに続ける。
「今日は冷蔵庫にある材料だけで作るけど、メタル兄ちゃんお買い物用のデータまでくれたんだよ。野菜の新鮮なのの見分け方とか、お肉は赤身の多いやつとか……」
「僕もちょっと見せてもらったけど、すっごく細かいんだよ。メタルらしいよねぇ」
「うん。でも、ちょっとお買い物行くの楽しみかな」
 ウッドは危なげない手つきで白っぽい塊をフライパンに入れていく。ヒートはウッドが屋上で育てているハーブを手で千切っていた。
 俺は料理もしなければ食事もしないため、彼らが何を作っているのかはまったくわからなかった。だが、三人とも嬉しそうだった。特に、普段から不器用で満足に手伝いのできないクラッシュは嬉々として作業をしている。
 いいことだ。
 ここ二週間ほど、メタルはワイリー博士とラボに篭っている。博士の食事の準備をする時だけ外に出てくるのだが、いい加減限界を感じたのだろう。弟たちを頼る気になってくれたのは良い傾向だった。兄者は一人で何でも背負い込みすぎる。
「がんばれよ」
 俺の身体は大きすぎてキッチンに入っても邪魔になるだけだ。それに、ウッドはしっかりしているから監督など必要あるまい。
 そう判断した俺は、他の連中の様子を見るためにリビングから出ようとした。
「あ、エアー兄ちゃん。あと二十分くらいでご飯できるからって、博士に言ってくれる?」
「わかった。伝えよう」
 ラボまで移動して少し話をするだけでその位あっという間に経ってしまうだろう。
 ヒートの声が追いかけてくる。
「今日のメニューは、お豆腐のハンバーグと、とろとろかぼちゃスープと、ハーブのサラダだからね! ちゃんと言ってね!」
「了解した」
 俺は居住区域を離れ、基地の外延部に向かった。位置を確認したところ、博士とメタルがそこにいることがわかったからだ。
 二人は外延部に配置したロボット――メカドラゴンの調整を行っているようだった。うずくまって目を閉じた竜から何本ものコードが延びており、そこに繋がった端末を二人して覗き込んでいる。見るからに忙しそうだ。
「翼の動作にはもうちょっと調整が必要じゃの……」
「この部分を書き換えすれば運動性能が0.76パーセント上昇する見込みです」
「じゃが、翼自身の耐久性が――」
「ふ、二人とも……ちょっといいだろうか?」
 声をかけると博士とメタルが同時に振り向いた。
「なんじゃ?」
「そろそろ食事ができるのだが……」
「食事……?」
 博士は不思議そうに呟くとメタルを見た。
「そういえば、今日はずっとここに居るな」
「はい。俺一人では限界を感じましたので、弟たちに準備を頼みました」
「クラッシュとヒートとウッドが支度をしていましたよ。今日は豆腐のハンバーグと、かぼちゃスープと、ハーブのサラダだそうです。もうそろそろ出来上がるはずなので、行かれたほうが……」
 博士は何かいいたげに口を開いたが、何も言わなかった。
 なかなか腰を上げない博士に、メタルがそっと言う。
「後は俺がやりますから、博士はゆっくり食事をしてきて下さい」
「じゃが……お前にも休憩が必要じゃろう」
「俺はロボットですから」
「ロボットだって疲れるんじゃぞ?」
「それでも人間よりはタフです。今日はあの三人が作ったんですから、急いで食べないように。ちゃんと味わってやってください」
「うむむ……」
 俺には事情がわからないのだが、博士は明らかに言い負かされたという感じで立ち上がり、メタルを軽く睨んだ。
「お前も無理をするんじゃないぞ」
「わかっています」
 博士の姿が消えると、メタルの目元に浮かんでいた柔らかな表情が消え、疲労に取って代わられた。
「兄者……!」
 博士が座っていた椅子に腰を下ろすと、メタルは大きく肩を落とした。
「兄者……やはり無理をせず休んだほうが……」
「思ったとおりだ……」
「な、何がだ……!?」
「あいつらが作れば食べて下さると思ったんだ……研究に没頭すると、すぐに食生活が乱れるから……あの人は」
 どうやらワイリー博士のことを言っているらしい。
 確かに博士は研究となると時間を忘れるが、健康管理をしているメタルからすると、悩みの種だったのだろう。あえて年少組に食事の支度を任せたのは、博士が無視できないようにするためだったらしい。
 メタルは鈍い動きで首からケーブルを延ばすと端末につないだ。
「メタル……仕事もいいが……」
「負けられないんだ……絶対に……」
「メタル……」
 悲壮感を漂わせる兄の姿に、俺は言葉を失った。負けられない、必ず勝つ――その思いは兄弟の中に等しく存在する。だが、メタルは誰よりも責任感と忠誠心が高い。博士の夢の助けになろうとする思いは、彼の心のほとんどを占めているのだろう。
 博士に言われても無理をするのだ。俺などが言っても聞き入れるとは思えない。
 なすすべもなく兄の背を眺めていると、彼が小さく俺の名を呼んだ。
「エアー」
「なんだ?」
「一段楽したらエネルギーを補充しに行くから心配するな。バブルとフラッシュがラボに詰めている。あいつらにもそろそろ休むよう言ってくれ」
「……わかった」
 俺に伝言を頼まなくても、通信を入れれば良いだけなのに。
 メタルが一人になりたがっているような気がして、俺は大人しく引き下がった。
 基地内の長い通路を移動しながら思う。
 せめて知識があれば兄の助けにもなれたのに――と。
 あいにく俺は戦いのことしか知らない。
 こういう無力感もあるのだ。
 ラボを覗くと、外部アクセス用の端末に接続したバブルとフラッシュがいた。情報処理能力に特化した二人は、最近は一日中ネットワークの中に篭りきりになっている。あちこちに不正アクセスを繰り返してデータを漁り、俺たちが世界に戦いを挑むための下準備をしているのだ。
《どうしたのエアー? 何かあった?》
 スピーカーがバブルの声で言った。
「二人とも、そろそろ休んだほうがいい……とメタルがな」
《あはは。メタルから許可が下りたなら堂々と休めるね。そろそろ処理が重くなって辛かったからちょうど良いや――フラッシュ、戻っておいでよ》
《――……OK。データの吸い上げが完了した。解析は休憩の後だな》
 二人の目が開いた。瞬きを繰り返しながら、感覚を確かめるように手を握っては開いている。
「一日中潜ってるとやっぱり変な感じだねぇ……身体って重いなぁ」
「同感。だが、身体がなきゃタバコも吸えねぇってんだ……アレ、どこ置いたっけか」
 椅子にもたれてぼんやり天井を見上げるバブル。フラッシュはぶつぶつ言いながら周囲を見回し、タバコのパッケージを探している。
 メタルと同様、疲労困憊しているのが一目でわかった。
「……すまんな」
「…………何が?」
 思わず口をついた言葉に、バブルが不思議そうに聞き返す。
「俺にはお前たちを手伝ってやることができない……足手まといになるのが目に見えているからな」
「なんだ、そんなこと」
 バブルもフラッシュも俺の自嘲を軽く笑い飛ばした。
「適材適所って奴でしょ? 気持ちだけもらっておくよ。でも、戦いが始まったらエアーたちの方が大変なんだからね」
「メタルの奴が博士に付きっ切りだからな。そうやって様子を見に来てくれる奴も必要さ。ガキどもとか誰かさんじゃ、それは無理だろ?」
「そういうものか?」
「そーゆーモンなの」
 フラッシュは唇を歪め、ようやく探し当てたパッケージからタバコを取り出して銜える。
「ここ禁煙だよ、フラッシュ」
「へいへい……」
 喫煙をたしなめたバブルはモニターと俺を順に見た。
「もうすぐ部下ロボット用の戦闘プログラムのシミュレーション結果が返ってくるから、そうしたらリビングに行くよ」
「そうか。では先に行っている」
 バブルが小さく、フラッシュがひらひらと手を振る姿が閉じた扉の奥に消える。
 ――ちゃんと来るだろうな、あいつら。
 新しい仕事が発生して、そちらにかかりきりになってしまわなければ良いのだが。
 気になって何度か振り返ったのだが、様子がわかるはずもない。
 仕事が終わるまで待って、一緒に来れば良かった。
 それとも、俺がいては邪魔になったかもしれない。だとしたら、出て来たのは正しい選択のはずだ。
「おい」
 考え事をしながら歩いていたせいか、声をかけられるまで気づかなかった。外延部に向かう分かれ道にクイックが立っている。
「メタルは一緒じゃないのか? 博士には会ったんだが……」
 そう言いながら、心配そうに通路を見る。
「メタルは仕事がひと段落したら来ると言っていた。心配なら迎えにいってやれば良い」
「俺が行った所で邪魔になるだけだ……苦手なことに首突っ込んでも、迷惑かけるだけだしな」
 戦闘に特化されているせいで俺と同じくやることがないのだろう。家族皆が仕事をしている中、自分だけ何もしないというのはストレスになる。それは俺が現在進行形で感じている気持ちだ。
 だが、バブルの言ったとおり俺やクイックの出番はこれからなのだ。
「今はやることがなくても、戦いになれば一番忙しいのはお前だぞ」
「ま……そうなんだけどさ」
「お前は最強のDWNなんだ。いざとなればお前に頼らなければならなくなる。今は……牙を磨いでおけ」
「牙……って、あははっ! 兄貴も格好良いこと言うようになったじゃないか!」
「クイック!」
 明るい笑い声を上げたクイックは、笑顔のまま静かに言った。
「この力で……皆を守るよ」
 この弟は、起動仕立ての頃とはずいぶん変わった。あの頃のクイックの口からこんな言葉が聞けるようになるなど、誰が想像出来ただろう。戦うための力だけを求めていたクイックが、守るための力を望むようになるとは。
 彼を見ていると、たとえロボットだろうと、成長し、変わることが出来るのだと思えるのだ。
 二人でリビングに向かっていると、ふとクイックが言った。
「あれ? メタルがあっちに行きっぱなしってことは……誰がメシ作ったんだ?」
「クラッシュとヒートとウッドだ」
「はぁ? あのお子様たちが?」
 目を丸くするクイックに俺は答える。
「メタルが料理用のプログラムをウッドに渡したそうでな」
「あ~、納得した……っていうか、もっと早くそうすりゃ良かったのに」
「だな……意外と兄者は料理が好きなのかもしれん」
「料理って言うか……博士が好きなんだろ、メタルはさ」
「?」
 その時はクイックの言葉が理解できなかったのだが、リビングの光景を見てなんとなく合点がいった。
 テーブルについた博士の周りを三人が取り囲み、自分たちが作った料理を食べる様子を嬉しそうに眺めている。あの三人に目をキラキラさせながら「おいしい? おいしい?」と口々に聞かれたら博士も食べざるを得なかっただろう。メタルの思い通りになったというわけだ。
 といっても、博士も嫌そうにしているわけではなく、逆に幸せそうな顔で料理を口に運んでは息子たちを褒めている。
 大切な人の喜ぶ顔が見たい――クイックが言いたいのはそういうことなのだろう。
「これ、お前らが作ったんだって?」
 クイックが問いかけると、ヒートは勿論、ウッドまで珍しく自慢を始めた。無口なクラッシュも何か言いたげにしていたので、俺はそちらに声をかける。
「どうだ? 上手くできたか?」
「うん!」
 クラッシュの無表情は変わらなかったが、嬉しそうなのは良くわかる。
「このスープ、俺が作ったんだ。博士、美味しいって言ってくれた」
 指差した先の器は空になっているが、俺たちに気づいた博士は手を伸ばしてクラッシュのたちの頭を順番に撫でた。
「とても美味かったぞ、お前たち」
 博士の笑顔に弟たちが歓声を上げる。
「何? どうしたの?」
「何か面白いことでもあったのか?」
 リビングにやってきたバブルとフラッシュもその輪に加わる。何度繰り返しても飽きないのか、今度は二人相手に同じ話が始まった。俺は苦笑しながら輪を離れ、二人の代わりにE缶を取りに行く。
 興奮気味の弟たちに掴まっているバブルとフラッシュにそっとE缶を渡しているとメタルもやってきた。俺からE缶を受け取った彼は、テーブル上の空になった皿を一目見て博士に言う。
「全部食べて下さったようですね」
「当たり前じゃい。まったく……つくづく手段を選ばん奴じゃのう」
「単に効率の問題です」
 さらりと皮肉を交わした兄はさっと皿を集めてウッドに渡した。
「食事の支度をしないですむのはやはり楽だ。これからも頼んでいいか?」
「うん! まかせて兄ちゃん!」
「僕もやるからね、ウッド!」
「俺も……」
 博士との会話が理解できず目をぱちくりさせていた三人は、口々に言うと後片付けのためにキッチンに向かった。明日の献立は何にしようなどと相談を始めている。
「クイックー! 早起きなんだから朝ごはん手伝ってくれない?」
「俺か? べ、……別にいいけどよ」
 ヒートに声をかけられたクイックもなんとなく嬉しそうだった。
 そういえば家族全員がリビングに集まるのは久しぶりだ。
 ぐるりと室内を見回すと、テーブルの傍にいたはずの三人がいない。飲み終わったE缶が二つ放置されているだけだ。
「博士……三人は?」
「そっちじゃ」
 苦笑しながら指差す先を見てみると、ソファに座ってE缶を飲むメタルの両肩にバブルとフラッシュがもたれていた――寝ているらしい。
「報告を聞こうと思ったのだが、座ったとたんにスリープモードに入ってしまってな」
 俺と目が合うとメタルはそう言った。左右の弟たちを見る目つきはずいぶんと和んでいる。常に気を張っている兄にしては珍しいことだ。
 洗い物をウッドに任せたのか、ヒートとクラッシュが明日の献立について博士を質問攻めにするのを尻目に、俺は兄たちのいる方へ移動した。空いているソファに腰を下ろし、ゆっくりとE缶を傾けるメタルを眺める。穏やかなメタルもそうだが、バブルとフラッシュがメタルに寄りかかっている光景というのも珍しい。
 珍しいが、違和感はなかった。俺に顔があったら、きっと微笑みを浮かべたはずだ。
 気づけば、こんな言葉を口にしていた。
「ずっとこんな日が続けばいいのだがな……」
 この光景だけを見れば、もうすぐ戦いが始まるなど信じられない。明日も明後日も、いつまでもこんな日が続くような気がしてしまう。それが失われることを恐ろしいと思う。
 いっそ平和を知らなければ、何も恐れることなく戦うこともできただろうに。
 俺の軟弱な考えをたしなめるようにメタルの表情が険しくなる。
「エアー、それを得るために、俺たちは戦うんだ。戦いの先には平和な日常が待っている。その日々を勝ち取るために俺たちは生まれた。だからこそ、俺たちは日常というものを知っていなければならない。何のために戦うのか、自分たちが何処へ向かっているのか……それを知らない者はワイリーナンバーズにふさわしくない」
 メタルの赤い瞳は何処までも真っ直ぐに強くこちらを射抜く。
 その視線を受けると、コアが熱くなるような気がした。無論、実際に内部温度が上がったわけではない。この熱さこそが金属でできた俺たちの『心』だ。
 そして不思議なことに、『金属』の名を持つ長兄の意志は容易く弟たちに伝播するのだ。
 彼の強い意志と熱量は、俺の弱りかけた心を支え、叱咤する。
「兄者は強いな……どこからその強さが来るんだ?」
 感心と感謝を込めてそう言ったのだが、意外にもメタルはぎょっとしたような顔をした。これも珍しい表情だ。
「……どうした?」
「俺は……別に強くはない」
 確かにメタルの戦闘力はさほど高くはない。だが、俺が言いたいのは違うことだ。
「いや、力の問題ではないぞ。心というか意志というかだな……」
 必死でフォローしようとしたのだが、「わかっている」と苦笑された。
「あまり買いかぶってくれるな。俺は……臆病者なんだ」
 メタルがこんなことを言うなんて、やはり相当疲れているとしか思えない。
「お前たちに教えてきたことが間違っていて……そのせいでお前たちが失われたらと思うと、ぞっとする」
 ショックのあまり、テーブルの方で交わされる明るくも騒々しいやり取りが遠くに聞こえるような気がした。兄の低く乾いた声の方がよほど大きく聞こえる。
 メタルは俺たちの教官だ。彼は俺たちが起動した当初から、己の持つ力を最大限に発揮できるよう指導してきた。俺も、バブルも、他の弟たちも、最後には皆自分自身で力の使い方を見出した。それでも、兄が感じていた責任の重さ――俺たちの命の重圧が軽減されるわけではなかったのだろう。
 メタルは「手柄を立てるのも、間抜けに死ぬのもそいつの責任」と割り切って考えることはできなかった。それができるなら、あれほど熱心に俺たちを鍛えはしなかっただろう。
 メタルの厳しさが俺たちへの愛情と恐れの裏返しなのだとしたら――俺たちは彼を悲しませてはならないのだ。
「メタル……お前には俺たちがいる」
 一人で抱え込む必要はないと言いたかったのだが、届いたかどうかは定かではない。言葉を間違えていたような気もする。
 うやむやになってしまった理由としては、言い終わった瞬間にバブルとフラッシュが薄目を開けていることに気づいてしまったこと、そして――
「あぁー!! 二人ともずるいー!!」
「なんじゃ、珍しい光景じゃのう」
 まずヒートが大声を上げて乱入し、博士やウッドたちがぞろぞろやってきたからだ。
「メタル~、頑張ったご褒美におひざ抱っこして~」
「メタル兄ちゃん……疲れてるならいいんだよ?」
「いや、大丈夫だ。おいでヒート」
「やったぁ!」
 歓声を上げて飛びつくヒートを見て、クラッシュがぼそりと呟く。
「いいな……」
「…………」
 その隣では、何故かクイックが不満げに唇を尖らせている。何が気に入らないのだろうか。
 バブルとフラッシュはヒートに言われてクラッシュとウッドに席を譲らされている。博士は俺の隣に座りその様子を見て笑っていた。


 これが日常ならば――それを守り、得ていくための戦いに迷いはない。
 そう思うと、自然に笑みが浮かんだ。
 顔のない俺の笑顔を笑顔と理解してくれる者たちのために、俺は戦おう。
 この力で、家族を守ろう。





+++++


あれ、ひょっとしてタイトル涙目?結局メタルの出番が多いのは私の愛の偏りのせいですorz で、でも皆愛してるんだからね!?
ちなみに、クラッシュの作ったスープは裏ごししないかぼちゃスープです。ネットでレシピを見てたら先輩に「料理に目覚めたの?」って誤解されましたw 違います。目覚めたのはうちの子たちww
晶子様、リクエストありがとうございました!少しでも楽しんでいただければ幸いです。


もうひとつのリクも近日中に書き上げます。

拍手[0回]

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