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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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006-03:再構築_08(ALL)

2009/06/21(Sun)21:03

ごりごり更新……といっても、今日目が覚めたら11時で夕方までぼーっとしてましたが。

兄弟の決意と、後半はメタル説得ターンです。M←Qなのでご注意ください。あと電脳とかの演出はいつもどおり適当です。あと最近ずっと何ですが、長いです。
結局番外編読んでなくても話通じるつくりになりました。E……その、なんだ。スマン。





【再構築_08 wired hearts】



 どんな敵にも恐れずに立ち向かってきたではないか。
 仲間のために走ると決めたではないか。
 誇りに思える自分でいられるように生きること――それが本当の誇りだと、教えてくれたのはお前だ。


 明後日には行くと約束した博士だったが、実際は一日遅れるという。肩透かしをくらったDWNたちは、それでもさらに一日の猶予をもらい、貰ったからといってどうすることもできず、夜になるとリビングに集まって重苦しく口を閉ざした。
 部屋の中央に立っていたエアーは体内時計で0時を回ったことを確認すると、意を決して口を開いた。
「あと八時間ほどでワイリー博士がおいでになる。皆の意志を確認しておきたい」
 彼は組んでいた腕を解き、神妙な顔で頷く弟たちを見回した。
「まず俺から言おう」
 二つの視覚センサーしかない顔に苦悩の跡が見える。
「俺は、兄者の意志に任せようと思う。俺たちに自らの意志で生きる権利があるのなら、自ら死を選ぶ権利もあるはずだ。たとえ世間がロボットにそれを認めずとも、ワイリーナンバーズである俺たちは違うのだから」
「僕も……同感。理由は前にも言ったとおりだよ」
 バブルが手を上げて賛同する。三男はこの数日一言も口を利かなかったが、一応の落ち着きは取り戻したらしい。
「俺も……」
 うつむいたままのクラッシュが呟く。
「メタルが疲れたなら……もう、お休みさせてあげたい……」
「……僕はヤだ」
「僕も……」
 取り残されたように二人きりで過ごしたヒートとウッドは、今も互いに寄り添ったまま抗弁する。
「僕はメタルのこと大好きだよ。もっと一緒にいたいもん。だから、メタルが死んじゃうなんて嫌だ」
「もっとメタル兄ちゃんに教えて欲しいこと、いっぱいあるんだ……お料理だって、一緒にしてみたいし、僕……家族の誰が欠けるのも嫌だよ」
 子供ゆえに正直な二人は、これが自分たちの意見だと言うように手を握り合ってハッキリと言った。
「そうだな」
 二人の隣に座っていたフラッシュが、火のついていないタバコを銜えて無造作に二人の頭を撫でる。
「最終的にどっちに転ぶにせよ、兄貴が死にたがる理由は絶対に知りたい。そうじゃなきゃ納得できねぇ。あんな……いつだって家族第一のメタルが、俺たちどころか博士まで置いて死のうとするんだからな」
 彼の手には部下たちのメモリーチップが納められたケースがある。膝の上に置いたその表面をそっと撫でながら、フラッシュはまだ意見を言っていない兄に視線を飛ばした。
「クイックはどうだ……?」
 エアーは心配そうに四男を見た。クイックがメタルに恋心を抱いていることは兄弟の誰もが知っている。だからこそ、メタルの自己閉鎖に一番ショックを受けたであろうということも。
 だが、今クイックの顔に浮かんでいるのは、戦いに臨む様な静かな緊張感だった。今朝までは確かに落ち込んでいたはずなのだが、何か心境の変化があったようだ。
 クイックは言った。
「俺はどうしてもメタルを取り戻したい。だから、博士が来たらメタルの深層意識にアクセスして、あいつに会いに行く。フラッシュが言ったように、理由だって知りたいし……とにかく、話がしたいんだ」
「深層に接続か……まあ、そういうことになるだろうな」
 フラッシュが頷く。その方法ならすでに考えていた。やらなかったのは、怖かったからだ。博士がいないところで勝手なことをして、取り返しのつかないことになってしまったら――最悪の場合、ワイリー博士は最初の息子の死に目に会えないことになる。
「それで、だ……わがままだっていうのはわかってる。だが、メタルを説得しに行くのは俺だけにしてくれ」
「クイック、それは……」
「わかってる、エアー……俺が失敗したらどんだけ恨んでもいい。っていうか、失敗してたら、俺も生きては行けないけどな。それに――あいつが俺には反応しなくて、他の奴の説得で戻ってきたりしたら……俺は多分、どっちも許せない。殺したくなっちまうかもしれない」
 一瞬漂った暗い殺気に兄弟が息を呑む。
 バブルが共感めいた笑みを浮かべ、言った。
「クイック……怖いこというようになったね」
「俺らしくないだろ? こんな気持ち……俺だって嫌なんだ。だからさ……」
「わかってるって。俺たちの誰も……相手はよりによってメタルなんだぜ? それを説得する自信なんざねーんだよ。だから、卑怯を承知で言うけど……頼むわ」
 フラッシュが銜えタバコを揺らした。その下の弟たちも口々に言う。
「クイック兄ちゃん、お願いだよ」
「メタルを連れ戻して」
 頷き返したクイックは席を立ち、弟たちの様子をぽかんと見ているクラッシュの前に行った。
「クイック……」
 名を呼ばれたクイックは、初めての弟機の頭に手を置いた。
「クラッシュ……そんな頑張って良い子になろうとしなくていいんだよ。お前は十分良い子なんだから、たまにはわがまま言っていいんだ」
 優しく頭を撫でる兄の手に自分の手を重ね、クラッシュの顔がぎゅっと歪んだ。
「お、俺……っ……」
 ぼろぼろと涙が零れる。
「やだ……メタルが死んじゃうの、やだよ……いっしょに、いたいよ……」
「だよな。俺もそうだ」
 ぐしゃぐしゃに泣く弟を抱きしめると、クイックは二人の兄を見た。
「兄貴たちはどうなんだよ」
「困った子だね君は……」
 バブルは苦笑し、困惑の体で立ち尽くしている兄と目を合わせる。
「ね……どうしようか、エアー? 建前とか、最善とか、大人の優しさとか、そういうの全部投げ捨てたら……答えはなんだろう?」
 エアーは深々とため息の音を響かせると、観念したように目を伏せた。
「……一つしかないな、バブル」
「だね」
 二人の兄は笑みを交わした。
「というわけで……頼むね、クイック。わがまま言っちゃうと、僕らまだ、メタルと一緒にいたいから」
「ああ……任せてくれ」
 兄弟たちの意志は決まった。


「クイックは深層接続は初めてじゃったな?」
「はい」
 何本ものケーブルに繋がれたクイックは、予定よりも早く駆け込んできた父――ワイリー博士に頷き返し、隣の作業台に横たわった赤い機体を見つめた。自己閉鎖中のメタルもまた、無数のコードでコンソールと接続されている。
 コンソールではやはりケーブルで機器と結線したフラッシュが目を閉じている。
【Flash:俺がナビするから、しばらくはこっちの言うとおり進めよ?:over】
 彼の声は回線を通じてクイックの電脳に直接送り込まれ、部屋の中で固唾を呑んで見守っている兄弟たちの前には、空中のウィンドウに文字として表示される。
「うるせーなハゲ! 頼んだからな!!」
【Flash:あのなお前……頼るのか罵るのかどっちかにしろよ:over】
 このまま喧嘩を始めそうな空気を察知したのか、スピーカーがバブルの声で言った。
《まあまあ二人とも、いい加減にしないと怒るよ? ――ワイリー博士、リアルタイム解析の準備が整いました》
「バブル、メタルの様子はどうじゃ?」
《いまのところステータスは安定していますが、あと三十秒ほどでシステムの自壊が再開します。ちょっとくらいなら再起動時に自動修復されると思いますが》
「あんまり時間はないってことだな……博士、始めてください」
「頼んだぞ、クイック」
 メタルを説得するしかないという意見に同意したワイリー博士は、皴深い手で息子の頬をそっと撫でた。クイックはそれに応える様に微笑んで、目を閉じる。
【Flash:――接続開始:over】
 瞼の裏の闇に色がついた。アクセスを拒む無数のゲートを開いたフラッシュによって、さらに奥へ送り込まれる。
 ジャングルのように乱立し、菌糸類のように互いに結び合い、絡み合ったデータ群を見回し、フラッシュが舌打ちした。
【Flash:チッ……大分ぐちゃぐちゃになってやがるな。コアがぶっ壊れたせいだろうな……前はびっくりするほど整然としてたんだが:over】
 周囲に無数のウィンドウを浮かべて道順を検索し始める弟に、クイックは言った。
【Quick:あのな、フラッシュ……ナビは途中まででいいから、戻ってくれ:over】
【Flash:ハァ? 何言ってやがるんですかお兄様! ド素人がロボットの中枢システムなめんじゃねぇぞ?:over】
【Quick:だって聞かれたくないんだよ、メタルとの話……:over】
 フラッシュは二百マイクロ秒ほど沈黙した。
【Quick:わがままだって解ってるけど、頼む:over】
【Flash:――断る。置いていったらメタルの自壊が止められなかった時、お前まで死んじまう。それでいいかも、なんて考えるんじゃねーぞ。失敗したら全員でしこたま殴ってやるんだからな:over】
【Quick:フラッシュ……:over】
【Flash:俺はここに待機する。連絡できるようにはしとくから――っと:over】
 フラッシュの指がウィンドウのキーを叩き、クイックの前にARIADNEと表示された赤い矢印が現れた。
【Flash:その矢印が道案内で、俺のいる場所に帰るための目印だ。何かあったらソレから俺に通信できる。移動速度はそいつの方が速いから、掴まって行きゃすぐだ:over】
【Quick:……ありがとな:over】
【Flash:礼はメタルを叩き起こしてからたっぷり聞くさ:over】
 ニヤリと笑う弟に手を振って、クイックはメタルの奥へ潜っていった。
 掴まった矢印は猛スピードで情報の密林の間を潜り抜けていく。
『メタル……』
 声を出してみると、周囲のデータ群が震えた。大規模なファイルのすぐ傍を掠めた瞬間、強固に見えたフォルダが泡のように弾け、
『うぉわっ!』
 クイックはデータの雪崩に巻き込まれた。
 メタルの記憶が次々にフラッシュバックする。
 若いワイリーの顔が見えた。ディスプレイからの視点。身体を持たないAIだったこと。ワイリーと過ごした長い長い時間のこと。人間を殺し、自分の記憶を消したこと。動くことの出来ない小さな端末の中、ワイリーの背中をずっと眺めていたこと。彼を独りにしないと誓ったこと。
 クイックを連れた矢印がフォルダから飛び出す。0と1の破片がふるい落とされてぱらぱら散っていくのを見ながら、クイックは考えた。
 今見た記憶は、自分の知らないことばかりだった。
 こんなに知らないことがあったなんて、何も教えてもらっていないのに失うなんて。
『絶対、嫌だ……』
 やがて矢印は密林を抜け、その中心にぽっかり明いた空間に辿りついた。
 赤い色が見える。
『メタル!!』
 振り向いたのは、ヘルメットを被っていない素顔のメタルだった。
『クイック……』
『よかった。まだ消えてなかったんだな、メタル!』
 矢印から手を離し、彼の傍に飛び降りる。矢印はくるりと向きを変え、クイックの傍に浮かんだ。
 メタルが不思議そうに見返すと、クイックは必死な様子でその手を取った。
『メタル、一緒に帰ろう。皆お前を待ってるんだ。エアーもバブルもクラッシュもフラッシュもヒートもウッドも……もちろん、博士も』
『…………』
 メタルは返答しない。それでもクイックは怯まずに言葉を続ける。
『俺たち、この半年ちゃんとやってきたんだぜ? お前が目を覚ましたとき、怒られないように……褒めてもらえるようにって』
『そうか』
 淡々とした返事に熱はなかった。メタルは感情を生み出すシステムがいまだ停止状態にあることを認識しながら、安堵の言葉を紡ぐ。
『俺がいなくてもやってこれたのか……安心した。それだけが気がかりだったからな』
『……何言ってんだ?』
『俺なしでも、もう大丈夫なのだろう? だったら、心置きなく消えられる』
 鋭い瞳には光がなかった。クイックの心を揺さぶる、あの強い意志が感じられない。あるのは熱のない――冷たさという熱さえない、ただの虚ろだ。0と1ですらない。もっと壊れかけの何か。
 でも、まだだ――クイックは勇気をかき集め、説得を続ける。
『どうしてだよ。お前なしでやれるからって、お前なしでいなきゃならないわけじゃないだろ!』
『俺たちの戦いは終わった』
『終わってない! 博士はまだ諦めてない――』
『博士が諦めていなくても、だ。博士は別のロボットを作っていると聞いた。おそらく、次はそいつらを使って世界征服をするつもりだろう。たとえ俺たちが彼らに加勢するとしても、それはあくまで“彼ら”の戦いだ。“俺たち”の戦いではない』
 メタルは目を伏せ、感情すら持っていなかった時から変わらない願いを口にした。
『叶えて差し上げたかった。あの方の最初の“息子”である俺たちの力で……』
 ずっとその背を見ていた。
 彼は諦めず、一人ぼっちで、でも一人ではないと言ってくれた。
 自分の手で叶えてあげたかった。
 彼の作ったロボットはこんなにも優秀なのだと身をもって証明すること。それこそが、メタルが自分の意志で決めた存在意義だった。
 それが果たされた頃には、新しい目的を見つけ出せるくらい自由な世界となっているはずだと信じていた。
『よくやってくれた、と……お前のおかげだと、そう言って欲しかった。コアの修理で記憶野の封印が解けたせいで思い出した。それが俺の戦う理由で、俺の……本当に、心から欲したことだったとな』
 その願いはもう二度と叶わない。
 あまりにも静かなメタルの様子に、クイックは驚きながらも納得していた。
 DWNたちを褒めるのはメタルとワイリー博士。
 自分たちはいつだって二人の賞賛を求め、認めてほしいと思っていた。
 だが、メタルを褒められるのは博士だけだ。というよりも、メタルが本当に褒めて欲しいのはワイリー博士だけなのだ。
 この上なく自分に厳しいメタルだからこそ、『自分たちの手で世界征服を成し遂げた』後に博士からもらえる感謝の一言だけが欲しかった。他の誰かの助けになったではだめなのだ。あくまで自分たちが成し遂げた成果でなければ、そんな言葉は欲しくないのだ。
(こいつ、馬鹿だ……)
 大人に見えたが、こういうところはどうしようもなくわがままな子供だ。
 誰よりも感情豊かで、そのくせ誰より機械的だ。
 機能をまっとうできない機械に存在する意義はない――そういう考え方だ。
 だが、それでもメタルの気持ちは良くわかった。痛いほどわかった。
 009から016までのナンバーズは、もう“その一言”はもらえない。博士は次のナンバーズを作っている。共同開発がどうした。博士は目的のためには手段を選ばない。そのナンバーズたちを利用して三度立ち上がるつもりなのだ。彼は戦い続ける。
 そして、彼の愛情に変わりはなくても、いつか世界征服を成し遂げても、自分たちに与えられる言葉の意味は決定的に変わってしまう。だって、自分たちは負けたのだから。
 博士にとって、敗北は次の戦いへの布石だ。
 戦いを終えたナンバーズにとっては、生まれてきた理由が否定される時だ。
 負けて、生き残って、その後どうしたらいいのかなんて、兄弟の誰も知らない。自分たちが生きてこれたのは、『メタルを助ける』という目的があったからだ。メタルを助けて、家族を取り戻して――その先など、考えたことはなかった。
 それでも、
『納得……できるかよ』
 ここで諦めることなど出来なかった。
『役目が終わったら、それっきりなのかよ……そんなの、違うだろ? 俺たちは皆、博士の家族じゃないか。家族は、役目とか、機能とか……そんなの、関係ないだろ? 博士は役に立たないからって、負けたからって、俺たちのこと嫌いになったりしない。いつだって、愛してくれてる。博士が、俺たちが……どんなに必死になってお前のこと修理したと思ってんだ。取り戻したくて……失くしたく、なくて、もう一度会いたくて……今度は、お前の支えになろうって頑張って……』
『そんなことは分かっている。それでも俺は、もう――』
 機械的な声音にクイックは爆発した。
『嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ! お前にもう生きる目的がないって言うなら……だったら、俺のために生きろ!』
 メタルは虚を突かれたような顔をした。クイックはそれに構わず、自らの奥底から噴出してくる溶岩のような思いを言葉に代える。
『俺はお前が好きなんだ! お前に生きてて欲しい。一緒にいたい。それが理由じゃダメなのかよ! 生きるのが辛かったら他の奴じゃなくて、俺を恨めばいい。俺のことだけ恨め。俺のことならどんなに憎んでくれたってかまわない。それで、お前が生きててくれるなら……俺は、それでもいい!』
『クイック……』
 浴びせられた言葉の意味を考えるように、メタルが名前を呼んだ。
 それすら消える合図のようで恐ろしくて、クイックは相手を抱きしめる。
『頼むから、俺たちを――俺を、捨てないでくれ……』
 一つの意味が失われたなら、新しい意味を見つけ出すしかない。
 自分たちだってそうやって、何とか生きてきたのだ。道のない場所でも、歩き続けることは出来る。家族が揃ったら、また新たな道を皆で探せばいい。
 消え去ってしまった存在意義がどんなに辛くても、乗り越えることはできるはずだ。
 0と1でできた涙が溢れる。
『好き、なんだ……お前が……お前のいない世界なんて……俺は、いらない……』
『…………』
 息を呑むと同時に、唐突に――
 [DWN.009] MAIN OPERATING SYSTEM : metalheart
 RECONSTRUCTION//AUTO RETRY STURT……………DONE.
 EMOTION DRIVE [SUCCESS:098 / ERROR:000 / OVERRUN:002]//connected.
 ALL SYSTEM RECONSTRUCTION COMPLETED.
 ――そう言う彼が、クイックが『欲しい』と思った。
 一番欲しかった、それ以外望んでいなかった、もう二度と手に入らない『ワイリーの感謝』と同じくらい欲しい。メタルはそれがどういうことなのか理解も出来ないまま、湧き上がった欲求に戸惑う。
 存在意義を失った自分は『DWNが優秀でないことの証明』である自分の存在に耐えられず、そんな自分が『ワイリーに捨てられる』ことに耐えられず、自分で自分を捨てようとした。
 それなのに、その自分に対してクイックは『捨てないでくれ』と言った。
 彼らを捨てるつもりなどなかった。ただ自分は――自暴自棄になっていただけ。
 存在を望まれるがゆえに生まれた――自分が作られた意味が、感情と結びついて意味を取り戻した。
 お前がいてくれるから――最初からそこにあった戦う理由が、意味を取り戻した。
 自分を抱きしめる弟――強く強く、何も省みずに、ただ自分が『在る』ことを望んでくれる存在を、メタルは抱きしめ返した。
 指を伸ばして頬を拭う。0と1でできた涙がキラキラと闇に散っていく。
 あれはどんな味がするのだろう。後で――そう、後でだ。起動した後に味わってみよう。
 そう考えながら、腕の中のクイックを強く抱いた。
『すまなかった』
『メタル……?』
『俺も、一緒に居たい……また、お前たちと一緒に……』
 光の戻った目は、なんだか呆然としてるようにも見える。
『メタル、それじゃ……』
 メタルの意志を悟って、クイックの表情が輝く。メタルはもう一度強く抱擁すると、弟から離れた。
『戻れ。俺もすぐに行く』
 微笑み、頷いたクイックが矢印に掴まって戻っていくのを見送る。


 [DWN.009] RESTART…………DONE.
 視界が開き、光が見えた。



>>【再構築_09_1】




+++++++++++



あと2話!

あれは、一種の、メタルの甘えです。自覚はないですけどね。
悪なんだから、建前なんか捨ててもいいじゃない!わがままでいいじゃない!





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