大変お待たせいたしました!ゆうたろう様のリクエストで「バブスプほのぼの」です。だだ甘いです。
「MQE三角関係でドタバタラブコメ余裕なしM」とどちらかということだったんですが、こっちになりました。理由はあとがきの方で……
【10/19追記】
表現のおかしいところを直しましたorz
申し訳ありません。もっと落ち着いて投稿しろという…
【Chinese milk vetch】
今日の海はとてもいい天気だった。私はいつもの岩場に腰掛けて空を見上げる。
全てが輝いていた。今の私は、それを喜びとして受け入れられる。
あの人が来る前に、少し練習しておこう。
覚えたばかりの歌だから。
かつて私は、広い海で孤独を紛らわせるために歌っていた。辛い気持ちを忘れ、自分を奮い立たせる――誰かのためじゃなくて自分のための歌だった。
でも、今は好きな人に聞いてもらいたい。
あの人のために歌いたい。
あの人を思って歌いたい。
だから、歌手にはならない。一人に向けた歌を歌うことはできなくなる。
せっかく歌うことが好きになれたのに、その気持ちを忘れてしまいそうだから。
+
青空に向けて最後の音が消えていくと、いきなり背後で拍手が鳴った。スプラッシュが慌てて振り向くと、水面から上半身だけ出した緑色のロボット――バブルが手を叩いていた。
「バブル! い、いつからいたの!?」
「半分くらいからかなぁ……気持ちよさそうだったから、邪魔しちゃ悪いと思って」
彼はよいしょ、と掛け声をかけて機体を引き上げると、真っ赤になって俯いている青い人魚ロボットの隣に腰掛けた。
「それに、僕その歌好きだから……君の声で聴けて嬉しかったんだ」
「私も最近知ったんだけど、気に入ったから練習してたの」
「そうだったんだ。嬉しいよ」
「べ、別にあなたのために練習してたわけじゃ……」
「わかってるよ。でも、同じ歌を好きになれたことが嬉しいな、って」
にっこりと微笑むバブルの顔から目をそらし、スプラッシュは必死に動力炉の出力を抑えながら、そっと安堵の吐息を漏らした。
(よかった……ばれてないみたい)
練習していた歌がバブルの気に入りだということなど、彼女はとっくに知っていた。というより、偶然知り合ったワイリーナンバーズからバブルの好きな歌をこっそり聞きだしたのだ。
スプラッシュはいつも仕事の合間に特定の岩場に上がって機体を休め、歌を歌う。バブルがそれを聴きに来るようになってからそれほど時間は経っていないが、スプラッシュには気まぐれに訪れる観客のために歌うことが密かな喜びだった。
「スプラッシュ、今日は何を歌うの?」
「……観客は黙って聴いてなさい」
「はいはい」
ゴーグル越しに細められた瞳の優しさに胸の奥で硬く凝った何かが温かく緩み、満たされるのを感じる。その感覚を愛しむように胸に手を当て、スプラッシュは一面の青に向かって声を放った。
「なんだか……」
何曲か思うままに歌った後、差し入れのE缶を飲んでいるスプラッシュにバブルが尋ねた。
「今日は僕の好きな歌ばかり歌ってくれるね」
「そ、そぅ……?」
むせ返りそうになったスプラッシュは、ぐっと堪えて平静を装った。
「私は好きな歌を歌ってるだけよ」
「なんだ……僕のために練習してくれたのかと思っちゃった」
のんびりとしたバブルからは失望は伝わってこない。冗談半分で言っているのだろう。だが、図星を指されたスプラッシュは「違うわよ」と否定しようとして口をつぐんだ。
バブルのことが好きなのだ。つまらない見栄で隠して何になるだろう。
E缶を両手で包んでしばらくもじもじした後、小さな声で告白する。
「本当はそうなの……っていったらどう思う?」
バブルは驚きに目を見開いた後、ふわりと微笑む。
「すっごく嬉しいよ。さっきも言ったけど、君の声で聞きたいと思ってたから」
「……よかった」
喜びと安堵で手が震える。
「実は、この間あなたと一緒にいたワイリーナンバーズ――」
「クラッシュのこと?」
「そう。彼に連絡して、あなたの好きな歌をこっそり教えてもらったの。兄弟に聞くなんてズルイかなと思ったけど、あなたを驚かせたかったから」
「なんだ、そうだったのか。プレゼントもらったみたいで嬉しいな」
ばらしてしまえば何のことはなかった。取り澄ました顔など捨てて笑い合ったほうが楽しい。
「君は良く笑うね」
自分こそいつもニコニコ笑っているくせに、バブルはそんなことを言った。だからだろうか、スプラッシュはつい本音を漏らしていた。
「……普段はあんまり笑わないのよ、私。仕事の時は、助けた人を安心させたくて微笑んで見せるけど、心からたくさん笑えるのはあなたの前だけ」
言ってしまった後、猛烈に恥ずかしい内容だったことに気づいて慌てた。
「違うのっ! わ、私っ……あのっ!」
「スプラッシュ」
真っ赤になって今にも海に飛び込んでしまいそうな彼女の手を取り、バブルが言った。
「今度は一緒に歌おう。僕も少しは歌えるから」
「う、うんっ」
頷いたスプラッシュは、離れかけたバブルの手を反射的にぎゅっと握り締めていた。バブルは唇が震えて声も出せない彼女の頭を、そっと自分の肩に寄りかからせる。
「やっぱり歌うのはやめにして、時間までこうしててもいいかな?」
「……うん」
小さく頷いたスプラッシュは、重ねあった手を見つめながら、
――あなたが、すき。
口の中でそっと呟いていた。
+++++
×ほのぼの
○イチャイチャ
……ほのぼのって、何ですか?(結局書けてない)
タイトルは蓮華草の英名です。花言葉は「あなたは幸福です、あなたは私の苦痛を和らげる」。バブスプは9のストーリーの影響ですっごく暗いイメージがあって、ネタは決まっててもなかなか筆を取れなかったのですが、最近なんだか頭がピンクな勢いを利用して書きました。短めですが、あんまり長くするとシリアス要素が出てきそうだったので;
スプ嬢のツンデレ成分はプロットにはなかったのに……アレ?最近泡潮ワールドイズマインを聞いたせい?
泡は兄弟の前でのクールさを捨ててほのぼのしてます。
「MQE三角関係でドタバタラブコメ余裕なしM」が書けなかったのは、余裕のないメタル=鬼畜病んデレどSなのでコメディ要素ねええええええ!と私がガクブルしてしまったからでした;Qがこっち向いてる間は良いんですが、ハッキリ自分と他人を天秤に駆け出したことがわかった瞬間ヤンデレにモードチェンジして破滅にまっしぐら。中間がありません。
どっちにしろMもEもヤンデレ要素があるのでQ大変だね(他人事)
こういう結果になりましたが、ゆうたろう様、リクエストありがとうございました!!
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ありがとうございます!!
2009/10/20(Tue)21:30
お願いして良かったと心から思います。
二人とも可愛すぎる…!
手をつないでる二人のシルエットを想像してニヤニヤしてしまいました。
バブルのために好きな曲を練習してるのとか可愛すぎです!!
本当にありがとうございました!
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