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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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004:速度狂の停滞_02 (M+Q+α)

2008/11/24(Mon)02:13

続きです。Mがマジギレします。





【速度狂の停滞_02】



 目を開けると、そこには見慣れた演習室の天井があった。
「クソッ!」
 毒づいたクイックは身を起こそうとして目の前の透明な壁に思い切り額のV字センサーをぶつけた。硬い壁に無情にも弾き返され、クッションの上に頭が落ちる。
「………~~ッ」
 憮然とした顔で天井を眺めるクイックの耳元に通信。
≪落ち着いて。今カバーを開けるから≫
 ひとつ上の兄――バブルマンの声が響くとぷしゅっと空気の漏れる音と共に眼前を覆っていたカプセルカバーが開き、全身のコネクターに繋がっていたコードが自動的に外れた。
 別に痛いわけではなかったが、クイックはなんとなく額に手をやりながら今度こそ起き上がり、むすっとした表情で周囲を見回した。
 八つのカプセルが放射状に並んだ部屋は広いというべきなのだろう。だが、カプセルのうち七つは空で、最後の一つにはクイックマンがいるだけだ。この部屋で最も目立つのはど真ん中に設置された巨大な端末で、そこから伸びた無数のコードがぐねぐね床を張ってカプセルに繋がっている。
 端末には緑を基調とした装甲を待つ一つ上の兄、バブルマンが座っており、端末のコネクターとレーザーケーブルで接続して画面を眺めている。傍らにはクイックとは似て非なる暗い赤色の装甲に身を包んだ長兄のメタルマンが立っており、腕組みして画面を覗き込んでいた。次兄のエアーマンの姿はここにはない。
 クイックはDWN.009メタルマンが苦手だ。嫌いといってもいい。
 いずれ自分たちは八人兄弟になるという話だが、クイックたちの製作者であるワイリー博士は現在五体目を製作中で、クイックマンはDWNの中では起動して間もない末弟扱いだった。
 クイックは兄弟の中で自分が誰よりも強いという自覚がある。それだというのに、兄たち――特にメタルに命令されるのは屈辱だった。
 いついかなるときでも冷静沈着、決して表情を崩すことのない彼を見ていると、なんだか見下されている気がして猛烈に腹が立ってくるのだ。エアーも似たようなところがある上にメタル以上に兄貴ぶるところはある。だが、彼は顔らしい顔はないくせに妙に表情が豊かである意味わかりやすく、さほど腹は立たなかった。バブルも冷静だが、メタルとの違いは『泡』と『金属』のように明白だ。
 要するに、何がいいたいかと言うと、クイックはメタルが嫌い――それに尽きる。
 バブルが訓練結果を携帯端末にコピーし始めると、メタルがこちらを向いた。
「クイック――」
 名前を呼ばれたクイックは顔も見ずに言い返した。
「ああ、油断したんだよ! 悪かったな!!」
「最後のことを言ってるんじゃない。なぜ味方機を置き去りにし、通信も拒絶した?」
「トロくって邪魔だからに決まってるだろ。そもそも、あいつらが俺の速度についてこれるわけがないだろうが」
「先行しすぎだ。連携が取れていれば味方機を三体も撃破されずに済んだし、無理して二つ目のプロテクトを外す必要はなかった」
「あいつらがそこまで役に立つとは思えないね」
「役に立つかどうかじゃない、彼らを役に立てる方法を考えろ。何でも一人でできると思ったら大間違いだぞ」
 クイックはまだメタルと顔をあわせてはいなかったが、乱れのない声に怒りが抑えられなくなる。振り返り、兄を睨む。
「一人でやれたさ! 途中までは俺一人で十分敵を追い詰めてただろ!? 最後のあれだって、油断さえしなきゃ――」
「だが、事実お前は油断して罠に飛び込み、結果的に任務に失敗した。シミュレーションだから今こうして言い訳もできるが、実戦ならばお前はもうこの世にいない。さらに言えば、お前が最後に遮断した通信内容は『前方に多数の敵が潜伏中』という警告だった。せめて彼らの通信に耳を貸していれば、罠にかかることはなかったはずだ」
 暴力的なまでの正論――ぐっと押し黙る弟の目を見つめ、メタルは淡々と続ける。
「今いる俺たちも、これから生まれるお前の兄弟も、誰一人お前に匹敵する速度を持つことはない。それは、ワイリー博士がお前と同じ性能を持つロボットを再現できないという意味ではない。お前とは異なる個性と能力を有しているというだけだ。八人目の兄弟がそろえば、本格的に任務を開始する。そのとき、お前が『連携』という言葉さえ拒否するようでは困る。強いだけでいいなら心は要らないし、固有の能力を持った唯一無二の存在として造る必要もない。博士が何のために――」
 博士が何のために俺たちを兄弟として作ったのか、その意味を考えろ。
 起動してから半月、毎日のように聞かされたその言葉は一言一句覚えている。
 積み重なった苛立ちの重みはクイックの心もとない『我慢』を押しつぶし、心では思っていても流石に言うべきではないと自重していた言葉を声に乗せていた。
「うるさいっ! 弱いくせに、俺に説教するな!!」
 メタルが黙った。
 ついに言ってやったぜ――胸がすっとしたクイックだったが、バブルの「あ~あ、やっちゃった……」という悲惨な表情を見て眉をひそめた。緑色の兄は何かに耐えるようにうつむいて長兄からも弟からも眼をそらす。
 少し視線を上げた。メタルはうつむいており、唯一表情が見える彼の目許はヘルメットとマスクの陰になってまったく見えない。
 何やら寒かった。部屋の温度が落ちたような気がするが、センサーは変化なしを告げてくる。つまり、物理的に寒いのではない。ならば何故、自分は『寒い』と思うのか。
「…………?」
 妙な圧迫感を覚えたクイックは視線をさまよわせ、軽く顔を上げたメタルとばっちり目を合ってしまった。
「――――っッ!!」
 全ての処理が一瞬停止した――そう思うほどの威圧感だった。クイックは生体パーツを一切使用していない生粋のロボットではあるが、まがりなりにも『心』を持つロボットである。視覚センサーにはまったく変化はなかったが、クイックの心の目にはメタルの身体から立ち上る得体の知れないオーラが視えた。それは霜が降るほど冷たかったが、同時に触れたものを全て燃やし尽くすほどに熱かった。
 メタルは怒っている。
 ものすごく怒っている。
 自分で言っておいてなんだが、メタルは「弱い」といわれた程度でここまで怒るような男ではないとクイックは思う。
 何故メタルはここまで怒っているのか。それがわからないが故にクイックは怯えた。
 シミュレーション上ではあったが、四方を敵に囲まれ絶体絶命の状況にあっても怯えたことのないクイックが怯えさせられた。
「…………」
 クイックは喋れない。
「…………」
 メタルは何も言わない。
「…………」
 バブルは賢明にも口を噤んでいた。
 実際には十秒ほどだったのだが、クイックには永遠にも思える時が過ぎ、肺から小さな呼気が漏れた。活動を停止していた人工声帯が震える。
「ご……ごめん、なさい……」
 本当に反省したわけではなかったが、言わずにはいられなかった。この状況から抜け出せるなら何でもすると思ってしまっただけだ。
 クイックが謝るとメタルは視線を外し、周囲を支配していた圧迫感が消えた。とばっちりを受けたバブルが小さく肩を落とし、メタルはコピーの終わった携帯端末のコネクターを外した。
「俺のことが気に食わないならそれでいい。だが、命令には従ってもらう」
 彼はそう言うと、部屋を出て行った。




+++

ようやくメタルの説教⇒マジギレが書けました。
とりあえずここまで。続きは書けたら上げます。


>>【速度狂の停滞_03】

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