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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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歪曲した誠実の対価:その1(F×Rl)

2010/02/14(Sun)15:42

バレンタインネタ……MQだけのつもりが、気づいたら三つに。
とりあえず、時系列順に書いて出来上がったらうp、ということであんまり推敲とかしてないですが;今日中にあと二つ書けるといいな。

タイトルはお題配布サイト様からいただきました。


【歪曲した誠実の対価:その1】



 ライト家のキッチンに甘い香りが漂っていた。日付は2月13日――バレンタインの前日である。ロールは毎年家族にプレゼントするチョコレート菓子を作っていたが、今年は隣街にいるワイリーナンバーズたちの所へも持って行くつもりだった。
 今年のお菓子はマカロン。ココアや抹茶、何色かの食紅などで色をつければ楽しいし、大量に作ることで発生する作業量も苦にはならない。
「さて、と……最後はどの色にしよっかな」
 卵白を泡立ててメレンゲを作ったロールは、食紅の小さなボトルの上で指をさまよわせた。すでに赤、緑、茶色、黄色の焼き上がったマカロンが所狭しと広げられ、冷めるのを待っている。
 実際のところ、使っていないのは青の食紅だけだった。その色にだけはなかなか手をつけることが出来なかったのだ。
(色なんて、無理につけなくたって……)
 だが、色とりどりのマカロンの中で青だけがなかったら『彼』はどう思うだろうか。
(わざとだって、思うわよね……)
 その程度のことで『彼』が傷つくとは思えないが、ワイリーたちにまで菓子を持っていくことにしたのは、誰にも気づかれること無く『彼』に食べてもらうためだ。木の葉を隠すなら森の中というではないか。
 『彼』はロールの秘密の恋人だった。他の誰にも気づかれてはならない。
 贈り物一つにも気を使うのだ。
(他の色もあるんだし、大丈夫よね! ロックだってエアーマンだって青なんだし、マカロンが青くたっていいじゃない)
 自分がその色に対して過敏になっているだけだ。
 ロールは深呼吸をして内部を冷却すると、意を決して青い食紅を手にした。
「ロールちゃん」
「きゃぁっ!!」
 悲鳴を上げて食紅を放り出す。きっと睨みつけた声の主は兄のロックだった。彼は幼い顔に驚きを浮かべている。
「ど、どうしたのロールちゃん……」
「なんでもないわよ! ロックがいきなり声を掛けるからじゃないの!!」
 猛烈な羞恥心に駆られて怒鳴りつけると、ロックはたじたじとなった。
「ご、ごめん……大変そうだから手伝おうかと思って」
 もう夜も遅いし、と呟く兄の姿に、ロールは再び深呼吸をした。今度は気持ちを落ち着けるためだ。
「もう……あげる相手に手伝ってもらってどうするのよ。あと少しだし、一人で大丈夫」
「そう? 洗い物でもしようか?」
「いいから」
 ロックを追い出したロールは、床に落ちた食紅を拾い上げた。メレンゲに砂糖とアーモンドパウダー、スプーン一杯の青い色素を入れて混ぜながら、心の中で兄に詫びる。
(ごめんねロック……この色は『あの人』のことを考えながら作りたいから)
 純粋な好意で手伝いを申し出てくれたことはわかっていたが、誰かが側にいると想いにひたることができない。
 恋とは本当に自分勝手な感情だった。

   *

「どうぞ、皆さんで食べて頂戴」
「ありがとう。これはお返しだ」
「あら……美味しそうね。ありがとう」
 メタルマンに渡されたのはシフォンケーキだった。箱の隙間からのぞくと、チョコレートの香りがふわりと漂う。ロールはにっこりと笑顔を返し、受け取った。
 自分の色を見つけて喜んでいるロボットたちの中に『彼』の姿はなく、ロールは内心がっかりしていたのだが、お土産を持たされて喜んで見せないわけにはいかない。メタルマンが作ったのであれば不味いはずがないので期待できるが、今でも緩やかな対立関係にあるライトナンバーズたちは複雑な顔をするに違いない。
 もともと長居する気は無かったので、別れを告げてさっさと彼らの研究所を出る。マカロンを入れていた袋にケーキが入り、荷物の量は行きと帰りで変わらない。
(あーあ……せっかく会えると思ったのに)
 貰ったこのケーキ、一人で食べてしまおうか。
 どうせ食べ過ぎたところで太るわけでもなし。
(そうしよ。どうせ皆なんだかんだ文句つけるに決まってるし。食べさせるのが勿体無いわ!)
 ふん、と鼻を鳴らして研究所の門を出る。右に進路を取るべく曲がった瞬間、青が目に入った。
「よぉ」
 DWN.014フラッシュマンが門の前で煙草を吸っていた。ロールの姿を見ると携帯灰皿で煙草をもみ消し、近づいてくる。
「どうしたよ」
「だって……なんで……?」
「ここで待ってりゃ来ると思ってな」
 他の奴らがいると安心して話せないだろ?
 にやりと笑う『彼』の姿に、ロールはあやうく自制心を失って抱きついてしまうところだった。
「あ、」
「あ?」
「あ、あなたがいないと思って……がっかりしたのよ?」
 口では恨み言を言いつつも、喉のところまで競り上がった喜びの感情に涙腺がキックされ、涙が滲んだ。オーバーフローを起こせば、せっかく貰ったケーキも何もかも放り出して泣き喚いてしまうかも知れず、ロールは肩を震わせて自制する。
「悪ィ」
 フラッシュは手を伸ばして親指の付け根でロールの涙を拭った後、その手を取って何かを握らせた。
「何?」
「プレゼント。別にチョコじゃなくてもいいわけだろ?」
 掌の感触でわかった。
 指輪だ。
 手を開くと、飾り気のないシンプルな銀の輪が見えた。
「まぁ、玩具みたいなもんだけどな……自分の小遣いで買ったって事にしておけよ?」
「わかってるわよ」
 涙は引っ込んでいたが、今度は顔がにやけて仕方が無い。
 フラッシュは玩具扱いしたが、ここまでシンプルだと逆に大人っぽくも見える。
(でもね……今日くらいはね……?)
 大人扱いを期待してキスをねだったが、いつものようにおでこにされ、ロールはケーキの入った袋を振り回してフラッシュを追いかけた。



+++++++



3の前なんでまだ幸せそうな。
マカロンの絵を書くときにネットを見て、緑があるなら青でもいいじゃんと思ったしだい。綺麗に焼けるのかなぁ……わかりません。

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