これでラストです。
【夜警_03】
≪なあ――≫
≪何だ?≫
≪お前、何でさっき怒らなかったんだ?≫
≪怒る?≫
メタルは何のことだ、と言いたげだ。クイックは相手の物分りの悪さに眉根を寄せる。
≪さっさと起こせば良かったのに――ってやつ。いつもなら『どうして連絡しなかった』じゃないのか?≫
≪別に非常事態ではなかったようだし、実際、あれ以上の動きがあればお前だって即座に連絡をよこしただろう?≫
≪まあ、そうだけど≫
納得していないクイックに、メタルは何か考えるように数秒沈黙する。
≪そうだな……お前は戦士であり、兵士だ。行けと言われた場所へ行って、戦うのがお前の役目だ≫
≪だったら何で――≫
≪だが、ただ指示を待っているだけというのは困る。少しは自分の頭で考えてもらわないとな。せっかく博士が優秀な電脳をくれたんだ――苦手とする事はあっても、俺たちに不可能は無い。的確な判断を下せるだけの経験を積めば、お前には優秀な小隊長になれると思っている≫
思わぬセリフに、クイックは沈黙した。
個性的過ぎる弟たちに日々頭を悩ませている長兄が、ここまで自分たちの可能性を信じているとは。
不可能は無い――それは自分たちの父であるワイリー博士の信条だ。その信念を持って彼は自分を作り、時を止める力を持つ弟を作り、世界征服に乗り出している。
だが、メタルの言葉は博士のそれとは少し違うような気がするのだ。なんというか、ひどく――照れくさい。
≪なんだよ……気持ち悪いな≫
≪お前は短慮をしなかった。結論は下せなくても、考えたんだ。それが成長でなくてなんだ? 博士もお喜びになるだろう≫
≪い、言うのかっ?≫
そんな子供みたいな成長をいちいち報告されるのは嫌だ。だが、メタルの返事はにべも無かった。
≪当たり前だ≫
≪じゃあせめて、他の奴には言うなよ? ぐずぐず迷うなんて俺らしくない――嫌なんだ≫
≪そうか。なら、次からは迷ったとき仲間に相談するんだな。時間を無駄にしないで済む≫
≪うっ、うるさいな! わかったよ!≫
必死の懇願が通じたかどうか、正直クイックにはわからなかった。メタルは言わないとは約束しなかったのだ。
「言うなよ……?」
顔が熱い。モーターの駆動が早まる。高度な感情表現プロセスは、人間のように感情を身体機能に反映させることさえする。つくづく余計な機能だと思う。
ふと目を上げれば、一匹のバットンがクイックの注意を引こうと周囲を飛び回っている。回収班の到着を知らせようとしていたらしい。
「わかったわかった。無視して悪かったよ」
了解の証に手を振ると、さらに心配げな質問信号が飛んでくる。顔面の表面温度が上昇しているようだが、何か不具合でもあるのかと言っている。
クイックは言った。
「ほっといてくれ」
声音から不機嫌を察知したのか、バットンは激しく頷いて仲間の下へ飛び去った。
月が明るい。いつか自分も光の速度を超える日が来て、ひと蹴りであそこまで跳んでいったりできるのだろうか。馬鹿みたいだ。
不可能は無い、だなんて――合理主義、現実主義者のメタルの口からそんな言葉を聞かされると、信じてしまいそうになる。
気分が落ち着くと欠伸が出た。
ロボットたちの残骸が運ばれていく音を聞きながら、クイックは作業が終わるまで眠ることに決めた。
――彼が本格的に眠り込んでしまったという報告を聞いたメタルが覚醒コマンドをクイックの脳ミソに突っ込むのは、三十分後のことである。
+++
Qが戦ってるところが書きたかったんだ。月の下でブーメラン背に伏せてるQが書きたかったんだよ。
せっかく戦闘用ロボットのジャンルなんだから、今まであまり手をつけてこなかった戦闘描写をたくさん書いていきたい。
私の脳内でQの強さは異常なんですが、どうやったらロックマは勝てるんだろう?……タイムストッパーか。
うちのQの外見・精神年齢は18歳~20歳くらい。若造です。感情という本来ロボットと相容れないモノに振り回されてる感じ。
Mは27、8歳ですが、精神年齢はもっと上かもしれない。すでに感情を制御する術を知っています。
[3回]
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はじめまして!
2008/11/04(Tue)22:02
クイックめっちゃかっこよかったです!メタルもイイv
これからも頑張ってください!
応援してますノシ
No.1|by シエル|
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