ネタメモを見返してたらちょっと古いけどアップしてないのがあったので掘り出し。
コピメタフォルです。
<その25>
「寝付くまで、ここにいようか?」
その囁きはひどく優しく、冷ややかな響きと相反する温かさを内に秘めていた。
寝付く、というのは厳密に言えば正しい言い回しではない。ロボットがスリープモードに入るにはほんの数秒あれば済む。
ロボットに関する知識では自分などはるかに凌駕しているくせに、彼は機械の働きを人間に例える物言いを好んだ。
「どうする?」
彼――コピーメタルマンの声はいつも、冷ややかでありながら甘い、アイスクリームの印象を持つ。それも、彼の目と同じ緑色をしたミント味のイメージ。
こちらの掌を指先でくすぐりながら、愛しそうな眼差しを注いでくる。
「……別に、いたければいればいい」
メンテナンス用の台に横たえられ、無数のコードやケーブルに接続されたまま、フォルテはぶっきらぼうに答えた。
今夜はずっと、こうしていなければならない。だが、どうせ寝ているうちに面倒な整備が終わってくれるならそれでいい。
子供ではあるまいし、「そばにいようか?」など、こちらを侮辱しているのかと思う。
それでも、「出て行け」とか「一人にしてくれ」とすぐに言えない自分はなんだろうか。
制御下を離れているせいで動かせない自分の指に、コピーメタルの指が絡むのが――
彼に見つめられていることが――
(う、嬉しいとか……そんなわけあるか!)
心の中で否定の叫びを上げ、フォルテは言った。
「いたくないんだったら、無理している必要なんて無いんだぞ」
「じゃあ、やっぱりいようかな……もう少し、フォルテと手を繋いでいたいしね」
その声は冷やりと甘くフォルテの聴覚センサーを震わせ、ミントアイスのようにすうっと溶けてしまった。
それこそ彼の愛情の本質のようで、どうにも怖くて、それでいて逃げられない。
一瞬ではかなく消える甘さを留めておきたくて。
「……好きにしろ」
「そうするよ」
くく、と小さな笑い声がした。
愛しげに。
[2回]
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