ようやくかけたよメタクイ!もうメタクイ読みたくて読みたくて仕方ないんだけど探してもあんまりないから自家発電乙!!どうせいつでも自家発電ですよーだ!誰か、誰か書いてくれ……もっと。足りないんだよぉおおおお……はあ、はあ、はあ……落ち着け。
というわけで、キリバン企画その8です。Qが担当キャラなんですがメタクイなのでタイトル表記が妙な感じになってます。ページ丸ごとメットレスしてます。
クイックがテラ乙女なので注意。メタルは復活後なので微妙に性格がアレです。わりとらぶい感じ。
【結局はいつだってあなたの望むまま】
触れられたいと望み、触れられたくないと思う
彼を見ていたいのに、見られたくないと思う
自分が自分でなくなってしまったようで、怖い
「メタル!」
リビングルームに響いた声に、その場にいた全員が振り向いた。いつの間に現れたのか、クイックが入り口に立ってひどく真剣な表情で名を呼んだ相手を見つめている。
部屋の中央辺りでフラッシュと話していたメタルは訝しげな表情でつかつかと近寄ってくる弟を見つめた。
「クイック――」
何か用か、と言う前にクイックは傍にいたフラッシュをじろっと睨み、睨まれたフラッシュは思わず二人から目をそらした。その場にいたほかの兄弟たちも、「ああ……」といいたげに目をそむける。
「おい、クイッ――」
目にも留まらぬ速さで肩を掴まれ唇をふさがれ、メタルの言葉が途切れる。
「…………」
まつげが触れそうなほどの距離に、ぎゅっと目を閉じた弟の顔がある。心なしか頬が赤い。
冷静に観察したメタルは、指先でクイックの頬に触れた。わずかに唇を動かすと、クイックはそれが灼熱した鉄であるかのように飛び離れ、背を向けて一目散に逃げ出した。
声をかける暇もない。
「…………」
残されたのは憮然とした表情のメタルと、恐る恐る長兄の様子を伺う弟たちだ。
「……なんなんだ、あいつは」
「さぁ……」
不機嫌に軋る声で問いかけられたフラッシュは、注意深く視線をそらして曖昧に答えた。
エアーは頭痛がするかように額を抑え、バブルは深いため息をついた。クラッシュ、ヒート、ウッドが顔を見合わせる。
メタルは眉間に深い皺を刻んで、クイックの逃げ去った入り口を見つめている。
ここしばらく、繰り返されている光景だった。
クイックがメタルに思いを告白したのは、ロックマンと戦う直前のことだ。そのときの戦いによってメタルは大破し、再起動するまで半年余りの時間が経っている。
ロックマンを倒した後、メタルの返事を聞く――そう宣言したクイックは、いまだにメタルの返事を聞いていない。というより、メタルとまともに顔をあわせられないのだ。そのくせ、メタルが自分以外の誰かと一緒にいるのを見ると耐えられなくなる。
先ほどもそうだ。たまたまリビングを通りかかって、メタルがフラッシュと話しているのを見てかっとなった。激情のままにメタルに触れて、我に返って逃げ出した。
情けない。
こんな自分がワイリーナンバーズの切り札かと思うと、申し訳ないやら哀しいやら。
クイックの思いは、今は兄弟全員が知っている。だから何も言わず、そっとしておいてくれているのだと思う。それがとてもありがたい。
あの時の答えを聞きたいと言えば、メタルは教えてくれるだろうか。
ロックマンを倒せなかった自分には、その答えを聞く資格があるだろうか。
答えを聞くのが怖いわけではない。たとえ拒絶でもいい――そう思う。
ただ、こんな風に取り乱したり落ち込んだりする自分は、きっとメタルの望む『クイックマン』ではないと思うのだ。今の自分は、かくあろうとしてきた理想の戦士とは程遠い。
好きだという思いが日に日に強くなり、自分が自分でなくなってしまう。それが何より怖い。
キスしている間、先ほどのようにメタルから触れてくることもある。だからきっと、嫌がっているわけではないのだろう――メタルの方から顔を近づけてきたことさえある。
そのときは、恥ずかしさの余り逃げた。
そのままでいれば、メタルの答えを聞けたかもしれないのに。
「はぁ……」
情けなさにうなだれていたクイックは、やがてよし、と頷いて顔を上げた。
ふがいなさを嘆く暇があれば、さっさと覚悟を決めるべきだ。
今夜、メタルの答えを聞きに行こう――
夜――寝静まったワイリー研究所の廊下を歩き、クイックはメタルの部屋の前に立った。
相手はまだ起きている。部屋の端末が動いているを確認したので間違いない。
扉越しに声をかけた。
「メタル、俺だ……」
返事はなく、しかし、ややあって扉が手動で開いた。メタルが扉の隙間から顔を出す。逆光で表情は見えなかった。
「何だ?」
「話がある」
「…………入れ」
大きく開かれた隙間に、クイックは身体を滑り込ませた。研究所に引っ越してきてからメタルの部屋に入るのは初めてだったが、ベッドと端末だけの殺風景な部屋は基地にいたときから変わらない。
物思いに耽るクイックは、背後でメタルが扉をロックしたことに気づかない。
「で……話とは何だ?」
促されるままにベッドに座ったクイックは、端末用の椅子に座るメタルをじっと見た。こうしてまともに顔を見るのは久しぶりだ。
以前のメタルはほぼ常時、目許以外を完全に覆うフルフェイスのヘルメットを被っていた。だがロックマンとの戦いでそれは破壊され、いまだ修理されていない。他の面々もヘルメットなしで過ごすことも多く、自分たちの戦いは終わったのだと思い知らされる。
クイックはメタルの顔を綺麗だと思う。暗い赤色をした収まりの悪い髪も、彼の持つ雰囲気にとても似合っていると思う。
余り感情を表に出さない、磨きぬかれた刃のような鋭い顔立ち――見つめているだけで今にも暴走してばらばらになってしまいそうな感情を必死に抑え付けて、クイックは言葉を紡いだ。
「こ、答えを、聞きたくて……」
「答え?」
「だっ……だから……俺はお前を、好き、だけど……お……お前はどうかって、ことだ」
「……ああ」
メタルはようやく思い出したかのように声をあげ、記憶を探るように軽く目を伏せる。
「答えてなかったか……?」
「ああ……答えてもらってないぞ」
少なくともクイックの記憶野にそんなデータはない。あったらそもそも悩んだりなどするはずがないではないか。
むっとするクイックの前で、メタルは納得がいったように頷いた。
「なるほどな……最近のお前の妙な行動はそのせいか」
「妙っ……そ、それについては悪かったと思ってる」
確かに妙といわれても反論できない。謝ったクイックは、探るようにメタルを見た。
「で? お前の、答えは……?」
メタルは答えなかった。座っていた椅子から立ち上がると、数歩の距離を横切ってクイックの隣に無造作に腰掛け、
「俺も、お前が好きだ」
あまりにあっさりと言われたので、聞き流してしまうところだった。
「ホ、ホントか……?」
「嘘を言ってどうする」
呆れ顔をしたメタルが顔を近づけてきたので、クイックは反射的にのけぞってしまった。好意的とは言えないその反応に、メタルの視線と声が険を帯びる。
「……何故逃げる?」
「な、なんか……恥ずかしくて……」
「だから今まで、俺が触ろうとすると逃げていたのか?」
「まぁ……」
歯切れの悪い答えに、メタルは深々と溜息をついた。
「だったらお前からしろ」
そう言って姿勢を元に戻し、肩部装甲の刃を収納して指でクイックを差し招く。
「ああ……」
こんなにあっさりしていて良いのだろうか――クイックはそう思いながら頷いて薄く目を閉じるメタルに顔を近づけた。何故自分からなら平気なのかはわからない。震える唇を重ねるのにも、勇気を振り絞る必要があるのだが。
むしろ、そうやって覚悟が出来ているから平気なのかもしれない。
濡れた人工皮膚が触れ合う感触――メタルの片腕が身体に回され、回路がショートしそうになる。逃げ出してしまいたい気持ちを必死に抑える。
数秒後、顔を離して目を開けたクイックは、すぐ近くにあるメタルの赤い瞳が全く笑ってないことに気づいた。
クイックの見慣れた色だった。
怒りの色だった。
「……え?」
何故怒っているのか全くわからず戸惑っているうちにメタルが自身の首筋からレーザーケーブルを引きずり出し、おもむろにクイックの後頭部のコネクタに突き刺した。
「メッ――……!!」
迅速かつ正確なウイルス攻撃がクイックを襲った。メンテナンス用のマスターコマンドでプロテクトをぶち抜かれ、無防備なシステムが次々と麻痺させられる。
あっという間に動けなくなったクイックの前で、メタルが何やら怖い笑みを浮かべていた。
クイックの知らない表情だった。
こんなメタルは知らない。
「あのな、クイック……知らないようだから教えてやるが、キスっていうのは唇を合わせて終わりじゃない」
「……ぁ…………う」
メタルはケーブルを引っこ抜くと、クイックの肩を押した。なす術もなくベッドに倒れたクイックを見下ろし、さらりとした栗色の髪を愛しげに撫でる。
「動けないだろう? 四肢の駆動系をウイルスでダウンさせたからな。白血球プログラムがウイルスを駆逐するまでの間は逃げられん」
「お、前……こんな、の……」
いつもの冷静なメタルならここまで強引なことはしないはずだ。何度かこうしてケーブル越しに直結されて動きを止められたことはあったが、あれはメタルがとんでもなく腹を立てていたからで――つまり、
「怒ってる……のか?」
クイックの言葉にメタルは怪訝そうな顔をした。
「別に怒ってはいないぞ」
「じゃぁ……なんで……」
「俺の感情抑制プログラムにバグが出来たのは知っているだろう」
「ああ……」
メタルマンは恐ろしく冷静沈着な性格だと思われているが、実際はそうではない。ワイリーの副官、DWNのリーダーとしての責務を果たすため、自己生成した感情抑制プログラムで自分を縛っていたのだ。
だが、彼は大破したときにコアに損傷を受け、再生時にそのプログラムにバグが出来てしまった。通常時は問題なく作動しているが、感情が一定以上に昂ぶるとそれを抑えきれなくなってしまう――そのことを、他の弟たちはメタルが少し怒りっぽくなったとしか思っていない。クイックもそう思っていた。
だが、今こちらを見つめる瞳に浮かぶのは、怒りとは違う色だ。
「クイック……お前を、俺のものにしたい。だから今、逃げられたくないんだ」
それは自分で制御できないほど強い思いなのだと――メタルはひどく真面目な表情で告げ、クイックの唇を奪った。
「うぅ……っ」
容赦なく侵入してきた舌が執拗に口内をまさぐる。人間と遜色ない構造を実際に触って確めようとするかのように這い回り、唇を吸われ、優しく噛まれるうち、味覚センサーと触覚センサーが伝えてくる通常の感覚信号が正体不明の変異を起こして得体の知れない感覚に変わっていった。
舌が絡み合い、唇をぬるりと吸われる度にその感覚信号が走り、駆動系がエラーを起こして身体がぴくっと痙攣するのだ。
故障した――クイックはそう思った。
「メ、タ……ぅ、変だ……感覚、回路……壊れ……」
「?」
くちづけの合間に必死に訴える弟と視覚センサーをあわせ、メタルはレーザー接続でクイックのシステムをチェックした。感覚神経を司る回路に残留していた信号に気づき、薄く微笑む。
「何、笑って……」
「快楽信号だ」
「か、いら……く?」
「別に壊れてなどいない。その信号は通常プログラム麻薬などによって引き起こされるものだが、今は……」
「ん、う……」
くちゅり、と舌が絡む。奪うような、浸食するようなくちづけは、クイックを自分のものにしたいというメタルの言葉そのままだ。
口内の潤滑油が混ざり合って立てる濡れた音や吐息など聴覚センサーからの信号さえ、メタルが快楽信号と呼んだあの信号に変換されていく。
「…………ぁっ」
「お前が、キスで感じてるってことだ」
唇が離れ、溢れた潤滑油で汚れたクイックの顎をメタルが指で拭う。可愛い顔だ、と呟く相手をクイックは睨みつけた。
「可愛い、なんて……俺じゃ、ない……」
「嫌か?」
「い、嫌に決まって――」
「俺はお前のそういう顔が見れて嬉しい」
「…………ッ!」
さらりとそんなことを言うのは卑怯だ。
自分でなくなった自分を、メタルが受け入れてくれるかどうかが怖かったのに。
そんな言葉も、そんな顔も知らないのに、それを自分にくれるのが嬉しいと思ってしまう。
自分だけに、与えて欲しい。こんなに傍にいられて嬉しい――その思いはもう否定しきれず、光の速さでクイックの心を埋め尽くして、今にも溢れそうになった。
朱を昇らせた頬を、乱れた髪を撫でるメタルが問い掛ける。
「クイック?」
嫌だなどと、もう言えない。
「好きに、しろ……」
どうせ駆動形のシステムが回復するまでしばらくかかるし、自分は触れるだけのキス以上のものは知らない。続きを知りたいと思うなら、メタルに任せるしかない。そう自分に言い訳する。
長兄の望む自分でありたいと――過去の時点でそう思ってしまった自分は、そのときから逃げられないと決まっていたのだ。
「クイック……愛しているよ」
低く自分の名を呼ぶ声に、かつて聞いたことがないほど甘く優しい響きを感じながら――クイックは目を伏せて恋した相手に身を委ねた。
+++++
甘クタッテイイジャナイ。喧嘩スレスレの鬼畜メタクイも好きだけど、うちのクイックがとにかくメタル大好きすぎるのでなかなかツンツンしてくれない。なにこのオトメソ。メタルは素直クール(クールデレ?)に分類していいの?その辺の線引きは良くわかりません。しかも二人とも微妙にヤンデレ気味だったりするし。
クイックの気持ちを皆が知ってるのは、メタル大破中にクイックが宣言したからです(メタルの前以外ではさほど恥ずかしがらない子)。その話も後日書きます。
メタルの肩のブレードは収納可能になりました。抱きつくと刺さっちゃうし、日常生活において不便なので、修理するときに弟たちが勝手に改造したのです。
装甲レスもできるので人間の服も着れますが、洗濯しなきゃいけないし、身体が軽くなりすぎてしまうし、衣類代がかかるし、結局装甲が一番安上がりという結論。
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