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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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7万8万リク:Laurel(よもぎ様)

2009/10/24(Sat)22:49

本気でお待たせいたしました!よもぎ様もリクエストで「Q+Fでほのぼの」です。ほのぼのっていうかむしろギャグというか……いろいろすいません!!






【Laurel】



 一服しようとリビングにやってきたフラッシュは、煙草を咥えて火を点けようとしたところで二つ上の兄がテーブルにいるのを発見し、マッチをしまった。四男のクイックは兄弟の中で一番煙草の煙を嫌う。
 ただ咥えているだけなら文句は言われないので唇でぴこぴこさせつつ近づくと、なにやら難しい顔で資料を眺めていたので驚いた。クイックはこの手の資料を見るのが大の苦手で、自発的に目を通すことは絶対にないのである。
 興味を引かれて覗き込む。テーブルに置かれた携帯端末から浮かび上がったホログラフはレース場のサーキットを表しているらしかった。所々矢印が出て高低差がどうのオフロードがどうのと情報が出ているが、あいにくフラッシュは運転には全く興味が無い。卓上に散らばった色とりどりのチラシには『バトル&チェイス』のロゴと開催日時などが書かれている。
 ロボットレースで懸賞金を稼ぐことは現在クイックの主な仕事だった。時速四百キロ超のマシンもクイックの反射能力には遅すぎる。もともと運転が好きだったこともあり、クイックが獲得してくる優勝賞金はDWNたちの最大の収入源だった。
「賞金一千万ゼニーか。今までとは桁が違うな……ふーん、コレはトーナメント式なのか。優勝するまで金がはいらねぇのは博打だが、勝ちゃデカイな」
 チラシを手にして口笛を吹くと、クイックはじろりと弟を睨んだ。
「返せ、ハゲ」
 押し殺した怒声にフラッシュは内心首をかしげた。クイックは自分に対してこういう怒り方はあまりしない。普段ならもっと噛み付くような騒ぎ方をするはずだ。
「……ひょっとして、緊張してんのか?」
 自信家のクイックが緊張するなど、珍しいこともあるものだ。明日は雹でも降るかもしれない。
「うるせぇ、ハゲ」
「ハゲじゃねーよ。髪はある」
「知ってるよ、ハゲ。失せろ」
 相当苛々している。フラッシュはコースのデータをちらりと見た。今回はオフロードがメインのサーキットらしい。クイックのマシンはオフロードが苦手だったはずだが、この兄はむしろ障害があると燃えるタイプだ。コースのことではない。だとしたら何だろう。
 気になったが、クイックは特にフラッシュに対して意地を張る傾向がある。素直に教えてくれるわけが無い。
 だからフラッシュはこう言った。 
「おいおいオニーサマ、そんなザマで勝てんのかよ。レースだって毎回勝ってるからいいものの、一度でも負けたらマシンのメンテする金だって無くなんだぞ。ウチは資金不足なんだからな」
 案の定クイックは弟の挑発に乗った。
「そんなことはわかってる! 俺が勝つのは間違いない! ただ、インタビューが嫌なんだ」
 フラッシュの口から煙草がポロリと落ちた。
「……インタビュー?」
「いつもいつも逃げてるけど、今まではローカルなネット番組がせいぜいだったから良かったんだ! でも今回は違う。年一回のトーナメント式全国大会だから世界規模で何度も放映されるし、記者の数だって半端じゃない……でもマイクを向けられるのは嫌なんだ!」
 握り締めた拳が震えている。よほど嫌なのだろう。
 だが、記者たちがクイックを追い掛け回すのも無理は無い。道を歩けば十人に八人が振り返る長身の美形ロボットで、初登場時から超絶的なドライビングテクニックで数々のレースを制してきたニューヒーローなのだ。これほど大きな大会に出たことはまだ無いが、取り上げれば視聴率の稼げそうな被写体である。
「はぁ……お前結構目立ちたがりだと思ってたけどな」
「知るかよ! マイク向けられると緊張すんだよ!! 頭真っ白になって……何も言葉が出てこねぇ。それはそれで格好悪いし……だから嫌なんだ」
「はぁ……」
 要するに自意識が強いのだろう。まあ、この兄らしいといえばらしかった。これほど顔と中身がずれているのも面白い。
 だが、インタビューが苦手だろうが何だろうが、クイックは今のところ兄弟中で一番の稼ぎ頭である。勝ってもらわなければ皆が困る。他の科学者が造ったロボットなどに彼が負けるとも思えなかったが、本人がこの調子では万一のこともあり得た。
(しゃーねーなぁ……たまには俺様が一肌脱いでやるか)
 フラッシュは落としてしまった煙草を拾い上げて再び口に咥えた。
「つまりアレだろ? レースは全然平気だから、マイクに対して緊張しなきゃいいんだろ? お前が出発するまであと三日か……急げば何とかなるな」
「……お前、何考えてるんだ?」
 クイックは疑いの視線を向けてくる。
「いや、最近バイトで人格ソフトのプログラミングをしててな。基本は大量生産の市販ロボット用をカスタムするためのモンなんだが、基本人格はそのままで表層人格とか喋り方だけを変更するプログラムなんだ。ありていにいやぁ、そういうキャラクターの演技をさせるプログラムだな」
「それが、なんだよ……」
「だから、作ってやるよ。大勢の前に出てマイク向けられても堂々としてられるキャラクターってのを」
「……大丈夫なのか、それ。おかしくなったりしないだろうな?」
「俺を信じろよ、クイック」
「…………」
 クイックは弟の目を無言で眺めた後、小さくため息をついて頷いた。
「わかった。頼む」
「んじゃ、イメージのためにこのチラシ一枚もらうな」
 カラフルな紙をひょいと取り上げると、フラッシュはプログラム用の端末のあるラボに足を向けた。
(とはいえ、どんな性格にすりゃいいだろうな……)
 見てくれも腕も良いので、うまくアピールできればかなり人気は出るだろう。
「あの面で客受けのしそうなキャラねぇ……」
 そう呟いた瞬間、フラッシュの中に浮かび上がった顔があった。
 彼は直感を大事にするタイプである。ラボに駆け込むと、ロックマンに破壊された基地からサルベージしてきた古いフォルダを探し出した。検索中、さらにネット通信を立ち上げてバトル&チェイスのサイトにアクセスする。
 ちょっとしたイタズラを思いついたのだ。
 三日後、完成したチップを受け取ってクイックは出発した。DWNの規格に合うよう調整はされているが、ギリギリになったのでクイック自身はまだ試していない。
 見送りに出たバブルが言った。
「大丈夫なの、クイック?」
「フラッシュが作ったんだ。大丈夫だろ」
 弟を信用することで落ち着いたのか、クイックの表情に苛立ちはない。穏やかな表情の下に静かな闘志を燃やしているのは、いつものレース前と同じだった。
 クイックの姿が見えなくなると、バブルは徹夜明けで眠そうな顔でE缶を飲んでいるフラッシュを見た。
「で?」
「でって何が」
「どういうキャラなの、アレ?」
 興味津々な三男の視線に、フラッシュはニヤニヤ笑った。
「アレか。アレはなぁ……――使うと、キモヤカになるんだ」
「…………ぶっ」
 想像したらしいバブルが思い切り吹出し、フラッシュも笑いながらその背中をばしばし叩いた。なかなか笑いが止まらず二人で肩を震わせていると、ヒートが廊下の角から顔を出し、唇を尖らせる。
「何やってるの二人ともぉ……もう出発する時間だよぉ?」
「ああ、悪ィ悪ィ」
「あーもう……フラッシュてば……あははっ」
 笑いすぎによるエラーでにじみ出た涙を拭い、バブルは言った。
「クイック、きっと驚くだろうねぇ」



 家族ならいいのである。家族なら。
 あるいは部下でも。いや、よくよく思い出してみれば、部下に対して気の利いた言葉をかけてやれた記憶はあまりない。ロボットであろうとも、そういうのは士気に影響するからちゃんとしろと怒られた事もある。大人しいウッドにも出来ているんだぞと言われた時は本気で凹んだ。
 ようするに、自分は人前で話すことは苦手なのだ。
 レースに出るということは、走って勝って終わりではないことは良くわかっている。地方のレースに初めて出場して優勝した時は、マイクを持ったリポーターとカメラマンに追いかけられたので思わず戦闘速度で走って逃げた。そのときの放送では、『瞬間移動で消えてしまった謎の選手』として放映されていた。クイックのスピードが信じられなかったらしい。
 だが、いつまでも逃げているわけにもいかない。そういう意味では、フラッシュの協力は非常に有難かった。控え室で無事インストールも済み、クイックは非常に落ち着いた気分で愛車ソニックフォーミュラのシートについていた。
 レースはいい。とても楽しい。
 自分が戦闘用ロボットであることを思い出させてくれるからだ。
 静かに胸を満たす闘志を支えるのは、大切な家族の存在だ。彼らを思うとき、自分の立つ大地がとてもしっかりしたものであると感じられる。平和も嫌いではないが、やはり少しでもこういう時間を持っていないと心が鈍ってしまう。
 小さな微笑みを浮かべたとき、車体の傍に明るいカラーリングの女性ロボットが立った。
「では、注目のドライバーをご紹介します! 華麗なテクニックと脅威の反応速度で数々の地方大会を制覇し、このバトル&チェイスの舞台に躍り出た期待の新星クイックマン選手! この選手、いままで数々のレポーターが取材を試みるも、全て失敗してきた謎の選手です。ちょっとインタビューしてみましょう――クイックマン選手、このバトル&チェイスは今まで参加されたレースよりも大規模な大会になりますが、自信の程はいかがでしょうか?」
 マイクを向けられたクイックは、フッと挑発的な笑みを浮かべた。
「私の優勝に決まっています」
 精悍な美貌に浮かんだ鋭利な表情に直撃された女性レポーターロボットは一瞬顔を赤らめたが、すぐに自分の仕事を思い出した。
「お、おおーっと、自信に満ちた発言! これは期待、大です。観客席からも女性陣のエールが聞こえてきます。なかなかファンも多いようですね! 皆さん、クイックマン選手の活躍にご注目下さい!」
 会場の大歓声をよそに、クイックは笑顔を保ったまま腹の中で弟を罵倒していた。
(な、何だ今のナルシストっぽい喋り方……)
 クイックは知る由も無かったが、フラッシュが参考にしたのは彼のベースとなったDRN.008エレキマンである。彼らを改造したときのデータが残っていたので三日で完成にこぎつけたのだ。
(そりゃ、俺の優勝に決まってるけど、『私』って何だよ『私』って! 普段とキャラ違いすぎるだろ、フラッシュの野郎!!)
 だが、上手くあしらえたことには変わりが無い。レース開始まであと一分――クイックは気分を切り替え、静かに前方を見つめた。



 音速の半分にも満たないマシンの速度は、戦闘時には亜光速で戦うことが可能なクイックには遅すぎるほどだ。周囲やマシンの状況を完全に把握した上で落ち着いて操縦に徹することができる。ソニックよりも速いマシンはあるが、操縦するロボットの性能が違う。勝つのはわけもないことだった。
 毎週レースがあるので家に帰ることは無かったが、連絡を入れると対応に出るフラッシュが言うことには、皆番組は観ていないらしく、クイックはほっとしたような残念なような妙な気持ちになった。自分の活躍を見てもらえないことは少し寂しかったが、あの口調で話すのを見られるのは少々――いや、かなり恥ずかしい。
 フラッシュに頼んでもう少し違う性格に替えてもらいたいと思うのだが、困ったことにレースで知り合った友人たちにはあれが素だと思われているし、視聴者にもそうだろう。今更違うキャラに替えるわけにもいかないのだ。
 ともかく、二ヶ月以上世界を沸かせた今年のバトル&チェイスは初登場のクイックマンの優勝で終わった。表彰式の前に控え室に戻ってきたクイックは、扉を開けた瞬間タイムストッパーを受けたように固まった。
 花やプレゼントが積みあがった控え室に、ワイリー博士を含めた家族全員が勢ぞろいしていた。
「クイック、優勝おめでと~!!」
 歓声をあげて飛びついてきたのはヒートだったが、エラーで思考停止していたクイックは支えきれず後ろに倒れてしまった。
「クイック兄ちゃん!」
「……クイック、大丈夫ぅ?」
 慌てて飛び出してきたウッドに助け起こされたクイックはまだ止まったままで、ヒートが心配そうに首をかしげている。
「賞金もすごいけど、トロフィーもすっごく大きいんでしょ? それも高く売れそうだよね」
「バブル……仮にもクイックの栄光の証だぞ」
 バブルが言うと、エアーが渋い顔でたしなめる。
「わかってる。冗談だってば」
「うーむ、何故ロボット専用のレースなんじゃ。人間の出場枠があれば……ブツブツ」
「危険です、博士。自重してください」
「博士、運転好きなの?」
「もちろんじゃ! 今でもテクニックは衰えておらんぞ!」
 部屋の奥でワイリーやクラッシュと話しているメタルの姿を見つけ、クイックは再起動した。
「メタル~~~~ッ!!」
「何だ、クイック?」
 一瞬でメタルの目の前に移動したクイックは怒りに任せてまくし立てた。
「何故皆がここにいるのですか!」
「家族そろってお前のレースを観戦していたからだが?」
「クイック、その口調面白いよねぇ。『私の優勝に決まっています』って、笑っちゃった」
「!?」
 ヒートの口真似にクイックは冷水を浴びせられた気分になった。そのセリフは最初のレースでしか言っていない。
「でも、僕はクイック兄ちゃんにあってると思うよ。王子様みたい」
「王子様か……王子っていうか、貴族かな? バラの花束ばっかり」
「中身はそんな柄じゃねぇけどな」
 ウッドはともかく、吹出すのをこらえているバブルとケラケラ笑っているフラッシュはちょっと殴っても良いだろうか。いや、それよりも追求すべきことがある。
 クイックは弟にぐいぐいと詰め寄った。
「フラッシュ! 私に嘘をつきましたね! 皆はレースを観てないと言ったでしょう!」
「オイオイ、人聞きの悪いこと言うなよ。『番組は観ていない』んだから嘘じゃねぇよ」
「ではヒートは一体いつ先ほどのセリフを聞いたというのですか!」
 フラッシュはニヤリと笑う。
「決まってんだろ? 全レース生で観たんだ」
「……は?」
 あまりの答えにクイックは再度エラーを起こして固まった。一家の財布を握るメタルをぎ、ぎ、ぎ、と見れば、
「チケット代など少々高くついたが優勝すれば一千万入る。何より、お前の晴れ舞台だからな。少しくらい贅沢をしてもいいだろう」
 などと言っている。
「クイック、かっこよかった」
「そ、……そう、ですか」
 クラッシュの言葉にギクシャク頷いていると、今回のレースで二位になったロボットが控え室にやってきた。
「おい、クイックマン。そろそろ表彰式だぞ」
「え、ええ……わかりました」
 クイックは頷き、フラッシュをきっと睨んだ。
「……カメラは?」
「あ?」
「カメラ小僧のあなたのことですから、ご自慢のカメラは当然持参しているでしょうね?」
「……ああ」
 フラッシュは肩にかけていたバッグを叩いた。
「では一緒に来なさい! 私の一番格好良い所を取らせて差し上げます!」
 クイックはフラッシュを専属カメラマンだと言い張り、表彰式の写真を取らせた。

   +

 帰りのヘリの中で、フラッシュはカメラと結線してデータを確認していた。本格的なお祝いパーティは家に戻ってからだ。先ほどまで文句を言い立てていたクイックも、今は眠っている。ファンからのプレゼントを全部律儀に持ってきたせいで、しばらくヘリの中からバラの匂いが消えないだろう。
 脳裏に再生される写真は、どれもまずまずの出来だった。
 トロフィーを受け取って微笑むクイックや、家族で取った記念写真などだ。
 記念写真を撮った時にはチップを抜いて素に戻っていたため恥ずかしそうだったが、トロフィーを掲げて静かに微笑む姿など、初優勝にしては貫禄があった。
 次のデータを再生すると、マイクを向けられて静かに微笑んでいるクイック顔だった。
(こりゃ……確か……)
 優勝者へのインタビューを受けるクイックだ。嫌がられたので、こっそり隠し撮りしたせいか、あまり映りは良くない。
『初参加で鮮やかな優勝を決めたクイックマン選手ですが、ズバリ、強さの秘訣は?』
『大会中何度か、孤高のレーサーという表現をされましたが、あれは違います。私は一人ではありません。レースは孤独な戦いですが、仲間の存在が私の心を支えてくれる――それが私の強さであり、誇りなのです』
 そう答えた本人は、エアーに寄りかかって気持ちよさそうに寝ている。写真の中の大人びた様子は微塵も無い。
(……表彰台に立ってる姿よりよっぽど格好良かったぜ、兄貴?)
 あの口調で言われるとクサ過ぎるけどな。
 パーティーの時からかってやろう。
 そう決めたフラッシュはカメラの電源を落とすと、目を閉じてスリープモードに入った。



+++


何で家族全員出てきてるのぉおお!?
QとFメインのリクなのに、二人の会話少なすぎますorz
私の中ではこの二人、喧嘩するけどなんだかんだ言って仲はいい兄弟です。あと、バトチェの話はいつか書きたいと思っていたので、ここでネタを使わせていただきました。バトチェQがキモヤカなのはこういう理由なんじゃないかという妄想で……


本気でほのぼのって何ですか!?
よもぎ様、全力ですいません(><;)

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