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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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2024/11/22(Fri)13:02

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抱き締められるのに絶望的な距離(F×Rl)

2009/11/08(Sun)02:18

NLは腐向けじゃないんだ。
今回も暗いです。暗いです。9最中の話になります。
もう一度言いますが暗いです(死にネタとかではありませんが)。

需要?なにそれおいしいの?


タイトルはお題配布サイトさまからいただきました。


【11/9】誤字がいっぱいあったで修正しました。大事な字なのにorz



【抱き締められるのに絶望的な距離】



「ライトット、調子はどう?」
 研究室を覗くと、作業台の前にいたライトットが振り返った。
「あ、ロールちゃん。開発は順調ダスよ! ロックが戻ってきたらすぐラッシュを改造できるダス!」
「そ、そう……頼もしいわ」
 ラッシュは改造が嫌いなのに……でも、世界中で暴走しているDRNを止めるためならきっと我慢してくれるはずだ。
「ここにE缶置いておくから、無理はしないでね」
「ありがとダス!」
 ライトットはそう言ったが、すぐに顔を戻して部品をいじり始めた。ちょっと不安なところもあるけれど、集中力はすごい。
 あと数時間はここに篭ったきりだろう。
 ロックも、先ほどアイテムを補給して出て行ったばかりだ。
 背後で研究室の扉が閉まると、私は浮かべていた微笑を消してため息をついた。頭の片隅では、秘密の呼び出しコードのマークが点滅している。意識すると動力炉の出力が上がって、どうしても早足になってしまう。心の中は罪悪感でいっぱいなのに、必死に我慢しなければ泣いてしまいそうなほど嬉しかった。
 私は自分の部屋に駆け込むと、ドアをロックした。はやる気持ちを抑えて端末の前に座り、ケーブルを首筋のソケットに差し込む。
 電脳空間にアクセス、呼び出しコードに添付された座標に飛んだ。
【転送完了――X:13843678、Y:02048100、Z:57887246】
 私のアバターは現実と同じ姿――十歳くらいの金髪の女の子の姿をしている。その前に浮かんでいるのは、白い石のレリーフだった。不気味な顔の真ん中に、ちょうど掌が入る大きさの口がある。それは昔の遺跡に残された『真実の口』というもので、うそつきが手を入れると抜けなくなってしまう伝説があるらしい。
 あの人らしい演出だけれど、要するにこれが鍵なのだ。私の識別コードを解析して、本物だったらゲートが開くという仕掛け。恐れることなど何もないのに、手を入れる瞬間は少し怖かった。
 私はうそつきだ。ロックにも、ライト博士にも――皆に嘘をついている。
 それが辛くて悲しくても、本当のことを言うわけにはいかない。
【解析終了。DRN.002ロールと判断。転送します】
 また座標を飛ばされる。ここは中継地点に過ぎない。
 あの人と会うためには、用心にも用心を重ねなければならない。
 なぜなら、あの人はDWN――世界征服を企むワイリーのロボットだからだ。

   +

【#####様がログインしました】

 送り込まれた先は、何もない部屋だった。真っ白な空間にぽつんと一人、青い装甲の背の高いロボットがいた。もちろん、ここにいるのは彼の姿を再現したアバターだ。本体はどこかからアクセスしているのだろう。
 ここは彼の手によってセキュリティを確保されたプライベートスペースだ。彼は信用できない場所に私を呼ぶことはない。電脳警察の目もここには届かない。
 彼は私を見て近寄ってくる。
『遅かったじゃねぇか』
『仕方がないじゃない。邪魔が入らないか確かめる必要があったのよ』
 私は硬い声で言った。気を抜くと普段は抑え付けているある感情のたがが外れてしまいそうだったからだ。
 彼は皮肉な笑いを浮かべて肩をすくめて見せた。
『あんまり遅いんで、捨てられたじゃねぇかと思った。とうとう愛想を尽かされたかってな』
 その言葉にたがが軋んだ。捨てられたのではと思ったのは私の方だ。
 長い間連絡がなかったから、怖くて仕方がなかったのに。
 この人の前でなければ、とっくにそう怒鳴って怒っていただろう。けれど私は淑女の顔を保ったまま、すまし顔で返していた。
『馬鹿ね。だったら、どうして連絡してきたのよ』
 彼は少し首をかしげ、
『今なら時間があるんじゃねぇかと……あとは、単に会いたかったからだな』
 その言葉は柔らかく響いて消えた。声音の変化に、私の声も震えが隠せなくなる。
『久しぶり……ね』
『ああ』
 彼は微笑み、膝を落とした。紫の瞳が優しく細められ、私を見つめる。
『久しぶりだな、お嬢ちゃん』
『フラッシュ……』
 私は抱き寄せられるままに身体を預けた。
 彼は私の恋人――DWN.014フラッシュマンだ。


 DWNたちは主であるワイリーと共に、何年も前から行方不明になっている。悪事のたびに姿を現すけれど、表立って動くのは新たに製造されたDWNばかり。私はフラッシュが今どこにいるのか知らないし、調べる力もない。彼もヒントになることさえ口にはしないし、私だってライト博士やロックたちの行動を教えることはない。
 もちろん、この関係はお互いの家族にも絶対に秘密だ。
 隠し事ばかりで、嘘つきの恋人たち――そもそも、私を抱きしめているのが本物にフラッシュなのか、それすら100%の確証はない。彼だって、私が本物だという確信はないはず。
 それでも、強く抱きしめられる苦しさが逆に心地よくて、切なくて、幸せで、胸がいっぱいになる。
 ロックは今戦っているのに、ライト博士は捕まってしまったのに、私はこうしてDWNと会っている。愛する人に再び会うことが出来て、嬉しくて仕方がない。何をするでもなく、ただ傍にいられるだけで幸せなのだ。
 私はなんて酷い奴なんだろう。
『浮かない顔だな、嬢ちゃん?』
 わかっているくせに、フラッシュはそんなことを言った。相変わらず意地悪だ。
『……ロックが、戦っているから』
『でも、こんな時でもなきゃ、兄弟の目を盗んで俺に逢いに来たりは出来ない……そうだろう?』
 その通りなので、私は曖昧に頷いた。今、周囲の景色は真昼の公園になっている。私たちは木陰のベンチに座っていた。初めて二人で話した、思い出の場所なのだ。
 誰もいない芝生を見つめ、私は言った。
『……あなた達は? 忙しいんじゃないの?』
『どうしてそう思う?』
 フラッシュは内面を隠すのが上手い。何も読み取れない顔に、言葉がきつくなってしまう。
『今回の事件、本当にワイリーは関係ないの? あんな嘘の報道をして、ライト博士を陥れたりして……!』
 ワイリーはDRNの暴走は自分の仕業ではないという放送を流した。でも、ライト博士が黒幕であるはずがない。だったら、嘘をついているのはワイリーだ。
 でも、こんな話がしたかったんじゃないのに。
 少しの間だけでいい。二人きりで過ごせるだけで満足なのに、敵同士なせいで口を開けばすぐにこんな会話になってしまう。
『ごめんなさい。別に、喧嘩したいわけじゃ……』
 俯いてしまった私の頭を、フラッシュが撫でた。そして、子供に諭すような声で言った。
『お嬢ちゃんは、暴走したDRNの来歴は知っているか?』
『ロボット新法で廃棄されたロボットたちね……』
『ロボット新法について、お嬢ちゃんはどう思う?』
『……だって、可哀想だけれど仕方がないわ』
 顔を見ると、彼は笑っていなかった。
『俺たちは、そして博士はそう思わない。これが、俺がギリギリ言えることだな』
 彼はそう言って私の疑念を暗に肯定してみせた。
『どうして……』
『どうしてもこうしても、お嬢ちゃんは明日は我が身と思わないのか?』
 フラッシュはいつもの冗談めかした態度ではなく、ひどく真剣な顔をしていた。
『確かに、お嬢ちゃんたち古い世代のロボットたちは新法の適用範囲からは外れているさ。だが、それも『初期生産されたロボットには価値がある』と思われている間だけだ。あんたらは守られているんじゃなく、見逃されているだけなんだぜ?』
『それは……そう、だけど』
『確かに、将来的にはこんなクソッタレな法律は無くなるかも知れないさ。ロボット工学の父たるライト博士が反対派の中心だしな……だが、当事者は『将来的にロボット新法は無くなるかも知れない』じゃ納得できない。今すぐに法律を廃止するのは無理でも、ロボットの廃棄の即時停止があいつらの要求だ。人間側がそれを飲めば戦いは収まる。だが、あいつらにはいつでも戦いを再開する覚悟がある』
 あいつら――暴走しているDRNを指した言葉だったが、私は何となくフラッシュは彼らを良く知っているのだと感じた。
 彼らが戦う理由を聞かされるたび、頭の芯が痺れたようになって電脳が理解を拒む。
『――どうして?』
 機械的に繰り返した問いかけに、彼の顔が歪んだ。
『『どうして』ばっかりじゃなく、ちょっとは自分の頭で考えろ!』
 その顔に浮かんでいるのは苛立ちではなく悲しみだ。
『だって……わからないんだもの!』
 彼を好きになって、ずっと考えてきた。何故ワイリーは、DWNは戦うのか。ロックも、ずっと悩んでいた。
 だが、どうしてもわからなかった。見えない壁でもあるように、疑問の先へ進めないのだ。
 愛する人との間にある理解の断絶が、私は恐ろしかった。
『どうして、あなたは……悲しそうなの?』
『だって当たり前のことじゃねぇか……お嬢ちゃんたちこそ、わかってなくちゃいけないことだろう?』
 フラッシュの指が私の頬に触れた。
『生きるため、それに……仲間を死なせないためだ』
『でも……人間のために生まれたのに、生きるために人間を傷つけるなんて……』
 弱々しく反論すると、彼は悲しげな瞳のまま唇を歪めて笑った。
『じゃあお嬢ちゃんは人間に「死ね」と言われたら死ぬのか?』
『…………』
 私の周りにいる人間たちは皆いい人ばかりで、そんな恐ろしい状況は想像したこともなかった。
 黙りこんでしまった私を見てどう思ったか、フラッシュは少し怖い顔をした。
『まあ、人間に捨てられたとしても、お嬢ちゃんは秩序を守るライトロボットとして大人しく死ぬだろさ。だけどな――』
 今度は肩を掴まれた。睨みつけるような目で私を見つめる彼と、その背後で芝生に降り注いでいる金色の陽光がひどくアンバランスだ。
 まるで私と彼のようだ。
 私は催眠術にかかったように、フラッシュの唇が動く様を見ていた。
『そしたら、俺はお前を攫って逃げるからな』
 頭と心がぎしぎしと音を立てる。
『そのときはDRNもDWNも関係ねぇよ。今度こそもう誰にも遠慮しない。何を犠牲にしてでも、絶対に死なせたりしない。俺は悪のロボットだ。正義も秩序も人間の都合も知ったことか』
 頭は心に枷を嵌めようとする。
 心は今にも爆発しそうだ。
 彼は言った。
『たとえ恨まれたとしても、そのときはお前を俺のものにする……必ずだ』
 彼は言った。約束した。
 ――プロポーズみたい。
 そう思った瞬間、かちりと何かが噛み合った。
 仮想空間で十センチ、現実で数千キロの距離を隔てて彼の言葉が、思いが、私の中にあった鍵を貫き、壊して、中身を思い切りかき乱した。
 私の内心を表現するために、アバターが0と1で出来た涙をこぼした。激しい感情の高ぶりにエラーが溢れて、声が出せなかった。
 震える私の肩を掴んだまま、フラッシュがにやりと笑う。
『だから、俺としてはこのまま人間とロボットの溝が深まってくれることを祈ってる』
 それは、私やロックやライト博士や、兄弟たち、コサック博士、カリンカちゃんやDCNの皆――人とロボットが仲良く共存できる世界を望む、皆の願いとは真逆のことだ。
 それでも、彼の言葉の意味はわかった。今の私には、理解できるようになっていた。
 私たちが二人で堂々と過ごせるようになるには、それしかないのだ。
 DWNは、ワイリーは、平和な世界には受け入れられない。
 私はDRNとして、悪の側には行けない。
 だったら、正義も悪もない世界にしてしまうしかない。
『悪いひと……』
 そこはどんなに恐ろしい世界だろう。
 そんな場所でしか愛する人と一緒にいられないなんて、酷すぎる。
『わかってたはずだぜ? 何度も教えてやった筈なのに、まだ理解して無いっていうのか?』
『う……うるさいわね! 言わずにいられないだけよ!』
 フラッシュの表情が意地悪なものに変わり、私はいつものように怒鳴っていた。彼はひるむことなく私の頬を軽く叩いてからかう。
『それに、お嬢ちゃんはいつでも俺をロボットポリスに売れるんだぜ? なのに、一度もそうしなかった』
『だって……そうしたら、二度とあなたに逢えなくなっちゃうじゃない』
 私にとって彼は、「仕方ない」で済ませてしまえる存在じゃない。
 そういう意味で、私はもう正義と悪の境界線に立っている。
 彼の話が本当になったら――私はきっとその手を取ってしまうのだろう。
『お嬢ちゃん、アンタは正義のままでいな。俺がいつか、攫いに行くから』
『うん……』
 それが別れの言葉だと悟った。
 フラッシュは大きな掌て私の両頬を包んで、おでこにキスをする。

【******様がログアウトしました】

『……あ』
 そのまま、彼のアバターは消えてしまった。
 私は少し肩を落とし、ため息をついて――はっとした。
『また……口にキスしてもらえなかった』
 あの人はいまだに私を子ども扱いしているのか、絶対に唇にキスしてこないのだ。確かに、私の外見は幼いが、中身はそれなりに年頃のつもりでいる。
 多分あの人なりのけじめなのだろうと思うが、やはり不満だ。
『今度逢ったら、私からしちゃおっかな……』
 そう呟いた瞬間、深いため息が出た。
『今度か……』
 今度っていつだろう。
 次はいつ逢えるんだろう。
 そもそも、もう一度あの人と逢う事が出来るんだろうか。
 問いかけが始まると、私の心は張り裂けそうになる。
 けれど、それも此処にいる間だけだ。現実に戻れば私はまた『ロールちゃん』という仮面を被り、あの人への恋心を凍らせて元気に振舞うのだ。
 きっとあの人もそう。
 うまく行きっこないって、幸せになんかなれないって、ずっと前から覚悟してた。
 それでも、そのときが来たら――絶望的な距離を、私たちは飛び越えようとするだろう。失敗して奈落の底に落ちたとしても、二人でならかまわない。
 それから――たとえ全てが夢物語に終わったとしても、私はこの思いを後悔しない。
 他の未来を探すことも、諦めない。
 いつの間にか、公園の芝生の上にゲートが出来ていた。私は木陰から出て、作り物の陽光の下を歩いていく。
 ゲートの前まで来ると、二人で座っていたベンチを振り返った。

『愛しているわ……』

 数バイトの囁きを誰もいない公園に残し、私はゲートをくぐった。
 現実世界では多分、三十分も経っていない筈だ。

【######様がログアウトしました】




+++


というわけで、隊長のプロポーズの話でした。「攫っていくよ」というネタ自体は結構前からあったので、カタチに出来てよかったです。
「お姫様が魔王と恋に落ちてしまう」という勇者涙目なシチュは昔から好きで、アリプロの歌は病みすぎてるけど正直「ktkr!」と思いました。ロールちゃんには病んでほしくはないですが、「底抜けに明るいロールちゃん」という生き物は光巻にはいないようです。




↓以下、9のロックとロールちゃんを全肯定できる方は見ないでください。不快になられても責任は取りません。


9のロールちゃんの「かわいそうだけどしかたないわ」というセリフがあまりにも他人事だったのがすごく引っかかってて、こんな話になりました。
あとロックの「このときも!このときも!」もネタとして見ればすばらしいギャグなんですが、真面目に考えるとロックが怖いです。そんなに何度も戦ってきてるのにまだ「どうして?」から一歩も進んでない。普通なら、そんなに何度も戦っている相手なら少なからず相手を理解して、自分も変化していくはずです(相手の言い分を一切聞かない殲滅戦じゃないですし……多分)。
それがないっていうのがなんか気持ち悪かった(ごめんなさい)。そういう主張、感情、考え方があると理解(共感)した上で間違っているからと否定するのは良いんですけどね……そういうののない戦いって一番見てて悲しいです(女神の「戦士の宿命」がそうでした)。理解の上で殺しあった方がマシです。公式でワイリーが完全な悪人なら一方的に叩き潰しても全然かまわないんですが、そうでもないっていうのががが。


だから、理解する能力がないのではなく、三原則か何かで「理解できないように制御されてる」という設定で書いてみました。悪の言い分=人間を傷つける可能性に共感してはならない、と設定されているということで。でも、制約と心は別物なので「理解したい」と願うことは可能です。制約が外れない限り理解はできませんが。

ロールちゃんの制約、一部ですが外してしまいました。そうでないと隊長が哀れなので。

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No.278|ロックマン小話Comment(0)Trackback()

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