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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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番外:世界の果てまで真っ直ぐ歩ける(Bl+Dr.W)

2009/01/04(Sun)05:23

あけましておめでとうございます。イレハンを買ったはいいけど相変わらずダメプレイヤーぶりを曝している朱月です。
今年も文字に絵にごりごり書いていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。5千と一万ヒットで何をするかは決めたので早めにアップしたい所存。

ワイリーは米在中というのが頭にあるので、どうも荒野ばっかり浮かんできます。うちのワイリー城荒野にあるし。
だってあの国って馬鹿みたいに空が大きいんだもの。どこもかしこも地平線なイメージがあります。荒野を貫いて伸びる、日本じゃ絶対に見られないびっくりするほど真っ直ぐな道。
まあ、都市部はそんなことないんですけどね。

略称追加:Blはブルースです。Bはバブルということで。同じくロックはR、ロールちゃんはRlで統一します。


というわけで(何が)ほぼ徹夜してしまいました。これアップしたら寝ようと思います。拍手のお返事は起きたらしますので。
ブルースの旅立ちの話です。
タイトルはお題配布サイトからいただきました。






【世界の果てまで真っ直ぐ歩ける】



 それは冷たい冬の夜のことだった。
 夜明けまで数時間。最も空気が凍てつく時刻。
 人気の失せた道路には、バイザーつきの赤いヘルメットで顔を隠したロボットと、白衣の上にコートを着た初老の男がいた。
 ロボットは青年型で、見たところ戦闘用で、大きな盾を背負っていた。黄色いマフラーが斬りつけるような夜風にたなびいている。
「世話になった」
 そっけない別れの言葉を聞いた老人は、寒そうに身体を震わせて老獪そうな顔に渋い表情を浮かべた。
「まったく……最後まで偉そうな奴じゃな。作った奴の顔が見たいわい」
「あいつのことなら俺より良く知ってるんじゃないのか? それにワイリー、あんたは俺の恩人ではあるが、主人じゃない」
 あいつとはこのロボットの製作者であるトーマス・ライト博士のことだ。
 彼の名はブルース。
 世界初の『心』を持ったロボットだった。
 その彼が創造主にすら敬意を表さないというのなら、おそらく今後誰に対してもこの調子でなのだろう。「ロボットは人間に絶対服従する奴隷である」と考えている者たちがブルースを見たら、怒り狂うに違いない。
(ライトにとっては、世界中にこいつの存在が発表される前に行方不明になって正解だったかもしれんな。下手するとあいつもわしのように学会を追放されていたかも知れん)
 皮肉な運命にワイリーは笑った。
「まあいいわい。たっぷりデータは取らせてもらったからな……じゃが、いいか? 戦う時はくれぐれも気をつけるんじゃぞ。動力炉の出力は上がっとるが、最大出力での稼働時間は短くなっとる。オーバーヒートでもしたら目も当てられんからな」
「わかってるさ。これで十二回目だぞ」
 ライト博士の下で起動したブルースは太陽エネルギーで動く動力炉に欠陥があった。動力炉の交換時に人格がフォーマットされるかもしれないと言われた彼は研究所を逃げ出し、機能停止する寸前でワイリーに発見された。
 動力炉を原子エネルギー使用のものに交換してもらったブルースは何故か製作者の元へ帰ることもせず、恩返しの代わりにワイリーに自分のデータを提供していた。
 そのブルースが、旅に出ると言い出したのは昨日のことだ。
 最後の調整やら旅支度やらで忙しくしていたワイリーは欠伸混じりに尋ねた。
「……にしても、何でこんな時間に出るんじゃ? 夜が明けてからにすれば良いじゃろうに」
「どうせ寝る必要はない。いつ出発しても同じだ」
 それに、と視線を道路の先に向ける。
 街の外へ真っ直ぐに続いているこの道は、数十キロ先の次の町までひたすら荒野の中を走っている。
「今から出れば、歩いている間に夜が明けるだろう?」
「……ま、そうじゃな」
 肩をすくめたワイリーは、最後の質問を投げた。
「どこまで行くんじゃ?」
「さあ……どこまででも、行ける所まで」
「そうか」
 老人は何かを納得したように目を細め、しばし共に過ごしたロボットへ餞の言葉を送った。 
「達者でな」
「ワイリー……あんたも」
 軽い会釈だけ残して、ロボットは一人歩き出した。
 ビルの狭間に広がる地平は東。
 映像だけで知っている夜明け空が見たかったから、東へ行こうと最初から決めていた。
 一人、二人とすれ違う眠たげな通行人は、連れもなく歩いているブルースを珍しげに振り返る。

 彼に主はいない。
 『己』が消えることを恐れて、彼は製作者の元を逃げ出した。
 例え一日と持たずに消えてしまったとしても、最後まで『自分』でいたかったから。
 そして命を拾ったとき、自分が主を捨てたことを知ったのだ。
 従うべき相手がいなくても不安はない。
 ブルースの主は、他でもないブルース自身だ。

 彼に仕事はない。
 ブルースは戦闘用ではあるが、戦うべく設定された敵はいない。
 彼は誰の命でもない自分の意思でこの力を振るうことが出来る。
 守ることも奪うことも出来るが、何もしないことも出来る。
 何故なら彼は、『心を持つロボット』という以外の存在理由を持たないから。
 あえて言うなら、『自らの意思と共に生きる』ことが彼の仕事だ。
 
 彼に帰る家はない。
 製作者から逃げ、今またワイリーの元を去る彼には帰るべき場所はない。たとえ再び彼らを訪ねる日が来ても、それは『帰る』のではなく『行く』だけだ。
 DRN.000というナンバーすら、自ら口にすることはないだろう。
 名と所属を問われれば、ただブルースと名乗るだけ。

 本来ロボットが捨てることの出来ないはずの主、役目、所属を捨て去ることが出来たのは、自分が『心』を持つゆえか。
 自分は自由だ。だから、世界の果てまで真っ直ぐ歩こうと思った。
 一切の枷を持たないこの『心』で、データではない生の世界を見たいと思った。
 美しいものも醜いものも、この目で全てを見届けよう。
 機械仕掛けのこの脚でどこまでも行こう。
 この命尽きるまで、『己』を掴み続けよう。
 冷たく暗い、冬の夜のように孤独な『自由』を、自分は与えられ、また選んだのだから。

 
 街の出口でブルースは足を止めた。
 ここから先へは行ったことがない。
 まばらに木々が生え、岩と砂埃が全てを支配する荒れた土地。
 それを貫くように、アスファルトで出来た道が伸びている。
 彼は凍てついた空気を吸い込んで、最初の一歩を踏み出した。
 その口元には、小さな笑みが浮かんでいる。




「世界の果てまで真っ直ぐ歩ける」
模倣坂心中 [http://jinx.in/mire/]




+++++

存在理由を失ったロボットは発狂する。
年末にだらだら考えていたブルース考を交えて書いてみました。ブルースの存在理由は「存在すること」という理屈です。
最初の一体ということで、完璧な心というのを実践するため三原則を外してみた、あるいは完璧な心を再現しようとしたら三原則と相反した。とか。ライト博士結構無茶やりますね。
ブルースの行動に関する資料ってメガミしかないのですが、ライト博士を呼び捨てるわ人間襲ってるフォルテを見てるだけだわ、本気でなかったとしてもカリンカちゃんを人質にするわ結構無茶苦茶やってますよね。明らかにロボット三原則入ってないじゃないですか。ロックは人間撃てないけど、ブルースはその気になれば撃てると思います。
もともとこの性格だったのか、ワイリーに弄られたときおかしくなったのか。うちでは「もともと」でいこうと思います。ブルースがアレだったので、ロックはもうちょいマイルドな正確になりましたとさ。
DWN以上の自由を受け入れられるロボット。何のよりどころもなく生きられる存在。
ブルース兄さん、かっこいいです。
逆存在として、己の存在理由にどこまでも縛られ続けるフォルテの話も書きたいです。
2以外には手を出さないつもりだったのにこれだからなぁ(苦笑)


ワイリーが協力的なのは、私の設定では彼自身がかつて世界を見たいとあちこち放浪したからです。ワイリーの世界征服計画が発動するまでは、ブルースはあちこちうろうろしてると思います。
貨物列車にタダ乗りしてるブルースとか、良くないですかね?
BGMはジミーサムPの初音ミク曲「Little Traveler」でした。星の王子様が好きな方はお薦めです。

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No.66|ロックマン小話Comment(0)Trackback()

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