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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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2024/11/01(Fri)08:21

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006-03:再構築_03(Q+α)

2009/02/01(Sun)23:03

連載三話目の3個目です。クイックが目を覚まします。
αの部分はエアー、バブル、フラッシュですがセリフ少ないので;

メタクイ要素はなるべく排除したつもりなので、兄弟愛くらいで読めるんじゃないかと。
描写自体は少ないですが皆メットレス状態です。





【再構築_03 fifty-fifty】



 タイムストッパー――弟の武器が勝敗を決めたとは思っていない。
 それがクイックの弱点だと知っているロックマンは、今回は初手からタイムストッパーを使ってきた。ちょうど主観時間の加速に入る直前だった。動き始めていた回路が狂い、クイック自身には全く原理のわからない繊細な機器がオーバーヒートして煙を上げた。山のようなエラーが自由を奪った。唯一停止の力が及ばない機能――思考だけが加速し続けていく。
 本来の持ち主である弟とは違い、ロックマンはタイムストッパーの作動中はバスターを撃てない。動けないクイックの視界内を小柄な、今は紫色をしている機体が移動していく。時間が動き出した瞬間に別の武器を当てるつもりで、有利な位置を取りに行ったのだ。
 ――大分戦い慣れてきたじゃないかロックマン。それでこそ、俺たちの敵にふさわしい。
 もうすぐ時間が動き出す。
 あと少し。
 今。
 ロックマンの装甲が色を変える。橙色――足の遅いクラッシュボム――クイックは走り出した直後で傾いたまま停止していた身体を前方に投げ出す。転がる身体の各処から軋むような異音がした。加速装置の回路は停止した数秒の間に破壊されつくされて、オーバーヒートの熱で駆動系までやられている。
 ぎしぎしと音を立てながら転がり続け、爆風から逃れる。ロックマンはボムを連続しては撃てない。だから、爆風が消えるまで追撃は来ない――勢いのまま起き上がって向かい合う。指先への信号が乱れて、これでは巨大ブーメランは握れないと思った。
 ゆっくりとこぶしを握った。
 爆風が晴れていく。
 クラッシュボムを構えた敵と目が合う。
 戦意を失わないこちらを見て、ロックマンの表情が苦しげに歪んだ。
「クイックマン……」
「なんて顔をしてやがる……いいハンデじゃないか。これで五分って所だろ?」
 加速装置が壊れたといえども、
 身体中の回路がエラーまみれでも、
 自分こそDWNの切り札であることには変わりない――それを見せてやる。


 実際のところ、クイックは負けて意識を失う瞬間、誰も恨んではいなかった。
 ロックマンの手にタイムストッパーがなければ――とは思わないでもないが、武器を奪われたフラッシュを責める気はない。自分だってクイックブーメランを奪われているのだし、弱点武器があったから負けたなど最低の言い訳だ。少なくとも、『クイックマン』である自分はそれを口にしてはいけない。それは自分で自分の誇りを傷つける物言いだ。
 ロックマンは確かに強かった。そこは素直に賞賛したいと思う。
 自分も、力を尽くして戦ったという実感があった。ある種の満足さえ感じていた。
 きっと、褒めてもらえる――そう思っていた。


[DWN.012] RESTART…………DONE.
 ――目を開けた。見慣れない、少し埃っぽい天井だった。
「メタルは――?」
 修理用の台から起き上がったクイックに兄と弟の白い視線が突き刺さる。
 バブルが代表して言った。
「第一声がそれ?」
「いや……だって……お前らがいるなら、メタルだっているに決まってるだろ?」
 クイックは周囲を見回す。傍らにバブル、コンソールとケーブルで直結したまま目を閉じているフラッシュ。パーツを満載したキャリアーを運んでいたエアーが何故か視線をそらした。
 部屋の中には台があと三つあって、クラッシュ、ヒート、ウッドが並んでいる。皆、装甲や武装はほぼなかった。複雑な機能を持つヘルメットも壊れたまま部屋の片隅に置かれていた。それらを後回しにしてでも、とにかく動けるようにしようという算段なのだろう。ワイリー博士がライト博士の保護下にあってこちらに来ることはできないというのは、起動前に聞いている。バブルたちが兄弟を直したのだと。
「こいつらは?」
「もうちょっとで起動できる。あとはシステムのチェックだけ」
『次はクラッシュを診るんだ。良いからさっさとどけよボケ』
 スピーカーから流れるフラッシュの罵声――実際、軽い挨拶のようなものだ――を無視してクイックはきょろきょろと辺りを見回した。ここはかつてワイリーが使っていた街中の研究所なのだという。まだ、人型ロボットを造れなかった頃の。
 博士の最初の人型ロボット――血の色をした機体。
「なぁ、メタルはどこ行ったんだよ」
 博士のいない今、修理の指揮を取るのはDWNのリーダーであるあいつ以外にいないはずなのに。
「クイック……」
「なんだよ」
 バブルは苛立つ弟に静かに声を掛ける。
「メタルはいないよ」
「そんなの見りゃわかる」
「メタルは隣の部屋にいる」
「隣……別の仕事してんのか?」
「違うよ」
「じゃあ何だよ」
「行けばわかるよ」
 何故か肩を落とすバブルの髪を、接続を切ったフラッシュがぐしゃぐしゃと撫でた。彼は首筋からケーブルを引っこ抜きながら、咎めるような目つきでこちらを見ている。どけ、と言っているわけではないようだった。何を責められているのかわからず、そのくせ怒りも沸かなかった。
 いつの間にか傍に来ていたエアーが、クイックの肩を叩いて促した。
「行こう。すぐそこのドアだ」
「ああ……」
 渋々立ち上がって部屋を横切り、ドアを開け、時間が止まった。
 メタルはちょうど上半身と下半身をくっつけたばかりのようだった。滅菌カプセルの中に横たわった彼は真新しい脊柱ユニットがむき出しで、そこから何本ものコードが延びて旧式の機器につながり、しかし画面が表示する数値や波線が何を意味するのかクイックには分からない。
 壊れたヘルメットが少し離れたところに置かれていて、メタルは目を閉じて横たわっている。何の表情もない、人形のような顔だった。
 胸部装甲が取り払われ、中央のコアが良く見えた。
 それはひび割れて、輝きを失っていた。
 タイムストッパーを受けたときのように、身体が動かないまま思考だけが加速し続ける。
 壊れるときは上手く壊れろ――口を酸っぱくして自分たちにそう言い聞かせてきたのは誰だ?
 このザマはなんだ?
 それとも――
 俺よりも、兄弟の誰よりも、文字通り『死力』を尽くして戦ったのは――
 博士のために命を捧げるという言葉を、ただ一人本当に実行してしまったのは――
 お前だったのか?
「博士は当分こちらには来られん」
 意外なほど近い声に驚いて振り向くと、すぐ傍にエアーの目があった。大柄な機体がクイックの痩身を支えている。よろけたことさえ気づいていなかった。頭の中が沸騰しているようで、妙に冷め切っている。その温度差にくらくらする。
「だが、博士がかかりきりで修理しても五分だそうだ……」
「五分か……」
 その五分を、自分は取り損ねた。
 自分たちは負けた。
 フィフティ・フィフティなんて、無駄な希望を抱かせる嫌な数字だ。
 でも、ゼロではないのなら――
「五分なら……やる価値はあるだろ? 俺たちしかいなくたって……方法がないわけじゃないはずだ。ハナから諦めるなんて、ワイリーナンバーズにはふさわしくない」
 自分でも意外なほど強靭な声音に、エアーも安心したらしい。
「そうだな」
 顔のない兄がかすかに笑った。クイックはニヤリと笑い返そうとして戸惑う。
 笑顔が作れない。
 表面上は驚くほど冷静だが、心の中は荒れ狂っている。0と1などでは表現しきれない真っ黒な感情が轟々とうなりを上げて、クイックの中にあるどこか――回路ではない場所で暴れている。
 それは悲しみであり、怒りだった。
 悔しさと絶望だった。
 それなのに、涙が出ない。
 笑うことも、出来ない。
 はっきりと感情が動いているのに、感情表現プログラムがそれと切り離されている。意図的に表情を作ろうとしてもうまく行かない。
 心を切り離して、閉じ込めてしまったような困惑があった。
 エアーがクイックの肩を叩き、部屋を出て行く。
 クイックはその場に立ち尽くし、カプセルの中に横たわる長兄の姿を見つめた。
 メタルマンは腹の立つ奴だった。
 偉そうで、何でも出来て、何でも知っていて、何でも判っているような顔をして、博士に一番信頼されていた。
 彼のようになりたかった。彼よりも優れていることを証明したかった。彼に認められ、必要とされたかった。いつだって、追いつきたいと思っていた。追い越すのではなく、並んで歩きたかった。
 そして、いつしか彼はクイックを「DWNの切り札」と呼んでくれていた。
 嬉しかった。誇らしかった。
 自分は負けてしまったけれど、絶対に口に出しはしないけれど――
 彼に「よくやった」と褒めてもらいたかった。
 五分――その数字を、今度は取りこぼしたりしない。失いたくない。
 自分が負けるのは良かった。
 だが、残されるのは我慢ならなかった。
 苦しい――だが、涙は出ない。叫ぶことも出来ない。
 コアに指を立て、クイックはただ立ち尽くしていた。



>>【再構築_04】



++++++

クイックは誇り高い戦士であってほしいのです。そして、戦いという場においてフラッシュの武器はやっぱり武器――戦いを攻勢する要素の一つでしかなくて、それをいかに有効に使うかというのも戦術の一つであって、卑怯かどうかというのはタイムストッパーを使うかどうかではなくて、使って何をするかによるんじゃないかと……思うのです。
なので、クイックはタイムストッパーを卑怯だとは考えてません。本気で最強だと名乗るつもりなら、弱点武器を使われても関係なく勝利すべきだからです。
ロックとは因縁はあれど恨みも後腐れもなく力を尽くしてぶつかりたいと思っています……いました、かもしれませんが。


ちなみに、うちのクイックの「主観時間の加速」には思考加速と身体の時間加速の二通りがある……ということになってます。思考加速はメインの能力で、デフォルトである程度働いてる機能です。クイックの反応速度が戦闘モードでなくても兄弟の数倍あるのはこの機能ゆえです。戦闘モードで思考能力を加速すれば処理能力も上昇します。
身体の加速は思考速度にあわせて身体を動かすための回路です。クイックは駆動系の回路も高速ですが、時間加速によってさらに早まります。これは物理的な加速ではなく、例えばマッハ1を出しているクイックの時間を3倍に早回しすることでマッハ3にする……という原理かと思います。周囲の遅い流れをいかに感知するかという整合性を考えるとアレなのであんまり深く追求しないのが吉ですねそうですね。
ちなみにロックなどはタイムストッパーを受けると思考の時間も止まってしまい、止まった時間の間何をされているのかわかりません。クイックはタイムトッパーを受けても内的な思考の時間は止まらず、外的な身体の時間のみが止まります。思考だけは止まった時間の中で動き続けているので、相手が何をしているかわかります。

思考のみの加速は越佐大橋シリーズの雨霧八雲、身体の加速はフェイト・ゼロの衛宮切嗣がヒントといえばヒントです。八雲は思考の早さに身体が付いていっていないのですが(それでも常人からすれば異常な速さ)、止まってるクイックはそんな感じなのかなと。逆に切嗣は時間の流れを遅くしても思考能力は遅くならないので、外側だけを弄ってるのかしら。

科学者でもなんでもないので適当理論ですが、いつものように気分だけ感じていただければ;


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No.90|ロックマン小話Comment(0)Trackback()

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