メタクイの日記念?コピメタ登場です。
登場していきなり腐向けですかよ。
今日のQはツッコミ属性です。
公開予約で記事つくってるので、小説メニューからのリンクは後で貼ります。
タイトルはお題配布サイトからいただきました。
【お願いだから少し黙って、愛させて】
少し、うとうとしていたようだった。
メタルの仕事が終わるのをリビングで待っていた俺は、正面からぎゅっと抱きしめられて目を覚ました。ソファに座ってぼーっとしている間にスリープモードに入りかけていたらしい。目に入ったのは暗赤色。
「……メタル?」
深く抱きしめられる姿勢で、顔は見えない。メタルは俺の肩部装甲にあごを乗せ、頬を寄せて小さく「クイック」と名を呼んできた。今日はそういう気分らしい。
――仕方ない奴。
普段必要以上にカッチリしているせいか、メタルは俺の前ではこんな風に甘えてくることがある。惚れた弱みというやつか、こいつにそんな態度を取られると俺はどうにも逆らえないのだ。
というか……すごくどきどきする。もちろん、「どきどき」っていうのは比喩表現だけどな。ときめくというか、きゅんとするっていうか――我ながら恥ずかしいな。ともかく、そういうことだ。
応えてやりたいのはやまやまだが、一応就寝時間は過ぎてるとはいえリビングじゃ誰が来るかもわからない。俺たちの仲は家族公認とはいえ、お子様の教育にはよくないし、エアーが怒るし、見られるのは恥ずかしい。メタル自身は何とも思っていないようだから困るけど、ここでいつまでもいちゃついてるわけには行かない。
俺は身体に回された腕に手をかけ、身じろぎした。いつもならそれで察してくれるのに、一向に離れる気配がない。
「なぁ、メタル……ここじゃ嫌だって、いつも言ってるだろ?」
「もう少しだけ、許してくれないか?」
「むぅ……」
懇願するような声で言われると弱い。
「ちょっとだけ、だからな……?」
「わかっている」
本当にわかっているのかいないのか、メタルは腰や装甲の隙間から覗く脇腹を撫でてくる。甘い顔するとすぐ付け上がるんだから困ったもんだ。
「こら……っ」
押しのけようとする手の首を掴み、メタルが耳元で囁く。
「目を閉じろ、クイック」
「あーのーなぁっ」
「キスくらいいいだろう? 少しだけだ。約束する」
こんなにベタベタに甘えてくるなんて……何かあったのかコイツ?
ちょっぴり心配になったが、何度も頬にキスされて折れた。付き合い始めてそこそこ時間も経ってる。俺だって多少は慣れたんだ。いつまでも初心だの可愛いだの言われてるのは沽券にかかわる。
目を閉じると、指先があごを持ち上げる。メタルは何度か唇を啄んだ後、ぬるりと舌を入れてきた。
「んぅ……っ」
いきなり根元まで絡みつかれて思わず引いてしまった腰は、しかし強く抱き寄せられ、後頭部にも指が差し込まれて逃げられない。誘い出された舌を甘噛みされ、強く吸われる。くらくらするほど激しいくちづけだ。
っていうか、こんなの全然『少し』じゃないだろ!
「ふ、く……んぁっ!」
腰を抱いていた手が無防備だった足の付け根に触れてきた。神経回路の集中する敏感な場所を優しい手つきで撫でられて、快楽信号が手足のコントロールを乱す。
まずい……このままじゃ、流されてしまう。
――ここじゃ嫌だっていつも言ってるのにメタルの馬鹿野郎!!
心の中で叫んだ瞬間、ごすっと鈍い音がしてメタルの頭が揺れて腕の力が緩んだ。ひょっとしてエアーか!?
助かったという思いと見られた羞恥半々で慌てて振り向くと、背もたれの背後にはメタルがいた。拳骨を握り、微妙に不機嫌そうな赤い瞳がこちらを見下ろしている。
「――…………あれ?」
正面に顔を戻すと、頭頂部を殴られたメタルが頭を押さえている。
「何故邪魔をするんだ……せっかくいいところだったのに」
恨めしげにもう一人のメタルを見つめる瞳の色は、俺と同じ翠色だった。
「…………へっ?」
わけがわからない。
赤い瞳のメタルが言った。
「そこまでにしておけ、コピー。リビングで事に及ぼうとするな」
「はいはい。わかったよ、『俺』」
翠の瞳のメタルは、やれやれと軽い仕草で肩を竦める。
「コピー……?」
呆けた様につぶやく俺に、コピーと呼ばれた翠眼のメタルはニヤリと笑った。
「さっき起動したばかりのコピーメタルマンだ。よろしくな、クイック」
挨拶のつもりなのか、頬にチュッと音を立ててキスされた。
「コピーロボット……?」
赤眼のメタル――多分オリジナル――はこともなげに答えた。
「三次元立体コピー機の試運転にな、とりあえず俺を増やしてみた」
「そうすりゃ交代でクイックといちゃつけるからな。キスの仕方もそっくりだったろ?」
コピーメタルがニヤニヤ笑う。メタルのことだから仕事の速い自分を増やすのが一番良いと判断したんだろうけど、コピーが言った内容も当たってるような気がする。
「それはともかく」
疑いをこめて見上げるとメタルはさっと視線をそらした――否定しないのかよ。
「コピー、そろそろクイックから離れろ」
「おいおい、自分に嫉妬するのか? 俺だってお前なんだからクイックのことが大好きなんだぞ。実物はお前の記憶以上に可愛かったし、くっついていたいじゃないか」
コピーメタルはそう言いながら俺を抱きしめてくる。からかいを含んだ軽い口調と薄笑いはメタルらしくない。この辺が本物との違いなんだろうか。
本物はというと、コピーの言に真顔で頷き、
「クイックが可愛いというのは深く同意するところだが、俺の見てない所ならともかく、目の前でされると何というか、こう……羨ましいだろうが」
正直過ぎるだろ。
呆れて突っ込みの声も出せなかったが、コピーの方は納得したらしい。
「確かに羨ましいな」
「だろう? だから離れろ」
「待て待て。つまりこういうことだ……俺たち二人でクイックを愛してやれば万事解決だ」
「えっ?」
俺の上げた疑問の声は、二人のメタルの耳には全く聞こえなかったらしい、というか思いっ切り無視された。
コピーの無茶な提案にオリジナルは数秒思案し、
「………………なるほど。それなら公平だな」
「ええええええーーーーっ!?」
違くね?
それ違くね!?
めっちゃ不公平じゃね!
主に俺にとって!!
俺だって子供じゃない(ロボットに年齢とか関係ないけど)、『二人で愛してやれば』って意味くらいわかる。
メタル一人にだっていつも恥ずかしくて死にそうな気分になるっていうのに、二人がかりであんなことやこんなことをする気なのか!?
「さて……そうと決まれば早く部屋に行こうか。三人でゆっくり愉しむとしよう」
「いや、ちょ……待て、待てよ。落ち着けって」
「俺は全然落ち着いてるぞ? ……『俺』はどうだ?」
「俺も落ち着いている。慌てているのはお前だけだ、クイック。一体どうした?」
心底不思議そうに聞くなよ。
「どうしたもこうしたも、俺は嫌だぞ! いくらお前と同じ顔してるからっむぐぐ!」
「もう夜なんだぞ。あまり大きな声を出すな。皆の迷惑だろう」
「むぐぅ! むー!」
今だけはお前に説教されたくねぇええ――っ!!
メタルに口を塞がれコピーメタルに四肢を押さえつけられた俺は、とりあえず視界に入るコピーを睨んだ。さっきの台詞の続きになるが、いくらメタルと同じ姿をしているからといって簡単に身体を委ねられるもんじゃない。
メタルは惚れてるから特別なんだ。
だけど、やっぱり通用しなかったらしい。
「おっ……イイな、その反抗的な目つき。『俺』が苛めたくなる気持ちがよくわかる」
コピーメタルの口元に浮かんだ酷薄な笑みは、オリジナルのメタルが激しく欲情してるときに見せる顔とそっくりだった。視覚センサーの色まで同じだったら見分けがつかなかったかもしれない。
い、いや……そんなことないぞ。惚れた相手の見分けがつかないなんて、そんな情けない事があるか。
動揺が顔に出ていたのか、コピーが小さく笑った。
「あんまり嫌わないでくれよ。さっきも言ったが、俺だってお前のことを愛してる――嫌われるのは悲しい」
「そんなこと言われても……」
その顔で悲しそうに笑うのは卑怯だ。ひどい。こんなのずるい。
「オリジナルが好きなんだろう? お前はそれでいいんだ」
困惑のあまり抵抗も忘れた俺に、コピーは小さく囁いた。
「俺に靡くお前より、オリジナルを愛してるお前を抱きたい」
――何言ってんだこいつ。
戸惑って本物の方を見上げると、メタルはなんとも言えない済まなそうな表情を浮かべていた。俺に対してじゃない。視線はコピーの方を見ている。意味がわからない。
そういうのは困る。
俺はメタルが好きで、理解したいのに――そうやって俺にわからない部分を次々出されると哀しくなる。必死になって手に入れたのに、結局メタルは俺の手の届かないところにいるような気がしてしまう。
途方にくれてメタルを見つめていると、ようやく俺に気づいたらしい。
「そんな顔をするな、クイック」
「そんな顔も可愛いけどな」
メタル(本物)の指が頬を撫で、メタル(コピー)が低く笑う。
「確かにそうだが……」
おい本物、そこは否定しろ。
「いつまでこうしてても埒があかないな。さっさと移動するぞ」
「了解」
メタル×2は腹の立つ息の合いっぷりで俺を抱え上げた。
「ちょ、待て! 俺は良いなんて言ってないぞ!」
「大丈夫だ。すぐ『もっともっと』って言うようになるさ」
「いつもの二分の一の時間でな」
――こいつら、やっぱり殴っておくべきだろうか。
+++
裏へ続く、といいなぁ;
メタ兄とコピメタは性質の悪い双子のように息が合います。いろいろ複雑な事情があったりしますが、その辺はおいおい……
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