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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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2024/11/22(Fri)10:24

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わがみよにふる(吉三)

2010/12/19(Sun)20:00

ぴくしぶより。

大谷さんとアニキと三成。吉三、チカナリ風味(※元就不在)。
元ネタは台本集の「元親→刑部」のセリフ。あれ三成の前で言ったらアニキの死亡フラグじゃないだろうか。でも結局は吉三がイチャイチャしてるだけだった。 




【わがみよにふる】





「おぅい、三成!」

 遠く、魚の声がした。
 座したままうつらうつらとしていた吉継はその声によって覚醒し、視線を落とした。
 膝の上に銀色の頭が乗っている。自分の名を呼ぶ声にも起きる気配を見せないほど深く眠っているらしい。目を閉じた横顔は穏やかであり、吉継は頬に落ちかかっていた銀糸を指でのけるついでに、さらりと髪の中に指を透した。

「三成ィ!」

 今度は先ほどより近い。左手に持ったままだった書状を畳みながら、吉継はまどろみの靄の中から記憶を掘り出した。そういえば三成が眠りにつく前、長曾我部の話をしていた気がする。

   +

「そういえば」
 眠くないとごねる友人をどうにか横にならせ、膝を枕に貸した吉継は、軽い世間話のつもりで言った。
「長曾我部に、いつのまにやら名で呼ばれていたな」
 先だって同盟を組んだ西海の鬼はどうやら三成を気に入ったらしい。三成はいつもの調子でわかりにくいが、開けっぴろげな元親を信用しているようだ。
「凶王様にも友ができた様子。やれ、メデタキナ」
 吉継は謡うような調子でからかったが、胸の奥をチクリと刺す痛みにわずかに眉を動かす。布を巻き、頭巾で覆われた顔の動きなど、まして横になって完全に視線を外している三成にはわかろうはずもない。だから吉継はそっと苦笑を浮かべた。
 三成に『友』と呼べる者が増える度、手放しで喜んでやれない自分が嫌になる。
 誤魔化すように髪を撫でると、三成が不機嫌そうに眉を寄せている事に気づいた。
「どうした、三成」
「奴は……」
 虚空を睨みつけたまま、彼は唸るように答えた。
「奴は、昔の貴様に少しだけ似ていると思ったのだ」
「……われに?」
 吉継は脳裏に長曾我部の姿が浮かべた。その隣に自分を並べてみるがあの男は、体格も、その身に纏う色も何一つ、かつて似ていたことがあったとすら思えないほどかけ離れている。
「ほんの……本当に少しだけだ。いや、錯覚だ。似てなど……」
 三成はぶつぶつ呟いている。髪を梳く手を止めぬまま吉継は嘆息した。昔の事など、自分はとんと覚えていない。病になる前の、健やかだった頃のことなど。
「似ていたと云われても実感が湧かぬなァ……われ自身がどうであったかなど、覚えておらぬゆえ」
「私は……よく覚えている。貴様と初めて会った時の事も、すべて」
 三成は拗ねたように唇を尖らせた。彼は幸せだった頃の事をみな覚えている。だから現在との落差に傷つく。それがすべて失われ、決して取り戻せない現実が三成を苦しめる。
 反対に自分はすべて忘れた。落差はなく、ただ底を這いずるだけの生はある意味平穏だ。
 それでも、悲しげにこちらを見た三成の目をまっすぐ見返すことはできなかった。過去を共有してやれないことは申し訳なく思う。それらがかけがえの無いものだった事だけは覚えているからこそ、苦痛から逃れるためにそれを捨てた自分は臆病、卑怯と謗られても仕方が無いのだ。だが、三成はそれを言わない。ただ、吉継が過去を忘れたと口にする度、寂しげな顔をする。それは、面と向かって責められるより辛いことだ。
 だが、過去を穿り返されることで傷つくのは吉継も同じだ。過去に戻りたいなど、口が裂けても言えない。なけなしの矜持がそれを許さない。
 だから吉継は言った。
「やれ、自分の顔などとうに忘れてしもうたが、かつてのわれはさぞ男前であったろうなァ?」
「――もういい。済まなかった」
 三成はくしゃりと顔を歪めると、自分から視線をそらした。ぐるりと向きを変えて吉継の腹に顔を押し付け、腰を抱くように強く腕を回してくる。
「私と貴様が共に歩んだ道を否定する気は無い。たとえ時間が巻き戻せたとしても、貴様と過ごした時だけは消したくない」
「さようか……」
 悲痛な響きを孕んだ囁きに、痛みがすうと消える。自分が三成にそれを言わせたのだ。その言葉が聞きたくてわざと皮肉を言った。
 そのために恐らく傷ついたであろう友の頭を無言の詫びを込めて撫でると、髪と同じ銀色の睫毛がすうと下がって瞳を覆う。吉継の身体に染み付いた薬と香の匂いを吸い込むように、何度か胸を上下させ、三成は言った。
「少しだけ寝る……四半刻経ったら起こせ」
「あいわかった」
 吉継の応えがその耳に聞こえたかどうか。凶王はすでに静かに寝息を立てていた。

   +

 それが一刻ほど前のこと。
 三成には四半刻したら起こせと言われたが、久しぶりによく眠れているようなので起こしたくなかったのだ。少々溜まっていた書状を読みながら、時折むずかるような声を上げる三成の髪を撫でて落ち着かせる。そんな事をしている間に時間はあっという間に過ぎていた。
 三成と何か約束でも交わしていたのか、四国の魚が友を呼んでいる。声と足音が近づいてくる。
 遠慮の無い声音と足音に眉が寄った。吉継は静寂を好む。声も足音も激しさならば三成の方が上だが、三成は良い。他は気に障る。特にこの男は。
「いるかい?」
「静かにせぬか、長曾我部」
 障子のひとつは庭に向かって開いたままだ。吉継はそこからひょいと顔を覗かせた元親を軽く睨んだ。鬼の左の頬が、何故か殴られたように腫れている。まあ、西軍には血の気の多い同盟者が大勢いるので、驚くことではない。毎日手合わせだ稽古だと賑やかなのだ。
 元親は吉継の膝枕で寝ている三成を見て気まずそうな顔になった。総大将の不眠症は西軍中に知れ渡っている。元親も常日頃から寝ろ寝ろと言っている方なので、流石に声を潜めた。
「おっと、こいつァ済まねぇ」
「コレに何ぞ用でもあったか?」
「まぁ……大した用事じゃねぇよ。また後にするぜ」
 それがいい。邪魔をするでない――そう思った吉継だったが、あることに気づいてきびすを返そうとする元親を呼び止めた。
「待ちやれ」
「なんだい?」
 振り向く男に、部屋の角を指差す。文机の前に、銀朱色の羽織が綺麗に畳まれて置かれていた。袷に仕立てた冬用のものだ。
「そこの羽織を取ってくれぬか? 少々冷えてきたゆえ」
「ああ、いいぜ」
 元親は軽く頷いて羽織を拾った。だが、何を勘違いしたのかそれをこちらの肩に掛けようとしたので、吉継は思わずため息をついてしまった。
「われではないわ。三成に掛けよ。風邪を引かれたら困るであろ」
「…………」
「何を呆けておる」
「いや」
 何に驚いたのかぽかんとしていた元親は、吉継に促されるまま三成の身体に羽織を掛けた。一連のやり取りにも目を醒ます様子の無い寝顔を覗き込み、呟く。
「涎垂れてんな……」
 見ると、確かにわずかに開いた唇から涎が垂れ、吉継の着物に染みを作っていた。凶王という呼び名には似つかわしくない幼子のような寝顔に、自然と笑みが零れる。
「やれやれ仕方のない……せっかくの男前が台無しよなァ」
 吉継は布を巻いた指で口の端からこぼれた唾液を拭ってやった。整った唇を閉じさせると、その口がもぐもぐと動く。その様子があまりに可愛らしいので、そのまま手を動かして髪を撫でた。吉継は三成の髪が好きだ。本当に綺麗な色をしていると思う。出合った時からそう思っていた。これだけは間違いなく覚えている。
 視線を感じて顔を上げると、三成と同じ――しかし全く似ていない銀の髪をした鬼がこちらをじっと凝視していた。まだ去っていなかったどころか、行儀悪くしゃがみこんでさえいる。
「……なんぞわれの顔についておるか?」
 苛つきを抑えながらつとめて穏やかに問いかける。包帯越しとはいえ、病に爛れた顔を見つめられるのは不愉快だ。好奇であれ嫌悪であれ、人の視線には慣れてはいるが、こうも間近では煩わしく思わずにいられない。
 声は柔らかに、しかし冷たく硬い視線で拒絶すると、元親は意外そうに呟いた。
「あんた、そんな顔するんだな……」
 感心したような声に、腹の底が煮えてきた。自分が三成の前でどんな顔をしているか、大体想像がつく。だが、それがぬしに何の関係がある?
「トクベツな顔は、トクベツな相手の前でしか見せぬものよ。そうであろ?」
 そっけない言葉で遠まわしに皮肉ったのは、吉継の共犯者である毛利元就のことだった。完璧な無表情というものがあるならば、かの同胞がそれだ。元親と元就は瀬戸海を挟んで長年の因縁がある。敵同士でありつつ、深い仲だった時期もあるらしい。
 今もぬしは毛利の特別な顔を見るのか?――遠まわしにそう言ってやったわけだ。毛利の様子からして可能性は無に近いが。
 果たして元親は意図に気づいたものか、「やっぱアンタ性格悪ィな……」と小さく呟いて立ち上がった。
「風も吹いてきたことだし、戸は閉めておくぜ」
「そうしてくれ」
「もうすぐ夕飯時だ。それまでに迎えをよこす」
「さようか」
 もう少し寝かせてやりたいが、それではわれの脚がもたぬなぁ。困ったコマッタ。胸中でそう呟くうちに、元親の足音が去っていく――その途端、大人しかった三成が顔を上げた。
「刑部」
「やれ、起こしてしまったか?」
「起きていた……貴様に口を拭われて、起きた」
 三成は唸るように答えると、まだ濡れている吉継の着物を指で擦った。確かにあの状況で目を醒ますのは恥ずかしいかもしれないが、三成らしくない。
「ぬしが寝たふりとは珍しい。長曾我部と用事があったのではないか?」
「……今朝、少し」
 口ごもる様子と元親の顔の腫れで吉継はピンと来た。
「やれ、同盟相手と喧嘩でもしたか」
「喧嘩などというものでは……ただ、あの男が許せない事を言ったのだ」
「ほう?」
 三成のことだ。カッときた瞬間には殴っていただろう。戦い慣れしていても、三成の動きはそうそう捉えられるものではない。しかも、瞬間的な怒りに我を忘れたならばなおさらだ。元親に怒っていた様子は無いので、仲直りに来たといったところだろう。
 同盟相手の機嫌はうまく取り結んで起きたいところなのだが――
「何を云われた?」
「……貴様を」
「われを?」
 思ってもいない言葉が飛び出し、吉継は虚を突かれた。
「……感情の無い、虫の様だと」
 その時の感情を思い出したのか、三成は顔を歪め、ぎゅっとしがみついてくる。
「刑部の何を知っているのだと頭にきて、殴っていた」
 またか、と思う。三成は以前も吉継の陰口を叩いた輩を殴ってまわった事がある。
「……ぬしは、相変わらずよの」
 まあ、鬼の言い分にも心当たりはあった。今の自分は、三成の事以外に対してほとんど感情が動かなくなっている。そう思われても仕方がないというか、むしろ積極的にそのように見せているくらいだ。
 西軍の不気味な参謀、黒幕――そう思われていた方が都合が良い。
 だがあの男も、なぜわざわざ三成の前でそれを口にするやら。
「だがまぁ、長曾我部も認識を改めたであろ」
「ああ……」
 寝たふりをして遣り取りを聞いていた三成は、もぞもぞと起き上がった。肩から滑り落ちた銀朱の羽織を手に取ると、水晶の目でじっとこちらを見つめてくる。
「刑部……私の前にいる貴様は、特別なのか?」
 そこか。
 思わず口の端が笑むのを感じた。吉継は布地の痕がついて赤くなった頬に手を当て、微笑む。
「そうよ。ぬしだけに見せるトクベツよ……われはぬしのものゆえな」
「……そうか」
 優しく頬を擦る手を避け、三成は吉継の肩に額を押し付けた。
「惜しい事をした」
 トクベツを他者に見せたことだろうか。
 可愛い男だ。
 愛しさが湧き上がり、吉継は細い背中に腕を回して抱きしめた。耳元でそっと囁いてやる
「拗ねるでない。ぬしには他には見せられぬトクベツをくれてやっておるであろ?」
「?」
 吉継は疑問の声を上げた三成が顔を上げる前に、耳朶を軽く噛んだ。
「刑部ッ!」
 耳を押さえて飛びのいた三成の顔は真っ赤だった。あれしきのことで。
 なんとも可愛らしい凶王であることよ。
 ヒッヒッと笑った吉継は、手を伸ばして再度三成を抱き寄せた。
「ぬしが床で見せる顔。アレはわれだけのトクベツではないのか?」
「き、決まっているだろう! 貴様以外の誰に……ッ」
「ならば物惜しみせずともよかろ」
 吉継は尖った顎を捉えて素早く唇を重ねた。何度か触れ合わせ、啄ばんでいるうちに気分が乗ってきたのか、三成も舌を伸ばし、積極的に応じてきた。
 互いの身体に腕を絡め、唾液と吐息を交換し合う。
 夢中になっていて気づかなかった。
 スパーン!と気持ちの良い音を立てて、元親が閉めて行った障子が開いた。
「石田殿! 大谷殿! 夕餉の時間でござ――」
 幸村の視線の先には、かたく抱き合って唇を合わせている二人がいた。
「さ、真田……」
「あいや……これはなァ……」
 この状況で言い訳も何もないのだが、言葉を彷徨わせる二人の前で幸村が思いきり息を吸い込んだ。
「破廉恥でござるぅぅうううう―――――ッ!!」
 虎の若子は、城中に響き渡るような声をあげて走り去った。
「…………ふむ」
 吉継は己の腕の中で硬直してる三成を見ると、軽く首を振った。
 城の者は三成と吉継の関係を知っているが、同盟者にこれ以上隠しておくのは面倒くさい。
 まあ、よいか。手間が省けた。
「これ、三成。いつまで固まっておる」
「ぎ、刑部……今、真田に……」
 おろおろしている三成にニッコリ笑いかけ、吉継は言った。
「さよう。バレてしまっては仕方なかろ。これからはこそこそ隠れる必要もなくなったわけだ」
「そういう問題では……ッ!」
 どさりと押し倒され、三成の言葉が途切れる。
「……刑部?」
「さて、邪魔もいなくなったことだし、続きといたそう」
「ちょっと待て! 夕餉はどうする! いつも食え食えとうるさいくせに!」
「今宵はきちんと食うか? 皆と?」
「…………ッ、わかった……今夜は、広間で食う」
 三成が頷いて約束したので解放してやった。
 乱れてもいない襟元を恥ずかしそうに直す肩に手を置き、耳元に口を近づける。


「今宵はわれが忍んでゆこうか?」


 三成の白い首筋から耳元までサッと朱に染まる。
 素直な身体だ。
 吉継は愛しさを込めて低く笑った。

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