キリリクはどうしたって話ですが、唐突にネタが降りてきたので拾いました。
クイックに首輪は萌えます。
でもメタルに首輪も萌えると思うんだ。
なんというか、どSに首輪というギャップに萌えというか矛盾に萌えるというか。
うちのメタル、根っこは犬だし。
……同感な人だけ見ると良いと思います。
メニューへのリンクと誤字チェックはまた後日。
【君は僕のペット】
「何でもする。だから機嫌を直してくれ、クイック」
困り果てた声でメタルがそう言った時、俺はすでに許してやってもいい気分になっていた。事の起こりは思い出したくないから詳しく説明しないが、珍しくメタルが真剣に謝るので少し調子に乗った。いつも口では言えないような恥ずかしい目にあわされてる仕返しもしたかった。
「じゃあメタル、今日一日俺の犬になれ。俺が飼い主でお前がペットな」
正直、メタルが怒るかもしれないと思った。あいつ犬嫌いだし。
だけど、少し驚いたような顔をしただけで、少し考えた後「いいだろう」と頷いた。もう夜だったし、今日一日といっても数時間だけだ。それくらい我慢できると思ったのかもしれない。
「それで……どうする?」
「どうする、って?」
聞き返すと、メタルは呆れたような顔をした。
「俺がお前の犬で……それで、何か望みでもあるのか?」
「え? え? じゃ、じゃあ……おて」
「…………」
ベッドで俺の隣に座っていたメタルはため息をつき、律儀にこちらの前に回ると、膝をついて俺の差し出した手に掌を乗せた。
「……えっと」
「本気で飼い主をやる気があるのか?」
「本気でって何だよ、本気でって! あーもう、E缶とってこい!」
「了解した」
メタルは従順に頷くと俺の部屋を出て行く。俺はひどく落ち着かない気分でそれを見送った。何であいつはあんなに冷静でいられるんだよ。
しばらくして戻って来たメタルは、また俺の足元に膝をつくと、俺の手にE缶を押し付けた。
「あ、ありがと……」
「クイック、ペットに礼を言うものではない」
「じゃあ何ていえばいいんだよ」
「褒めろ」
何で命令形だよ。っていうか褒める? 俺が? メタルを褒める?
「よ……よくやった」
「撫でろ」
「犬が命令すんなよ!」
「飼い主なのだろう? いうことを聞いたのだから撫でてくれ」
「あぅ……」
俺はやったことはないが、確かにウッドやヒートなんかは迷い込んでくる野良犬とか野良猫とかを撫でてたっけ。あと、部下とかも。
じっとこちらを見上げてくるメタルの頭をぎこちなく撫でてみる。メタルはちょっと俯いて目を細めた。
な、なんかかわいいじゃねーか……
しばらく撫でた後手を離すと、メタルは「そういえば」といいながら俺の手に何かを乗せた。
犬用の首輪だった。鎖付きの。
「……何だよコレ」
「俺の部屋から取ってきた。ペットなら首輪が要るだろう。鎖も」
「いや、犬嫌いのお前が何でコレ持ってんの!?」
「もともとはお前用にと思って買っておいたのだが、いい機会だ、俺が着けてもいいだろう」
「いやだからペットの癖に何でそんなに偉そうなんだよ! あと『俺用』って言った!?」
「……言ったが?」
それがどうしたって顔すんな。
「どうしろって言うんだよ……」
「着けてくれ」
くっとメタルが顎をそらせて首を晒す。俺は少し悩んだ。いくら犬になれと言っても、首輪つきのメタルを部屋の外でうろうろさせたら後で兄弟に変な目で見られることは間違いない。つまり、首輪をつけたらメタルはもう外に出せない。
「早くしろ。『犬になれ』などと……俺を束縛したかったのではないのか?」
メタルは浮気なんかしない。けど、たまにふっと離れ離れになってしまいそうな気がする。こいつが凄く遠くにいるような気がして怖くなる。
今回のことも、俺がそんな感じで苛々してた時に悪い偶然が重なったせいだ。散々拗ねておいてなんだが、そういうのは本当に格好悪いと思う。
「……そういうのは、俺じゃない」
「クイック、俺をお前の元に縛り付けてくれないのか?」
メタルは首輪を持ったまま動かない俺の手を握り、懇願するような声で言った。
「俺は博士に着いてどこまでも行ってしまうぞ。ちゃんとお前の鎖で繋いで、俺を見失わないようにしろ」
「それ、って……」
「言っただろう? 俺の傍にいてくれと……しっかりついて来てくれ」
逆じゃねーか! 明らかに犬が飼い主引っ張ってんだろ!!
「……っ、い、犬の癖に生意気なんだよ!」
かっとなってメタルの首に首輪を装着し終えたところで我に返った。
結局言われるままに首輪つけてるじゃねーか俺!
流されんなよ俺!
メタルは鎖の端を握っている俺を見て満足そうな顔をしている。
「お前っ、首輪とかつけられて……恥ずかしくねーのかよ……」
「別に。どうせ俺は身も心もお前のものだしな」
「んなっ……」
「俺が頭を垂れるのはワイリー博士にだけだが、お前の前でならいくらでも跪いてやろう――愛を請うためにな」
メタルはいつもの生真面目な表情でそう言うと、何も言えなくなっている俺の両手を取って掌に順番にキスした。
い、いつもながら恥ずかしい奴。
つーか、顔熱いし。
ぼーっとするし。
メタルのせいだ。
「クイック、そろそろベッドにあがってもいいか?」
「ん? あ、ああ……」
じゃらりと鎖が鳴り、俺は正気に返った。
「だ、ダメ! ダメだ! おすわり! おすわりっ!!」
「チッ」
今舌打ちしただろ!
危なかった。メタルは大人しく膝をついた姿勢に戻ったが、どことなく不満そうだ。
「お前、またいやらしいこと考えてただろ!」
「犬はいつだって飼い主に遊んで欲しいものだ」
「遊ぶの意味が違うだろ!!」
「今日も後数時間しかないというのに、一体何を同したくて『犬になれ』などと言ったんだ。『ハウス』とでも言えば俺が大人しく部屋に戻るとでも?」
メタルは俺の腰に腕を回して抱きしめてきた。
「ちょ、命令聞くつもりねーなお前! 『待て』くらいできろ!」
「できない。生憎それほど優秀な犬ではない」
「いきなり駄犬になるなっ! こらっ!」
ベッドに押し倒された俺を、鎖を鳴らしながらメタルが覗き込んでくる。
「ま、待て! おあずけ!」
「できない」
ぺろりと俺の唇を舐め、メタルは笑った。
その首から繋がってる鎖は俺が握っているが、繋がれたのはひょっとして俺の方じゃないだろうか。
+++
裏に続く、かもしれない。むしろ裏がメインのネタだけど今日はもう眠いので続きはまた今度書くかもしれない。
・書きたかったもの
首輪をつけられてるけど態度のでかいSと、鎖を握ってるものの命令しなれてないM。表向き主従逆転してるように見えて実は全然いつもと同じ。
下克上ならぬ傀儡政権ですなー。
[3回]
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