超絶的に遅れまくりましたが、リクエスト頂いたというよりむしろリクエストを「させた」お誕生日プレゼントのメタクイでございます。
ようやく出来上がりました……遅いって。
渉様、遅くなってしまいましたがお誕生日おめでとうございます!(月変わっちゃってるじゃん!)
「ちょっとした外出をメタルと二人っきりで行って、あれ、これってデートみたい?と思って一人あっぷあっぷ照れてるクイック」という素敵なリクエストにも関わらず……あってるの最初だけじゃん!!と空中自分ツッコミしながらのジャンピング土下座する次第ですorz
久しぶりにメタクイを書いたら鈍感でもドSでもなくただひたすらにマイペースな不思議さんと化すメタルさん、そしてあまりの乙メンぶりに私自身が軽くひきそうになるクイックという有様!
無駄に長くて、そして遅くて申し訳ありません。どうぞ煮るなり焼くなりしてくださいませ!!渉様の一年が素敵なものでありますように!!
えろ分はありませんが、ちょっぴりほのめかしてます。
【世界の中心で君を独り占めする】
今日は久しぶりにメタルと二人きりになった。俺たちの周りにはいつも博士や兄弟や部下たちがいるし、自分たちの部屋に二人でいても、隣は別の誰かの部屋だと思うと気を使っちゃって、本当の二人っきりって感じはしない。
メタルと恋仲になって結構経つけど普段はそんな感じだから、この状況は結構レアで、ドキドキする。デートみたいだ――
「クイック、そっちに二体行くぞ!」
「了解!」
まあ、任務中なんだけどな。
研究所を襲ってデータを奪う、いつもの簡単なお仕事だ。後ろ暗いところでもあるのか、やけにガードロボットの数が多いけど、俺とメタルの敵じゃない。
なんてな。
気を緩めるとすぐにやけそうになる顔を気にしてたら、エネルギー弾が顔のすぐ側を通過していった。本当は顔を狙ったんだろうが、俺はそっちを見もせずに軽く首を傾けて避けてやった。こんなのは楽勝だ。
なのに、
「クイック、余所見をするな!」
怒られた。メタルは俺と二人っきりって事を意識してないのか、真面目な仕事モードだ。
「あのくらい、見なくても避けられる……ってか、実際避けただろ?」
「油断しすぎだ。敵が弱くても気を抜くな。浮ついた気持ちでいると、足元をすくわれるぞ」
マスクに隠れて口元の表情はわからないけど、目つきはいつも以上に鋭い。
格好良い、って思うけど――口に出したら絶対怒られるよな。
確かに浮ついてて、戦闘に集中できてないのは自覚してる。敵が弱っちいから遊び半分で片付けてるけど、ヘラヘラしてて怪我でもしたら、メタルはがっかりするだろう。
俺はDWN最強のクイックマンなんだから、つまらないミスなんかできない。
――でも、二人っきりだ。
二人っきりなんだけどな。
近くで待機してる仲間もいないし、電脳空間でサポートされてるわけでもない。メタルはそういうの、意識しないんだろうか。
俺だけテンション上がっちゃってんのかな。
怒られたしさ。
なんだよ。
俺たち恋人じゃんか。
「何を不貞腐れてるんだ。さっさと奥へ進むぞ」
「ふん」
ふわふわした気持ちがしぼむと、俺の気持ちをちっともわかってくれないメタルにだんだん腹が立ってきた。
次から次へと湧いてくる雑魚ロボットを先頭きって蹴散らした俺は、最深部にいたデカブツを五秒で切り刻んでやった。
弱すぎて八つ当たりにもならなかった。
+
データを手に入れた俺たちは、徒歩で帰路についた。目的の研究所が基地からさほど離れてはいないこともあって、もともと歩き――というか、走って来たのだ。
まだムカムカしていた俺は、後ろを歩くメタルを置いて一足先に基地に帰ってしまおうかとすら考えていた。だだっぴろい荒野をとぼとぼ歩くのも馬鹿らしい。
「メタル、俺は先に――」
「クイック」
先に帰るから――と言いかけた瞬間、足を止めたメタルが俺を呼んだ。しばらく前から衛星と通信していたメタルは、耳のアンテナに手を当てたまま首を傾げる。
「……なんだ?」
「いや、先言えよ。俺の事呼んだじゃん……何だよ」
メタルが呼びかけて来ていなければさっさと帰ったんだけど、もう言い出しづらい。
「早く言えって」
「ああ……お前のおかげで任務も予定より早く終わった。空いた時間で行きたい場所があるんだ。ここからそう遠くはない。付き合ってくれないか?」
仕事が趣味のメタルが寄り道なんて、珍しいにもほどがある。
「……データはどうするんだよ」
「さっき衛星回線で送っておいた。解析はバブルがやってくれる」
さらっと他人に仕事を押し付けると、メタルは俺の顔を覗き込んだ。
「嫌か?」
問いかける赤い瞳から目がそらせない。さりげなく手首を掴んできたりして、任務中に気が抜けてると言って俺を叱った奴と同一人物とは思えない。
さっきまでと全然違う。今のメタルは、完全に『恋人』の顔だ。卑怯だろ、そういうの。
「どうした、変な顔をして」
「……だって、さっきまであんなに冷たかったのに」
「冷たい?」
メタルは心外だ、という顔をした。
「いくら簡単な任務でも命がかかってるんだぞ。お前が妙に集中してないから、俺は一瞬も気が抜けなかった」
う、心配されてた。だから妙にピリピリしてたのか。
「……ふ、二人っきりで浮かれてたんだよ」
「時と場所を考えろ」
呆れ顔のメタルはため息をつくと、俺の腕を引いてすたすた歩き出した。
「お、おいっ! どこ行くんだよ!」
「罰として俺に付き合ってもらう。何、すぐ近く――そこの丘を越えた所だ」
「そういや、行きとルート違うと思ってたけど……」
丘を登りきり、俺の言葉は尻すぼみになって消えた。
そこはもう荒野ではなかった、と言ったら言い過ぎになるけど、見渡す限りの広大な緑が広がっていた。
「なんだ……ここ……」
「廃棄された自然公園だ。向こうに温室が見えるだろう? 湖も」
メタルの指差す先には、骨組みだけになった温室の屋根と、森に飲み込まれそうになっている湖が見えた。
「俺にだって、お前と二人だけの任務で下心がなかったわけじゃない」
「ここ、に……来たかったのか?」
「前から気になってはいたんだが、なかなか機会がなくてな」
赤い瞳が悪戯っぽく笑った。今回の任務は、普段は基地で待機するメタルが珍しく自分から名乗りを上げたと聞いている。パートナーにわざわざ俺を指名して。
つまり、最初からそのつもりだったって事だ。
だったら、ハナからそう言え馬鹿。
「ほら、行くぞ」
「あっ、待てって!」
走り出したメタルの後を追って、丘を駆け下りる。
荒野を侵蝕した草原は、俺の腰くらいの丈があった。森の木々は、おそらく道路であった場所にもお構いなしに枝を広げていた。昔は種類ごとに植えられていたはずの花壇は、種が滅茶苦茶に飛び散ったのか、カオスな色彩になっていた。
ウッドが見たら嘆くだろうか。いや、かえって自然のままって事で面白がるかもしれない。
そんな事を考えながら歩いていると、伸び放題の芝生に覆われた原っぱに出た。廃墟になった温室が見える位置にメタルが腰を下ろしたので、俺はその横に座る。
「これ……デートってことでいいのか?」
ハッキリ言って、俺はメタルときちんとしたデートをしたことがない。いつだって、何かの『ついで』だ。ほとんどが買出しのついで。
映画とか、遊園地とか、そういう『いかにも』なデートはしたことがない。
任務の『ついで』とはいえ、メタルがこんな場所を選ぶのが以外だった。本気で行くとなれば、こいつのことだ、あれこれ細かく計画を立てるものだと思っていたから。
メタルは俺の質問には答えず、湖から飛び立つ鳥の群れを眺めて呟いた。
「アダムとイブがいなくなったあとの楽園は、どうなったんだろうな?」
「は?」
「多分、こんな風な廃墟になったんじゃないか?」
一体何を言い出すんだこいつ。
アダムとイブって、世界で最初の人類だっけ? 罪を犯して楽園を追い出されたとかなんとか……昔バブルが話してくれたっけ。
「御伽噺だろ、それ」
「まあ、似たようなものだが……」
「何が言いたいんだよ」
メタルは理論整然としてるくせに、時々突拍子もない事を言う。普段は誰よりロボットらしいくせに、そういう時は誰よりも人間臭い。
「衛星を使ってサーチしてみたが、半径数十キロ圏内には人っ子一人いない。機能停止したロボットや、動物はいるようだがな」
メタルはそう言って、マスクを外した。隠されていた唇が、静かな笑みを浮かべている。
「まるで、世界には俺たち二人しかないみたいじゃないか」
「最初の、人間たちみたいに……?」
「そうだ。ここなら、その二人のように、誰にも邪魔されず愛しあえる」
俺の電脳がその意味を理解する前に、俺は草の上に押し倒されていた。
「ちょっ……えっ? こ、ここで?」
「そう言ったつもりだったが」
抜けるような青空を背景に真上から俺を見下ろすメタルは、ふと表情を曇らせる。
「もしかして……基地で周りを気にしながら声を抑えてするほうがいいのか? 誰かに聞かれるんじゃないかという状況の方が興奮するなら――」
「そんなわけねぇだろ!」
俺が声我慢してると余計激しくしてくるくせに!
「……ん、も!」
最近ばたばたしてて全然こういうことはしてなかった。二人っきりになりたくてメタルがわざわざお膳立てをしたなら、乗ってやるのが恋人だろう。それに、メタルの気持ちは嬉しかった。
浮かれてたのは、ホントは俺だけじゃなかったんだ。
「わかったよ。付き合ってやるから、さっさとしろ!」
照れ隠しにぎゅっと抱きつくと、メタルは俺の耳元で低く笑った。
「悪いがさっさと済ませる気はない。久しぶりにじっくりと可愛がってやる」
スーツを脱がしながら、抑え切れない欲に塗れた声で囁く。
「ここなら我慢しなくていい。大きな声で悦んでいいんだからな」
「ば……ッ!」
反論しようとした唇がキスで塞がれる。ふわりと優しく触れてきたそれが、俺の反抗心を骨抜きにしてしまった。
草と土の匂いに包まれてされるがままになりながら、俺は半ば無意識にセンサーを働かせ、周囲を探った。
本当に誰もいない。メタルの言ったとおり、世界中には俺たち二人しかいないみたいだ。
誰にも邪魔されずに、こいつを独り占めしていいんだ。
そう思ったらすごく嬉しくなって、俺は自分からメタルに抱きついて甘えまくった。
〈後日談〉
B:「お帰り、二人とも。遅かったね」
M:「ああ、バブル。解析を任せて悪かったな」
B:「別にいいよ。単にシフト代わっただけだしね。ところで、二人とも通信切って何処行ってたの? 途中から居場所もトレースできなくなっちゃうしさ」
Q:「え、いや……えっと……その……」
B:「あと、クイックの背中に草とかついてるのは何で?」
Q:「!?」
M:(拒絶反応を示すかと思ったんだが、案外いつもより素直になってくれたな……また折をみて連れて行こう)
[13回]
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