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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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2024/11/22(Fri)11:27

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002:守るべきもの_03(C+F+α)

2008/11/08(Sat)02:03

さらに続き。
メタルとエアーがちょっと出てきます。







 左腕のタイムストッパーは、それ自体がフラッシュの電脳と同じくらいのスペックを持った計算機でもある。『時間を止める』行為には途方も無い演算が必要で、それを連続で使用するためには到底自前の脳ミソだけでは足りない。左腕のプロセッサーはフラッシュの第二の脳でもあった。独立稼動させれば『二人目のフラッシュ』として電脳戦を行うことができる。
 二人掛りになったフラッシュは頑丈な攻勢防壁を二秒で突破した。もたもたしている間に敵中枢システムのデータ凍結処理は七割方、閉鎖処理は遅れて三割が終了している。現在は閉じようとする壁を押さえつけ、中身を片っ端から自分の記憶野にコピーしている最中だ。凍っていようがいまいが関係ない。そんなもの、後でじっくり分析すればいい。
 完全閉鎖が終わる前にすべてのデータを取り出し終わればこちらの勝ち。あと三分もいらない。
 不利を悟ったか、中枢がガードロボットたちへ与える命令が途端に過激なものになる。マシンの損傷も厭わない捨て身の特攻――フラッシュが咄嗟に突っ込んだエラーコマンドで数対が軌道を変えて床や仲間に激突したが焼け石に水だ。
≪フラッシュ!≫
 超合金の装甲で弟を守るべく橙色のロボットが間に割り込み、その場でふんばった。
 殺到するガードロボットが連鎖自爆。クラッシュが連続で投げつけたボムの爆風が相殺――めくるめく炎が広い空間で炸裂して繊細な電子機器にダメージを与え、嵐のように乱れる気流がガードロボットたちを壁に叩きつけ、無数の破片が床や壁や巨大なマシンを引き裂き、クラッシュの小柄な体では庇いきれなかったフラッシュの左脚をずたずたにした。
 とっさに痛覚をオフに。損傷を痛みではなく、エラーの奔流として処理する。
「フラッシュ!」
 仲間の損傷を知らせる信号にクラッシュが振り向く。
 大きな目をさらに見開いて、彼はもはや使い物にならなくなった弟の左脚を注視した。
 守らなければ――必死で抱えてきた責任感が『守るべきもの』の傷ついた姿によって支えを失い、緊張し続けで張り詰めていた未熟な自我はその重みでたやすく押し潰された。
「ああ……あアアァ――――――……――――ッ!!」
 呆然とした声の続きは暴走した人工声帯のハウリングに変わった。キーンと耳が痛くなるような絶叫をあげ、クラッシュは起き上がろうとするガードロボットたちに次々とクラッシュボムを叩きつける。
 新手が飛び出してくる前に壁の穴に向かってボムを連射。容赦無い爆風で中へと押し返すだけでは飽き足らず、出口そのものを粉砕しようとする。
 完全に我を失った兄の様子に、フラッシュは頭を抱えたくなった。
 先ほどの大爆発で一時停止していた処理が再開した中枢システムとのせめぎ合いはもうすぐ終わる。だが、この分ではデータのコピーが終わるよりクラッシュがマシンごとこの部屋を破壊するほうが早いに違いない。
 フラッシュは暴走状態で交信を拒否するクラッシュの通信回線をこじ開け、最大音量で叫んだ。
≪クラッシュ!! 目ェ覚ませこの馬鹿兄貴!!≫
 クラッシュの頭が殴られたように揺れる。フラッシュは一瞬の空白に介入して暴走しているプロセスを片っ端からホールドした。
「あれ……フラッシュ?」
 狂乱の熱から引き戻され、クラッシュはぽかんとした視線を向けてくる。まだ声を使うことも振り返ることもできないフラッシュは、兄に背を向けたまま電波でわめいた。
≪アホかお前! 俺の脚なんて大して重要じゃねぇだろ? ブチ切れて本分を忘れてどうする!≫
≪だ、だって、俺……お前のこと守るって……≫
≪俺の脚の二本や三本、もげようが壊れようが任務には関係ねえよ。周り良く見てみろ。もう敵はいねぇだろ?≫
≪うん……≫
 クラッシュは見るも無残な室内を見回した。探査にも敵影は浮かび上がらない。
≪お前の仕事はひとまず終わりだ。すぐ終わるから待ってろ≫
「わかった……」
 暴走したときに人工声帯が損傷したのか、クラッシュの声は微妙にひび割れていた。しょんぼりと肩を落とす兄の姿に、少し言い過ぎたかと反省する。だが、あのまま暴走を続けられたら自分は確実に無事ではすまなかったのだから仕方ない。
 言い訳しつつも気分は落ち着かず、とにかく早く終わらせようと作業に意識を戻す。残っているのは凍結されたファイルが一つだけ。これを奪えば終わりだとデータに触れた瞬間、圧縮されていたプログラムが展開し、驚くフラッシュを尻目に一つのシグナルが建物中へ広がっていった。
≪畜生! やられた!!≫
 フラッシュの罵声と同時にクラッシュがはっと顔を上げ、駆け寄ってくる。モニタに研究所全体の略図が表示され、多数のオブジェクトが不気味なカウントダウンを始める。
 クラッシュは爆弾魔の直感でそれらの示す意図を読み取った。
≪これ全部爆弾だ……順番に爆発させて、研究所を完全に壊す気だ≫
≪最後のファイルは罠――研究所全体の起爆装置だったんだ。クソッ、俺としたことが……!!≫
 現在建物内に残っているのは自分たちと別行動をしている兄弟機たち。そして、彼らと戦闘中のガードロボット。人間たちは全員脱出したらしいが、敵もろともすべてを吹っ飛ばそうとするとは恐れ入る。それだけやばい研究をしていたのか、それともこの大掛かりな閉鎖凍結プロセスすら敵をおびき寄せる餌に過ぎないのか――勘ぐっている時間は無い。
≪メタル! エアー!≫
 電波で呼びかけると、長兄と次兄が答えた。
≪どうしたフラッシュ?≫
≪通信は控えろと言ってあっただろう。こちらは交戦中だぞ≫
≪悪いがそれどころじゃなくなった。こっちのミスだ。データは手に入れたんだが、トラップが作動しちまった。三分以内に脱出できるか?≫
≪今の位置からすると、どう考えても無理だ。どうやら誘い込まれたらしいな≫
 メタルの淡々とした応え。
≪クイックだけなら可能だがな≫
≪何言ってんだ。俺だけ逃げても仕方ないだろ≫
 エアーの言葉に聞いていたらしいクイックが反論する。
 いかなる状況でも冷静さを失わないメタルが言った。
≪フラッシュ、爆弾の位置情報を送れ。外延部へ移動しながら可能な限り破壊する。お前たちも早く脱出しろ≫
≪それこそ無理だっての……≫
 自分たちは研究所のど真ん中にいるのだ。タイムストッパーを限界まで酷使しても、出口にたどり着く前にエネルギーが空になる。外で待機しているバブルとウッドに手に入れたデータだけでも送るべきか――いや、それより起爆装置を止める手段を考えた方がいい。
(だけど、この手のトラップは下手に弄るとカウントが早まったりすんだよな……)
 メタルたちにデータを送信しながら歯噛みするフラッシュの横で、クラッシュはこの上なく真剣な表情でマシンを見つめていた。





>>【守るべきもの_04】へ

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