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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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2万ヒットリク:Machine child_02(夕多様)

2009/02/21(Sat)17:49

続きです。戦闘メインの回になります。相変わらず用語は適当なので、雰囲気で乗り切っていただければ(爆)





【Machine child_02】



 DWN.013クラッシュマンには一つ悩みがあった。
 兄弟の中で自分だけが唯一、長兄のメタルマンに褒められたことがないという事だ。
 元々メタルは厳しく、弟たちを滅多に褒めない。だからこそ、彼に「よくやった」と言われることは弟たちにとって何よりの褒美であり、誇りなのだ。誰も声に出して言うことはない。だが、皆そう思っていることはクラッシュにはわかる。
 メタルに「やれるか?」と訊かれて「できない」と答えるものはおらず、「頼む」と言われればこれ以上奮起することもないだろう。
 シミュレーションで、実戦で、ごくまれに放たれるその言葉。
 それを一度も受けたことのない自分。
 褒められたかった。
 認めてほしかった。
 それは「愛されたい」という心かもしれない。
 役に立ちたい。
 役に立てば、褒めてもらえる。
 それでも自分は、暴走してしまうのだ。
 戦いの緊張の中に長時間さらされると、戦闘プログラムが加速していく。クラッシュがその摩擦熱に耐えかねると、『それ』が始まる。
 睡魔のようにゆっくりとクラッシュを包み込む、暴走というゆりかご。

  粉塵    煙の味

    破壊の振動  装甲に当たる破片が奏でる音階

  爆風が心地よい  壊して           砕ける感触――

      悦び――   スリープモードに入る瞬間のような安らぎに包まれる

          恍惚   繭に包まれたような安堵

    動くもの全てを壊せと囁く声が、その向こうの空白を手繰る

 壊さなくてはならない。そのために生まれたのだから。
《クラッシュ、目を覚ませ! 聞いてんのかこの馬鹿!》
 頭の中で響く声はがんがんと不愉快だ。
《おいコラ、返事し――》
 すっきりしたくて、ぶつりと断ち切る。
「畜生、無線切りやがった!」
「もう殴って目覚めさせるしかないだろ!」
 二つの声。
 瓦礫の向こうにちらつく青の装甲。
 猛スピードで戦場を駆け巡り、クラッシュのセンサーでは残像しか捕らえられない赤い影。
(壊さなくちゃ……)
 全部壊せば、褒めてもらえる。
 きっと、「よくやった」って言ってもらえる。
 うきうきした気持ちで、戦闘プログラムが光の速度で弾き出した解に形を与える。
 空気の流れ、周囲にあるモノ、武器の効果が及ぶ範囲、『敵』の位置と動き――最高のタイミングだ。
 青い奴は瓦礫の下敷き。
 赤い奴は爆風に食われる。
 完璧だ。
(俺、ちゃんとやるから……)
 半ば夢見るような心地――凍りついたような無表情で、クラッシュは破壊の力を揮った。
 破片に引き裂かれた青い奴が、崩れた瓦礫に巻き込まれる――これでひとつ。しかし赤い奴は今までよりも速いスピードで爆風の中を駆け抜け、装甲をずたずたにされながら煙の向こうへ消えてしまった。
(あ……――)
 うまくいかなかったことへの失望は膨大なストレスに代わり、クラッシュの意志はそこから逃れるかのように分厚い膜に覆われていく。変わりに台頭するのは破壊をもたらす戦闘プログラム。
(もっと壊さなきゃ……)
 倒し損ねた敵を探して、ぼんやりと立つクラッシュが周囲を見回した。
 二時間ほど前は何棟もの研究所が立っていた場所は、だだっぴろい廃墟と化していた。あちこちで火の手が上がり、粉塵がもうもうと立ち込めている。研究者たちはとっくに非難しており、警備ロボットたちはDWNに残らず叩き潰されている。しかし、破壊はまだ終わっていない。壊すのだ。何もかもを。
 その廃墟に踏み込む影が三つあった。
 フラッシュの要請を受けてやってきたメタル、エアー、ウッドだ。
《到着した。状況は?》
 回線を立ち上げたメタルが呼びかけると、憮然とした弟たちの声が返る。
《大ピンチ。でっかい瓦礫に両足挟まれてる》
《こっちは装甲にひびが入ったくらいだ。クラッシュは無線を切ってる》
《なるべくなら、あまり壊さずに連れ帰りたいものだがな……》
 エアーが言う。彼のエアシューターは確かにクラッシュの弱点だが、直撃させると後々のメンテナンスが面倒なのだ。
《確かに、修理するのは二人で十分だな……俺がやろう。エアーはクラッシュの注意を引け。ウッドは二人の離脱を援護しろ》
 メタルは詳しい作戦データを弟たちに送信する。情報を確認したエアーとウッドはメタルと分かれて移動し始めた。
 同じく移動を始めたクイックは、フラッシュに通信を繋いだ。
《フラッシュ、さっきは何でタイムストッパーを使わなかった? 使えば瓦礫くらい避けられただろ?》
《ハァ? 馬鹿かお前。あの状況でTS使ったらお前が行動不能になるだろうが。何が装甲にヒビだよ。中身だって大分ボロボロだろ?》
《……そうか》
 弟の言葉を聞いたクイックは、何かを決意した顔でスピードを上げた。
「クラッシュ、こっちだ!」
 煙と熱の中ぼんやりとサーチを繰り返していたクラッシュは、エアシューターの渦巻く風を浴びてはっと顔を上げた。意志のない瞳が『敵』の姿を認めてクラッシュボムを放ち、エアーは次々に襲い掛かる爆弾を風で相殺する。
 瓦礫の下敷きになっていたフラッシュは、その余波が周囲を震わせるたびにひやりとしていた。
「おいおい……注意を引くのはいいが、俺のこと忘れてんじゃねぇのか?」
 バスターで足を千切ってしまえば這ってここから逃げられるが、衝撃で堆積物のバランスが崩れたら目も当てられない。
 こうなったら作戦終了後回収されるまで無事でいられるよう祈るしかない――そう思いつめたとき、視界に赤い影が疾った。軽い衝撃と同時に身体が持ち上げられ、信じられない速度に包まれる。フラッシュの足を切断したクイックが弟の上体を抱いて駆け去った数瞬後、爆風が積みあがった瓦礫を崩した。
 それを確認してやや速度を落としたクイックの周囲を、木の葉型のビットが包む。
《クイック兄ちゃん、こっちだよ!》
《ウッドか……助かる》
 クイックはウッドから送られた座標に向かう。戦闘の中心からは離れてきているとはいえ、ここは爆弾と竜巻の交錯する場所だ。思わぬところから破片が飛んでこないとも限らず、リーフシールドで守ってもらえるのは正直ありがたかった。メタルがウッドをつれてきた理由はこれだったのだ。
《おいクイック……お前の位置からなら、直接ウッドの所に行けただろ? わざわざ俺を助けに遠回りなんて、どういうつもりだよ?》
《さっきタイムストッパーを使わなかっただろ? その礼だ》
 フラッシュの疑問に答えたクイックは、ウッドの傍で足を止め開けっ放しの回線に電波を乗せる。
《メタル、フラッシュと一緒にウッドと合流した》
《一緒? ……遠回りしたのか?》
《だってこいつ動けなくなってたんだぜ? 脚壊したけど、良かったよな?》
《そうだったな――よくやった、クイック》
《へへ》
《クッソ……おいウッド、早く輸送機に入れてくれよ。応急処置だけでもしてぇから》
 不機嫌そうなフラッシュの言葉と共に通信が切れる。メタルは足を速めて戦闘の背後に回り、エアシューターへの防御で生じた一瞬の隙をついてクラッシュに急接近した。その勢いのまま背部装甲の真ん中、排気口の下に渾身の掌底を叩きつける。
「がっ…――――!!」
 突然の衝撃に内部電位が乱れ、クラッシュの動きが止まる。メタルはその頭をつかむと、後頭部のコネクタに自分の首筋から引きずり出したケーブルを差し込んだ。
 マスターコードを流し込み、暴走しているプロセスを次々に落としていく。今回は暴走していた時間が長く、そのまま正気に戻すよりも一度シャットダウンさせたほうが回復が早いと判断したのだ。
 数秒後、再起動したクラッシュの目の前にあったのは、瓦礫の山とこちらを睨みつける長兄の姿だった。




>>【Machine child_03】






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No.106|キリバンComment(0)Trackback()

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