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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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006-03:再構築_7.5(E→Q)

2009/06/20(Sat)20:56

もうすぐ6万ヒットですね!!そしたらまた、5万とあわせてリク受付しようと思います。
こっそりstkしてるサイトさんで先日のくだらない考察に触れてて下さってもう朝っぱらからもだえ死ぬかと思いました。美味しいネタと思ってくださってありがとうございます!!MQは供給少ないんですから見てるに決まってるじゃないですかああああっ!!!
今度ちゃんとご挨拶に行こうと思います。


今回一応番外ですが、話は繋がってます。Eはいろいろ考えたんですが、いい男になったぽいです。最初のプロットだと良くないEだったから!
辛い道に自ら踏み込んでる気はしますが。

というわけで、連載の続きです。ちょっと長いですが、一回でうpします。メットレス描写ありです。ご注意!
番外なので、タイトルはお代配布サイトからいただきました。




【再構築_7.5 百年の片思いも褪めない】



 ――あの人は私を覚えているでしょうか?
 忘れられているに違いないと思いながらも、胸中で問いかけを繰り返す。
 エレキマンが恋を自覚してから数ヶ月が経っている。あの後ライト博士にこの感情を消して欲しいと頼んだのだが、断られてしまった。
 例えロボットであっても、心を、感情をそんな風に扱ってはいけない。
 ロボット工学の父は彼を優しく諭した。
 辛くても、苦しくても、それは君の心が生んだ大切なものだ。捨てるのではなく、乗り越えるものなんだよ。
 狂ったように一人を求めるこの感情が大切だなんて、本当だろうか。
 しかしそれ以上の反論は出来ず、エレキは今も『あの人』――DWN.012クイックマンのことを覚えている。仕事中は感情をパージして作業をするが、自由に出来る時間が少しでもあれば、何度も記憶野からデータを引き出しては再生した。
 鮮やかな赤。まっすぐで、強い瞳。それに射抜かれた時の衝撃。苦しくて、でも不快ではない、甘美ですらある――痛み。
 彼は自分など眼中にないだろう。それでも会いたかった。
 あの時、言われるまま無抵抗の彼に雷を放った自分の愚かさを謝罪したかった。
(もう、そのことすら忘れてしまっているかもしれませんね)
 唇が苦い笑みを刻むのを感じながらワイリーナンバーズが暮らす研究所の敷地に足を踏み入れる。
 時刻は夕方で、赤く染まった景色の中、エントランスの階段に腰掛けた金髪の人型ロボットが不機嫌そうにタバコを吸っていた。足元には何本もの吸殻が散らばっている。
 一見誰だかわからなかったのだが、データは相手がDWN.014フラッシュマンであると告げてくる。ヘルメットを取っている姿は初めて見たが、短い金髪や何故か不ぞろいなヒゲとあいまってチンピラのように見えた。
(治安の悪いこの界隈にはぴったりの容姿ですね)
 意地悪く考えながら近づくと、フラッシュマンは侵入者をじろっと睨んだ。
「DRN.008エレキマンか……」
「お久しぶりですね」
 ライトナンバーズとワイリーナンバーズは以前相対したことがあるため、顔くらいは見知っている。完璧に忘れているクイックマンの方が珍しいのだ。
「クイックマンはどちらに?」
 兄機の名を聞くと、みるみるフラッシュマンの顔が険悪なものになった。警戒心をむき出しにして、探るような視線をエレキに向ける。
「この間、あいつを黒焦げにしたのはテメエだろうが……忘れてんのか?」
「それを、謝りに来たのです……ずいぶん遅くなってしまいましたが」
「――…………ま、嘘じゃねぇようだがな」
 彼はそういうと、根元近くまで灰になっていたタバコを捨て、足で踏み消した。パッケージから新たな一本を取り出して銜え、マッチで火をつける。そのマッチも足元のゴミに加わった。
 エレキはマナーの悪さに顔をしかめながらも問いを繰り返した。
「クイックマンはどちらに?」
 答えは人差し指だった。フラッシュマンが指を立て、ビルの上を示す。
「……屋上ですか」
 確かに、センサーは目の前に一つ、ビルの内部に五つ、屋上に一つのエネルギー反応があると答えている。
「ありがとうございま――」
「ちょっと待て」
 フラッシュマンは一歩踏み出したこちらを遮るように腕を伸ばした。
「居場所を答えたからって、お前をこの建物に入れる気はねぇぞ。これだからライトナンバーズってのは気に入らねぇ……」
「では……建物内部に入らずに屋上に行けば良いのですね?」
「おー、そういうこった。それなら構わねぇよ」
 静かに聞いたエレキに対し、フラッシュは唇を歪めて笑った。単に意地悪をされているだけのような気もするが、確かに他人の家だ。押し入るような真似はまずい。
 十階建てのビルだが、自分の機動力ならば屋上まで登るのは難しくない。そう判断して背を向けるエレキに、フラッシュが声をかけた。
「なぁ、おい」
「……なんですか?」
「違ってたら謝るけどよ……お前クイックが好きなのか?」
 ――心を読まれた!?
 エラーを起こしてエレキは固まった。数秒のタイムラグが生じ、自分でも説得力に欠けると思いつつ、憮然とした表情を作って否定する。
「…………違います」
 恐ろしいほどの鋭さとは裏腹にフラッシュマンはあっさり引いた。
「だったらいいけどよ」
 銜えたままのタバコと口から同時に煙を吐き出しながら、念のため言っておいてやるからという口調で言った。
「アイツ、好きな奴いるから」
 ――――……ッ!!
 今度のエラーは処理に時間がかかった。
「違うと言っているでしょう、しつこいですね」
 声に動揺はなかったが、エレキの内心は乱れていた。研究所の横に回って隣のビルとの隙間がさほど大きくないことを確認しながら、跳躍の軌道を計算しながら、意識の裏側でフラッシュマンの言葉がリピートする。
 ――アイツ、好きな奴いるから。
 そんな。
 ギリッと奥歯をかみ締めながら地を蹴った。
 研究所の壁と隣のビルの壁を交互に足場としながら上昇していく。
 そんな。
 あの人が。わき目も振らずに駆けるのが信条のようなあの人が、一体誰に心を奪われたりするというのか。
「――……ッ!?」
 計算どおりに屋上に辿り着いたエレキはしかし、すぐに横ざまに身体を投げ出した。寸前までエレキがいた場所が破裂し、コンクリートの破片が飛び散る。
 数メートル離れた場所に崩れた姿勢で着地したエレキは、振り返ったそこに赤い影を見つけた。近い。相手の間合いから抜け出せてすらいない。後ろに引かれていた腕がエレキめがけて突き込まれ――直前で停止した。
「――…………っ」
 顔が近づいているせいで翡翠色の目にこちらの顔が映っているのが見えた。戦闘モード時の広角視野が絞られ、エレキに焦点が合う。
「ク……イック、マン?」
「お前……」
 敵ではないことを認識したのか、鋭く引き締められていた美しい顔が少しだけ緩んだ。
 赤いロボット――クイックマンは拳を引くと、エレキから静かに一歩離れる。
「いきなりで驚きましたよ……?」
「変なところから侵入して来たやつがいたんでな。あのハゲ何やってんだと思ったが、お前だったのか」
 淡々と答えるクイックは、下にいたフラッシュマンと同じように素顔だった。少し長めの栗色の髪が夕方の風に揺れ、滑らかな頬をなぶっている。
 彼は無表情だったが、どこか苦しそうに見えた。エレキに背を向け、沈んでいく夕日に視線を移す。自分が来るまで、彼はずっとそうしていたに違いなかった。
 空っぽになりそうで、なってしまいたくて、でもなれなくて苦しんでるような横顔。
 そう、苦しいんですよね。わかります。私にはわかる。あなたの苦しみが、痛みが。本当は蹲って、声をあげて泣いてしまいたいのですね。その感情が、激流のような渦が、あなたの中で渦を巻いている。
 ――わかります。
 何故わかるのかはわからなかったが、そんなことはどうでもいいと思った。
 彼に何があったのだろうか?
 数ヶ月前のクイックマンは無抵抗で一撃を受けかなりの損傷を負ったが、例えその状態であっても本格的に戦いを始めればエレキは勝てなかっただろう。あのクイックに愚かな自分が勝てたとは思えない。
 それなのに、今は立っている事すら辛いようにも見える。
 すっと伸びた背にも、長い足にも力は入っておらず自然体だ。それでもエレキの目には、彼が今にも潰れてしまいそうに見えた。
 ――それなのに膝を折ろうとしない貴方は、とても切なくて、美しいです。
 彼はふとエレキに視線を移すと、風で乱れる髪を手で押さえて言った。
「ところでお前……この間の続きをしに来たのか?」
「お……」
 覚えていてくれたのですか、と言おうとして止めた。だが、顔だけは認識してもらえていたらしい。先ほど侵入者と思われて攻撃されたときも、咄嗟に止めてくれたのはそのためなのだろう。
 嬉しかった。
 言葉を切ったこちらを訝しむクイックマンに気まずさを感じ、エレキは咳払いを一つして立ち上がった。
「この間のことを謝りに来ました。愚かなことをしたと思っています。どうか許して下さい」
 ぐだぐだ言い訳する気はなかった。深く頭を下げ、上げる。
 クイックマンは驚いたように――といっても無表情だったが――こちらを見つめていた。
「ああ、いや……」
 戸惑っているのか、彼は頬を掻き、
「こっちこそ、この間はぞんざいに扱ってすまなかったな……あんなことをいう気はなかったんだ」
 あの時は余裕がなくてな、と言ったクイックは、小さくため息をついた。
 謝罪があっさりと受け入れられたことに気を良くしたエレキは、慎重に、しかし一歩踏み込んでみる。
「何かあったのですか? ひどく、辛そうに見えますが……?」
「お前に話すことじゃない」
「辛いのなら……泣けばいいじゃないですか。涙を流すのは、私たちに与えられた権利ですよ?」
 怒るかと思ったが、クイックは沈んでいく夕日をただ見ている。空はすでに夜の藍色が多くを占め、一滴の血のような光がビルとビルの狭間に消えていく。
「……泣けないんだ」
 その赤を追いかけたいと言いたげな顔で、クイックは呟く。
「俺の表情は、あいつが持って行っちまった……辛くても苦しくても、どうしても泣けないんだ」
 ――泣いて、いますよ。
 私にはわかる。貴方が泣いているのが、わかります。
 表情がないのと感情がないのは違う。特に、それらを切り離すことの出来るロボットにとってはなおさらだ。それに、クイックは辛くないとは言わなかった。
 励ましたい。少しでも支えたい――その一心でエレキは言った。
「クイックマン……あなた方が苦しんでいる訳を話してはくれませんか? 私はライトナンバーズですが、今はライト博士もワイリー博士も和解しているのです。もう敵ではありません。あなたの敵になりたくない……信じてください」
 実のところ、エレキはワイリーなど信じてない。正直油断のならない老人だと思っている。だが、最後の部分は嘘ではない。
 クイックマンの敵にはなりたくない。
 果たして、クイックマンは「お前に言っても仕方ないけど」と前置きして口を開いた。
「メタルが……ようやく修理が終わったってのに、再起動を拒否して自己閉鎖したんだ」
 メタル――あの最初の戦いのときに割り込んできたDWN.009メタルマンのことだろうか。ロックとの戦いで大破し、修理中であるという話を聞いている。
 エレキとクイックマンの戦闘に割り込んできた赤いロボットは、厳しく弟機を叱り付けた。エレキとの戦いに気を取られて任務を怠り、仲間を危険に晒した――エレキを牽制しながらも、メタルマンはそう言ったのだ。
 クイックマンはエレキをベースに作られた戦闘用ロボットだ。元となった存在よりも優れていることを証明しなければ俺のプライドに傷がつく――そう言って戦いを続けようとするクイックマンに、メタルマンはこう言ったのだ。
 そんな下らないプライドなど捨ててしまえ、と。
 自分のベースに拘るのは下らない事。当のベースであるエレキですら腹を立てたが、メタルマンは有無を言わせず弟を引きずっていった。
 思えば、二度目にあったクイックマンが全く自分に興味を示さなかったのはメタルマンの教育の賜物なのだろう。彼は、言われたとおり『下らないプライド』を捨てたのだ。 
 そう考えるとメタルマンに恨みがわいてくるエレキだったが、とりあえず話を続けようと呟いた。
「自己閉鎖……ですか」
 外界とのインターフェースを殺して内に閉じこもることを、確かそう呼ぶのではなかっただろうか。自己閉鎖中は、通常の接続の仕方ではそのロボットにアクセスすることができない。
 クイックは力のない声で続ける。
「自分を廃棄してくれだなんて、どうして――……」
 確かに、それは辛いだろう。家族が死を望むなど――
 何か声をかけようとして口を開けたエレキの聴覚センサーに、続きが聞こえた。
「俺の、っ……俺のことなんて、どうでもいいのかよ……メタル……っ」
「…………」
 その一言で全てが理解できた。
 ――アイツ、好きな奴いるから。
 アイツとは誰か。それはクイックの言葉から明白だ。
 ああ腹が立つ。
 あなたが好きだという相手は――メタルマンは何故今この場にいてあなたを支えてあげないのですか?
 そんな相手のために、何故あなたは悲しむのですか?
 私ならあなたにそんな目をさせたりしないのに。
 そんな悲しげな声で名を呼ぶような気持ちには、絶対にさせないのに。
 莫大な感情の奔流にエレキは眩暈を感じた。こんな激しい感情を抱いたのは初めてだ。システムに大幅な負荷がかかり、エラーを起こしたらしい。
 落ち着こうとしながら、エレキはクイックマンを抱きしめたい衝動と必死に戦った。
 彼に触れたい。だが、クイックマンが弱りきってるからといって、そこに付け込む事はしたくない。
 誇りにかけて、この前のような過ち繰り返すことは――自身の醜さと卑怯さを彼の前に出すことは出来ない。
 今すぐクイックマンを抱きしめてしまいたい。彼は抵抗しないような気がする。
 だからできない。
 ――あなたに触れたら、私はこう思ってしまう。
 メタルマンさえ目覚めなければ、自分は傷ついたクイックマンの傍にいられる。
 メタルマンがいつまでも目覚めなければいい。
 メタルマンが廃棄を望むなら捨ててやればいい。
 何故なら、メタルマンが目覚めれば、彼はそっちに夢中になってしまうに決まっているからだ。彼はジグザグに進む雷である自分と違い、レーザーのようにどこまでも真っ直ぐで、一途だから。
 ――でも、そんな私の気持ちを貴方が知ったら、きっと私を嫌いになってしまうでしょうね。正々堂々を好む人ですから。
 それに、やはり彼には強く気高く輝かしくあって欲しかった。それこそ、エレキが心奪われたクイックマンなのだから。
 自分は、そんな彼に認めてもらいたい。
 夕日が完全に沈み、夜の帳に包まれた中で、エレキは鋭くクイックマンを睨んだ。
「それで……あなたは一体どうしたいのですか? 『どうすべきか』に気を取られて、自分の意志を見失ってはいませんか?」
「俺の……意志……?」
「そうです」
 エレキは頷きながら思った。
 自分は現在進行形で墓穴を掘っている。恋した相手と恋敵を結びつけるような真似は悪手としか言いようがない。後で自分のことを馬鹿だと思って凹むだろう。
 それでも、仕方がないではないか。
「立ち止まるなど、あなたらしくない――クイックマン。貴方が疾走を止めるなど、まったくらしくありませんよ。そんな情けないロボットに私が負けるなどありえない」
 彼の前に立って、胸を張れない自分ではいたくないのだから。
 だから、エレキは言った。
「顔を上げなさいクイックマン。それとも、あの勝負は何かの間違いだったとでも言うのですか?」
「……そんなわけがあるか」
 クイックマンが顔を上げた。絶望と悲しみに沈んでいた翠の目に光が戻っている。苦痛に耐えて立ち上がろうとする崇高な光だ。
 彼には、そういう目の方が似合っている。
 エレキは頷き、
「自己閉鎖モードと言っても外部からの接続全てを完全に遮断できるわけではありません。我々のような心を持つロボットの深層部分は基本的に無停止ですから……深層意識に直接接続して語りかければ、あるいは――」
「あいつを説得して、呼び戻せるかも知れない……か」
「ええ」
 エレキの言葉に、クイックマンは何かを考えるようにうつむいた。
 確かに、深層意識に接続すれば相手と話すことは出来る。だが、それでも意志を覆せなければ意味はない。エレキはメタルマンのことを良く知らないが、クイックマンを叱り飛ばす様子を見ても、相当に意志は強いだろう。それを思うと、叛意は難しいかもしれなかった。
 だが、それもまた困難なミッション――戦い、ねじ伏せるべき敵と思ったのか、クイックマンの目に闘志が浮かんだ。
「わかった。まだチャンスがあるなら、諦める理由にはならないな」
 彼はそう言って決意を秘めた目でエレキを見た。
「ありがとな。久しぶりに自分が戦士だってことを思い出せた。危うく自分を見失う所だったよ……――えっと……」
「エレキです」
「ありがとう……エレキマン」
 彼は感謝の気持ちを込めてエレキの名を呼んだ。
 表情を失ったという顔には笑みはなく、しかし瞳は元通り、彼の高潔さと誇り高さを感じさせるものに戻っている。
 嬉しさと複雑さを同時に感じながら、エレキはクイックの強さに感心していた。
 少しだけ希望が見えたといっても、きっと絶望のほうが大きいはず。
 彼は現実的な戦闘者だ。エレキの判断力を受け継いだ、純粋に、単純に見えても頭のいいロボットだ。
 ちっぽけな光の先には、絶望が待っている確率が高い。そして、その切望こそ最大の絶望だ。きっと彼は、期待などしてはならないと自分に言い聞かせることを知っている。それこそが最善への道だ。生き残るための茨の道だ。
 エレキも仕事柄、それをよく知っている。
 知っていても、それが快いことのわけがない。
 辛いことに変わりはないのに、クイックマンはそれに耐え、エレキに感謝の気持ちを伝えようとしてくれた。
 ――真っ直ぐな人だ。
 強い人。
 あなたは美しいです。本当に美しい。
 あなたが愛しいです。会えなかった間、私の胸のうちで募らせた思いは裏切られなかった。いや、それ以上です。会えなかった間よりもずっと、あなたが愛しいです。愛しています。
 この思いは、百年抱き続けても褪めるような気がしない。
 エレキは微笑んだ。
「また……来てもかまいませんか? いつになるかわかりませんが、次の休暇の時にでも」
 意図的に明るい口調を使ったのだが、クイックマンもそれを汲んで同じ調子で返してくれた。
「ああ。いつでも来い――まあ、俺も一応仕事してるから、いるかどうかはわからないけどな」
「仕事? 何の仕事です?」
「配達とか……まあ、いろいろだよ。あいにくウチは金欠なんだ」
「なるべく連絡を入れますよ」
 次に来たとき、彼の傍にはメタルマンがいるのだろうか。それとも彼は独り、砕けそうな心と表情を失った顔で立ち尽くしているだろうか。
 わからない。
 けれど、
「またな、エレキマン」
「はい。さようなら、クイックマン」
 あなたが私の名前を覚えてくれたことが嬉しいです。
 あなたがあなたでいられる手伝いが出来てよかった。
 今はそう思うことにして、エレキマンはビルの床を蹴って隣のビルへ、また次のビルへと移動していった。適当に進んだところで地上に降りようと振り返る。
 遥か離れたビルの屋上に、クイックマンの姿はすでになかった。
 それを少し残念に思いながら、エレキは宙へ身を躍らせた。


>>【再構築_08】へ


+++++++

やっぱりこっちのプロットで良かったな……変態とかヤンデレとか高慢とかでも全然OKですけどね!むしろそっちのほうがQ受けスキーの腐的にはゲフゲフ。まあ、そっちはそっちで書くとして、こういうのもツンデレっていうんでしょうか?(←何でもカタカナ4文字で表すのはよくない)
最初は短編で、ちょっと励まして終わるだけのネタだったんですが、ちょっと見回したところQをに活を入れられるのはEだけだったので頑張ってもらいました。墓穴掘ってますけどねw

美しい連発してるのはエレキ視点だからです(笑)

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No.164|ロックマン小話Comment(0)Trackback()

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