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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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2024/11/22(Fri)12:03

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006-03:再構築_10_1(ALL)

2009/07/15(Wed)00:02

なかなか進まなかったんですが、ようやく最終話アップです。
やりたいことを詰め込んだらまた長くなってしまったので2回に分けます。
やや集中力切れのため、誤字チェックとかは後日で。


※メトレスしてますので、ご注意ください。





【再構築_10_1 armistice】



「おじいさんは、やまへしばかりに――」
 しばかりはいいが、何故ここにいる?
「メタルがどっか行っちゃわないよーに『監視』してるの。えっと、おばーさんは……」
 首から下はまだ動かせない。何処へも行きようがないのだが。
「いーのっ! 今日の僕の任務なのっ! おばーさんは、かわへせんたくにいきました」
 強硬に監視と言い張ったヒートは、何故か俺の傍で延々と絵本を朗読し続けた。同じ話を繰り返し読まれたせいで、俺もすっかり覚えてしまった。「どんぶらこっこ」とは随分奇妙な響きだ。不思議と言いたい事は伝わってくるのが凄い。
「ねえねえ、メタル兄ちゃん。博士が帰ってきたら、僕、これ作ってみようかと思ってるんだけど。ネットでレシピ見つけたから」
 ああ、それは俺もまだ作ったことがないな。仕事の合間で、なるべく時間の掛からない物ばかり作っていたから、下準備が面倒な料理は試したこともない。
「うん、だからね。一緒に作ろうよ。僕もしばらく料理してないから上手に出来るか心配だし。博士に聞いたら食べたいって言ってたし。ね、約束しよう? いいでしょ、ね?」
 控えめなウッドが珍しく、しつこいくらいに「約束だよ」と念押しした。
 そんなに俺は信用ならないだろうか。
「ならんだろう」
「ならないよね」
「ならねーよ」
 そうか。というか、お前たち三人に信用されないと今後かなり大変なのだが。
「兄者は必要だと思えば簡単に約束を破る。例え博士との約束であろうともな」
「真面目な顔で嘘つくしね」
「まあ、信用ならねーって意味では、ある意味信用できるよな」
 そんな難しい評価を下されても困るのだが。
 エアーとバブルとフラッシュはちょくちょく顔を出しては文句を並べ立てていった。一種のストレス解消だろうか。
 説教ではなくて文句なのは、バブル曰く、
「兄さんは全部わかった上でやってるから、僕らの言葉耳に入ってないんだもん」
 だそうだが失敬な。ちゃんと聞いている。
「聞いてるだけじゃない」
 そうとも言うな。
「俺たちの言葉程度では兄者は曲げられん。だから説教しても意味がないし、エネルギーの無駄だ」
 それは済まんな、エアー。
「謝られても困るって。これだから文句言うしかねぇんだよなあ……」
 フラッシュに思い切り苦笑された。性分だから諦めくれと言いたいが、俺とてそれが最善だと思えば自分を曲げることも厭わないのだが。
「何にも曲げてねぇって、ソレ。だから兄貴は厄介なんだよ」
 そうか。
「メタル。俺、字、上手くなった」
 クラッシュが練習の成果を見せに来た。確かに驚くほど上達していたので「本当に上手くなったな。驚いたぞ」と褒めたらいきなり泣かれた。何故だ。
 撫でてやりたかったが、あいにく身体が動かせない。
 ただ泣き止むまで傍に居てやる事しか出来ず、俺がまだAIだった頃――大切な人に何もしてあげられなかった頃を思い出した。身体があることを知ってしまった今では、プログラムだけの存在に戻りたいとは少しも思わない。
 毎日のように弟たちがあれこれ理由をつけて顔を出すが、クイックの姿は一度も見ていない。
 クイックは何処にいるのだろう。
 俺が寝ている間、あいつは表情を失くしてしまっていたらしい。目を覚ました時は確かに笑っていたような気がするのだが。
 クイックは俺を好きだと言ってくれた。俺の存在を望んでくれた。
 だから、俺は戻ってきたのだ。
 少しは顔を見せて欲しいと思うのは、贅沢だろうか。
「あと少しで修理が終わるな」
 アルバートは最近三日と空けずに研究所に戻ってくる。俺の暴走をトーマスとロックマンが黙っていたおかげで、自由な行動が出来るようになってきたらしい。相変わらずあの二人は甘い。こちらが諦めたとでも思っているのだろうか。
 だが、アルバートは言う。
「ロックマンとライトの奴に借りができてしまったわい」
 返す必要性は感じません。俺たちは悪役ですから。この機会を最大限に利用すべきかと。
「真顔でよう言うわい。じゃが、お前に関する借りじゃからな。もうちょっとだけ協力してやらんでもない」
 そう来られると謝るしかない。アルバートが俺についての借りを感じるのだとしたら、俺自身もその清算を手伝うべきだろう。
 そう言った所、我が父にして友たる人は、なにやら思いついたようで作業ペースを早めた。
 その姿を見て、俺は改めて思う。
 ライバルの前に敗北し続けてきたアルバートを支える信念。
 敗北とは終わりではなく、次への始まりだということ。
 立ち止まらず進む事こそ、高みへ至る最短の道だ。
 そのように弟たちを教育してきたはずなのに、俺自身がそれを忘れようとしていたとは――未熟さを反省せねばなるまい。


 一ヵ月後。
 降りしきる雨が、町を灰色に染めていた。全てを飲み込もうとする雨音に対抗するように、一台の自動車が盛大に水飛沫を上げてやってくる。それは濡れた道路を走るにはかなり無謀なスピードで、しかし見事なドリフトを決めて駐車場の空きスペースにぴたりと停車した。
 自動車が飛び込んだ敷地の門には、雨に滲んだ『Dr.ライト研究所』という文字がかろうじて読み取れる。
 しばし沈黙の落ちていた車内で、会話が生まれる。
「……アルバート、『安全運転』という言葉をご存知ですか?」
「知っとるわい。しないだけでな」
「自重して下さい。どうしても、というなら俺が同乗している時だけでお願いします。事故があっても、俺ならあなたを守れますから」
「お前は心配性じゃのう。わしのドライビングテクニックはプロ顔負けじゃぞ」
「無茶をされるなら、今度から俺がハンドルを取りますが?」
 そう言って助手席から現れたのは、暗い赤色の装甲に身を包み、赤い髪をした男性型ロボットだった。彼は傘を開き、運転席の横に回って傘を差し掛ける。
 運転席から現れたのは、手提げケースを手にした白衣の老人だ。
 研究所の入り口までは十メートルほど。雨粒が激しく傘を叩き、一歩ごとに水溜りを踏んで足元が濡れていく。
 老人は傍らのロボットを見て眉を上げた。傘の中心にいるのは自分で、ロボットは身体を半分ほど雨に晒している。
「何じゃ、メタル。濡れているではないか」
「問題ありません。俺は全天候性ですし、タオルも持参しておりますので。そちらのケースに入っております」
「用意がいいのう」
「当然です。足元は必ず濡れますので」
 歩幅を合わせて歩きながら、ロボット――メタルは数日前のことを思い出していた。


 ワイリーはようやく監視が解け、DWNたちのいる研究所に戻ってきていた。すっかり修理が終わっていたメタルは、今までどおり彼の助手として研究を手伝うつもりだった――のだが、
「実は共同研究のために週三日はライトの所に行くことになっておってな。お前にも助手としてついて来て欲しい。ライトにはもう話してあるから、あとはお前次第じゃがな」
 それを聞いたメタルは眉間に深い皴を寄せた。あまり表情の動くことのない彼にとっては、最大限の不快を表す表情だ。そして答える。
「承知しました」
「顔が嫌だと言っとるぞ」
 ワイリーは肩を揺らして笑った。
「お前さんがやる気になるよう、理由を三つ述べてやろう。まず一つは、道中の護衛のためじゃ。隣町とはいえ、わしが一人で出歩くのは危なかろう。ん?」
「そうですね」
 一応自由の身になったとはいえ、ワイリーを狙う者が皆無とは思えない。移動手段も現在は車か電車のみだ。ワイリーは単独行動も好むが、メタルとしては最低でも一人は護衛に付けたい。
 メタルの頷きを見たワイリーは、小声でメタルに指示を出した。盗聴器がないか調べろという命令に、メタルは黙って各センサーの感度を上げる。
 数秒後、
「――俺のセンサーでは発見できませんでした」
 結果を伝えると、ワイリーは「ならば良し」と笑った。
「では告げよう。二つ目は、お前さんがいればライトの奴を誤魔化しやすくなる。お前が学生時代わしが連れていたAIだと話したら、あ奴、覚えておったからの。お前は時にライトの説を支持して主であるわしの意見を誤りだと抜かしたじゃろう」
「――そのようなこともございましたね。俺としては、正しい計算結果を告げただけなのですが」
 古いデータを引っ張り出しながら答えると、ワイリーは一瞬顔を顰めた。
「まあ、そういう実績があるから、ライトもきっとお前を信じるはずじゃ。だとすれば、二人がかりで騙しにかかれるじゃろうが。わしは製作中のDWRNやγをただのロボットにする気はないぞ?」
 不敵な笑みを浮かべる主は、やはりまだ諦めていなかった。同じ笑みを浮かべたメタルは「なるほど」と頷き、
「では、三つ目は?」
「ライトの所にはロックマンにロールと二体もロボットがいる。その上、ちょくちょくライトナンバーズどもがメンテナンスに戻って来よる。他人の作ったロボットに囲まれているのはなぁ、天才ロボット工学者としてはちょっと腹立たしいじゃろうが」
「なんとなく言いたいことはわかりますが、もう少しハッキリとお願いします」
 甘えと知りつつ、メタルはワイリーの言葉を欲した。それがわかっているためか、ワイリーは笑みを深くしつつ答えてくれる。
「まったく、仕方がない奴じゃのう……つまり、DWNの全方位での優秀性をライトに見せつけてやりたいんじゃよ。どうじゃ? やる気出たじゃろうが?」
 彼の浮かべるニヤニヤ笑いは、やはりこちらを揶揄しているのだろう。だが、それでも嬉しく思う。
 ワイリーは、たとえ敗北した自分たちであっても『自分の作った優秀なロボット』として自慢するに値すると思ってくれているのだ。
 メタルは軽く頭を下げながら淡々と述べた。
「感情は停止させておいた方がよろしいでしょう――内的な操作では心許ないので、外付けの装置で。ロックマンを見て、また反射的に暴走してしまうかもしれませんし、感情がない方が、トーマスに俺が公平であると思わせやすいですから」
 確かにAIだった頃の自分は公平ではあった。主に対しても誤りを指摘することを躊躇わない程度には。
 だが、今の自分は公平さを装うことができる。研究の助手をするなら、データも弄りたい放題だ。
「おお、そうと決まれば早速その装置を開発するかのう。感情制御プログラムを強化する方向で問題ないな? まあ、わしとお前なら明日中には出来上がるな」
「流石に動作確認と調整を含めれば二日は必要かと」
「三日と言わないところがお前の自負かのう?」
 そのような会話の末に出来上がったのはヘッドホンに似た形のイヤーレシーバーで、現在ヘルメットとの接続部に当たる顔脇のソケットを覆っている。
 メタルは建物の軒先で傘の雫を払い、身を拭ったタオルをワイリーから受け取ったケースにしまった。
「ここがトーマスの研究所ですか。住居と一体になっているのですね」
「なんとものんびりした風情じゃろ。あいつらしい」
 皮肉な笑みを浮かべたワイリーがインターホンを押すと、ややあって足音が近づいてきた。
 雨音に邪魔されながらも聴覚センサーがはじき出す数値は、身長132cm、体重105kg、59.4cmの歩幅でやや早歩きの――
「いらっしゃいませ」
 ロックマン――非戦闘形態時なのでロックというべきか――がドアを開けた。
「あ…………」
「…………」
 小さく口を開けたまま動きを止めるロックを、メタルはじっと見下ろした。
 憎いはずの相手を見ても、感情は動かない。至極平静だ。
(――外部制御装置は正常作動していると判断する)
 そう結論すると、慣れた様子でさっさと中に入ってしまったワイリーの後を追う。
「あっ……ちょっと、ねぇ!」
 ロックが慌てた様子で追いかけてくるが、メタルは無視した。主の姿が見えない。聴覚センサーで足音を解析し、早足で廊下の角を曲がる。
「待ってよ……あの……っ」
 ロックが追いついてきた。数メートル先の部屋からワイリーとトーマスの声が聞こえる。居場所を確認できたメタルはようやく足を止め、振り返った。
「メタルマン」
 見上げる顔は、本当に年端も行かない少年だ。不安げな顔でこちらを見上げている。
 本当に一体何の用だ。
 感情を止めていても、『快』『不快』の判断はある。『不快』を表そうと口を開けた時、ロックが言った。
「あの時の、君の問い――僕の『正義』は何かって……」
 ああ、そのことか。
「一生懸命考えてるけど……まだ答えは見つかってない」
 まあ、そうだろうな。そんなに簡単に出されても腹立たしいだけだ。
「けど、考え続けるから。僕は頭が悪いから、一生答えなんか出ないかもしれない。けど――考えることは、やめない。兵器になりたくないって気持ちも、忘れない」
 幼い瞳は己への不甲斐なさと、それでも今はこれが最善の答えなのだという必死さを滲ませていた。
 言葉通り、今までずっと『一生懸命考えて』いたのだろう。
「ずるいと思うけど……今は、これで許してくれないかな?」
「…………」
メタルは沈黙のままゆるりと両手を掲げ、ライト博士の技量によって少年らしい瑞々しさを再現された頬に触れた。



>>【再構築_10_2】



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