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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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MQウェブアンソロ企画:天然ドSと天然ドM(MQ)

2010/09/12(Sun)00:00

メタクイの日万歳!っていうか間に合ってよかった!!
でも本当にお題にあってるのか分からない!「誘われSと誘いM」の方が当たってる気がする!!もっと言うと互いに執着してる二人?


そんなメタクイです。糖分多め。


企画元はこちら↓ ビバMQ!
*MQWEBアンソロ企画*

*予約投稿したはずなのに公開されてなかった…;夜更かししてて良かったというかなんというか。

【天然ドSと天然ドM】



 ある朝、メタルがふと窓の外を見ると、青空の下楽しげに会話をする二機のロボットたちの姿があった。
 バイクを押す赤いロボットはクイックマン。その隣を歩く大柄なロボットはターボマンだ。様子からしてツーリングに行くところらしい。クイックはバイクに乗り、ターボマンはそのまま変形して――クイックは走った方が速いが、性能的に長距離には向かない。運転も好きらしいし、マシンに掛ける費用は自分で稼いでいるのでメタルに否やはない。
 ロボットレースで敗北して以来交流しているターボマンの話は前々からクイックの口から聞いていたが、こうして二人が一緒にいる姿を見るのは初めてで、今更ながらにしみじみと認識した。
(ああ、友達が出来たのか……)
 正確には弟だが――セカンドとセブンスではナンバーが離れすぎていて兄弟という認識は薄いだろう。友達だ。
 良いことだ。
 良いことのはずだ。
(ああ……だが、何故……)
 クイックがふとこちらを見て破顔した。綺麗で、それでいて負けん気の強そうな顔に笑顔を浮かべて大きく手を振る。その視線を追ってメタルに気づいたターボが軽く会釈をした。その腹にクイックが軽く肘を当てて笑う。親しげな動作で、ターボも軽く笑っている。
 再度こちらを見たクイックに笑みと共に手を振り返しながら、メタルはざわりとコアに走るノイズを感じていた。
 速度では、自分はクイックには追いつけない。
 去られれば、それまでだ。
 だが、今クイックの傍らには、彼に追いつき、追い越すことが出来るロボットがいる。
(この気分は……)
 恋人であるクイックが自分の元を去る事を、どうして考えたりするのか。
(馬鹿げている)

   *

 夜。クイックはベッドの上で縛られていた。首輪に鎖に手械(どこで調達したのか)でがんじがらめにされている。身が軋むほどの強さではないが、執拗に巻きつけられた鎖で身体が重い。
「何でだよ……」
 恋人の言葉にメタルは一仕事終えた満足げな顔で頷いた。
「ただ縛りたかったからだ」
「何だそれ」
 兄にして恋人であるメタルの頭がたまにおかしくなるのは知っていたが、今回はいつもより斜め上に唐突だ。かと思うとメタルはふと考え込み、首を振った。
「いや、違うな」
 うむ、と再び重々しい頷きをつくり、
「縛らせて欲しかった……こちらの方が正しいな。文句は言いつつもクイックは縛らせてくれた。俺はそれで満足だ」
「な……ッ」
 そういえば本気で抵抗しなかった――何するんだよ、やめろよ、とは言ったが、キスに誤魔化されて許しているうちにこんな有様になったのだ。クイックはメタルよりも強い。心の底から嫌であれば、クイックの抵抗をメタルは押し切れないというのに。
 メタルにはわかっている。そうさせたというだけで、クイックが許したということが。
 束縛を嫌うクイックが、メタルにだけはそれを許す。メタルが求めているのはそれだ。
(あ、甘えられてるのが無意識でわかってたからマジになれなかった……)
 いや、違う。
 メタルがおかしくなった理由も自分には分かっていたはずだ。
 今日の外出――普段であれば別の場所で落ち合うターボと、わざわざセカンズの居住区域で待ち合わせた。メタルが見ている事を知っていて、『友人と過ごす自分』の姿を見せた。
 だが、メタルは笑って手を振り、こちらを送り出した。何度も聞かせた友人であるターボと一緒にいる自分に対し、ただ行って来いと――
(嫉妬とか、してくれねぇのかなって……)
 放任とも取れ、信頼とも取れる態度にわずかな不安が生まれ、今日のツーリングはいつもより楽しめなかった。ターボには悪い事をしたと思う。
 だが、夜になってメタルはおかしくなった。
 縛りたいと、縛らせて欲しいと言ってくれた。
 自分はそれが嬉しくて――むしろ、こういう結果を望んで今日の待ち合わせ場所を設定したのかも知れなかった。
(俺ってそんな腹黒い思考できる仕様だったっけか?)
 わからない。わかるのはただ、満足そうなメタルに対し、自分は物足りないと思っていることだ。
 だから――
「おい、馬鹿兄貴……これで満足なのかよ」
「ああ」
「……俺は満足じゃねぇ」
 視線を外してぼそっと呟かれた言葉に、メタルが表情を止めた。
「縛らせてやるから、もっと強く縛れよな。これじゃいつでも抜けられて……縛られてる気がしねぇ。この程度だと逃げちまうぞ、俺は」
 これは脅しだ。縛っておかなければ、心も身体も光の速さでお前の元から去ってしまうぞ、と言っているのだ。
 メタルに嫉妬して欲しかった。涼しい顔で受け流すのではなくて、自分に対してこだわって――つまり、束縛して欲しいと思っていた。
 自分を引き留めて欲しくて。
 クイックは速すぎる。時々、気づかないうちに大切な人を置き去りにしているんじゃないかと怖くなる。
 ふと振り向いたとき、そこには誰もいないのではないか。
 知らぬうちに一人ぼっちになっているのではないか。
 錯覚だ。だが、縛られていれば――繋がっていれば、そんな事はないと安堵できる気がする。自分がどんなに速く駆けても、手を離さないでいてくれると。
(あれ? 待てよ俺。別に物理的に縛って欲しいわけじゃ……何でもっときつく縛ってくれみたいなヤバげなセリフを言っちまったんだ?)
 クイックの思考自体は十秒もかかっていなかったが、その間再起動したメタルはなにやらごそごそとベッドの下のいけない道具の入った箱を探っている。
「おい、な、何やってんだよ……」
「いや、より強くお前を縛るためのアイテムをだな……束縛といっても物理的なものだけでは芸がないし、せっかくのお誘いだ。全力を傾けねば。あそこまで言われたからには、あらゆる方面からの束縛をだな……」
「いや、いいですっ! 普通でいいからっ!」
「だから普通ではつまらないと……ああそうだ。良い事を思いついた」
「――ッ!」
 メタルの浮かべた剃刀のように優しい笑顔は、青ざめて首をぶんぶん振っていたクイックのコアを正確に撃ち抜いた。自覚があるのかないのか、メタルは愛に満ちた残酷をその顔で表現する。
「俺の機体識別コードを認識しなければ快楽信号が発生しないようにプロテクトを掛けてやろう。お前の可愛い姿を、俺以外が見ることの無いように」
 ぼうっと見惚れる恋人の頬を撫で、メタルが囁く。
「お前の芯に触れるのは、俺だけでいい。そうだろう、クイック?」
 メタルの言葉にぞくぞくするほどの歓喜を味わっている自分こそ、本当はおかしいんじゃないだろうか。
 小さな理性の声を思考の外へと追い出しながら、クイックは従順な態度でメタルの唇を受け入れた。




+++++


ドSでもドMでもなくただひたすらイチャイチャしてるだけのような気がすすす……!せっかく頂いてきたお題なのにすいません雅さま!!

拍手[17回]

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