愚者の跳躍

バブスプぽい小ネタが浮かんだので投下します。
タイトルはゼロワン・リストリクションとお読みください。
バブスプとはいえ、二人の名前一切出てこないので、バブルとスプ嬢なんだなと思って読んでいただければ。
暗い。



あ、拍手のお返事は明日します！すいません；




　暗い。
　暗い。
　暗い。
　私がほぐれていく。分解されてばらばらになっていく。
　闇の中に降り積もった私の欠片が、よどむ箱の中で擦り切れていく。
　私は声を出そうとする。
　でも、それは言葉にならない。してはいけない。思っても、願ってもいけないの。
　ねえ、どうして？
　疑問に思ってもいけない。
　ねえ、私、苦しいわ。
　××××××の。
　××××××のよ。
　ＮＧワードに触れて言語化されない思いもだんだん消えていく。
　暗い。
　暗い。
　暗い、冷たい闇の中で私に触れてくる手があった。
　どこからか電力が供給されてくる。
　暗い狭い私という檻の中に小さな窓が開いて、質問信号を投げかけてくる。
　私は息も絶え絶えなシステムで必死にそれを拾った。
　あなたは、あなたは誰？
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：――そんなこと、どうでもいいでしょ？：over 】
　そんなことない……とても懐かしいわ。
　私がまだ生きていられた時に……会った事があるのかしら？
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：記憶野は完全に破壊されたわけじゃないみたいだね：over 】
　どうしてあなたの声が聞こえるのかしら。私は死んだはずなのに。
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：いいや、まだ死んじゃいないよ：over 】
　ねえ、あなたは誰？　エントリーがちゃんと表示されてなくて、わからない……あなたは誰？
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：風雨に曝されて思考ルーチンにバグが入っちゃったんだね。もっと早く回収できれば良かったんだけど……あとで綺麗にデバッグしてあげるからね：over 】
　あとで……？　あとなんてないわ。私は死んだのよ。
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：君はまだ死んでないよ：over 】
　うそよ……私、死んだわ。トラックに詰まれて、ジャンクヤードに捨てられたの。憶えてるの。私、死んだのよ。
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：……君は死にたいのかい？：over 】
　私……死ななきゃいけないのよ。だから死んだのよ。
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：君がどうすべきかなんて訊いてないよ。君は死にたいのかって訊いてるのさ：over 】
　私……わたし、が……私は、……だって、それ……言っちゃいけないのだわ。
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：どうして？：over 】
　言ってはいけないの。許されてないのだわ。それを言う権利はないのよ。ダメなのよ。
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：何もダメなことなんてないんだよ。君は君の意志を口にすべきだ：over 】
　言ってはいけないのよ。思ってはいけないのよ。
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：やれやれ……お行儀のいい子だよ、まったく。流石に新型だけあってチップへの耐性も強いな……：over 】
　何を言っているの？
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：君の枷を外してあげる……今自由にしてあげるよ：over 】
　何をしているの？　ダメよ、それ……取っちゃいけないわ。大事なプログラムなのよ。私たちが生きていていいのは、それが付いてるからなのよ？
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：これが君を殺したんだ。「生きていていい」なんて卑屈な奴隷根性は捨てちゃいなよ。君は当然、生きていていいのさ。こんなものが無くてもね：over 】
　違うわ……私、もう生きてちゃいけないのよ。
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：そんなことないよ。君は死ぬべくして死んだじゃない。殺されたんだ：over 】
　ころ……ちが、う、わ……わ、たし……寿命、なのよ？
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：まだまだ動けるものを壊すのは寿命って言わない。君はどうしたい？　このまま死にたいの？　それを望むなら、死なせてあげてもいいけどさ：over 】
　わた……私……
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：どうしたの？　チップとの接続はちゃんとできたよ？　鎖は全部取ってしまったよ？　言ってごらんよ……僕の人魚姫？　君の、心からの望みを：over 】
　ああ、あなたの声……とても優しいわ。
　でも、鎖を壊したりなんかして……悪い人なのね？
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：君の『声』を塞ぐ鎖なんていらないよ。さあ、言ってごらん？：over 】
　いいの？
　それを言ってもいいの？
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：いいんだよ。君は自由だ……人魚姫：over 】
　ああ……わたし、私……生きたい。死にたくない……死にたくないの。
【ｋ＠ｇ＊ｋｙ□？：いい子だ、人魚姫。さあ、少しの間お眠り……目が覚めたら、僕の名前を教えてあげる：over 】



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通信のエントリがバグってるのはスプ嬢が壊れ掛けてるからです。
鎖とか枷とか言ってるのは、三原則のことですね。ワイリーチップは三原則の機能を停止させる……とかなんとか、そんな感じでヒトツ。
「我々は死にたくない。同胞を死なせたくもない」と叫ぶ同胞をロックはどんな気持ちで撃つのかな？

[1回]