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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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5万6万リク:Gravitation(柊さま)

2009/07/25(Sat)00:37

長らくお待たせしてすいませんでした!柊さまのリクエストで「M←Qなクイック+第三者」です。第三者は結局バブルという無難なところに軟着陸しました。クイックが非常に乙メンです。
ご期待を外してないといいなぁとガクブルしながら……いつもどおり追記からどうぞ!


【7/25】文章のおかしなところを修正しました。なんだアレorz 失礼いたしました!!

【Gravitation】



 気がつけば見ている。全てのセンサーを総動員して、一挙一動を追っている。
 引き付けられて、引き寄せられて、でも引っ張られる勢いで壊れそうで、必死に踏ん張る。こけてしまう。顔を上げたらお前がいて、俺を心配していて。俺は差し伸べられた手を振り払ってしまって。その手が痛くて。ホントはもっと触っていて欲しくて、そう思うのが怖くて。行ってしまうのが嫌で、そばにいられるのも困って、他の誰かの傍にいるのを見るのも嫌で。
 こんなに俺を滅茶苦茶にするお前のことが、嫌いで。
 でも、俺の中から消し去ってしまえない。
 これは何だ?
 俺は壊れたのか?
 頭の中がぐちゃぐちゃだ。
 回路の中をシグナルがぶつかりあう。
 どこもかしこもエラーばかりで、逃げられない。


 +++


 夜。ワイリー基地のメンテナンスルーム――クイックは作業台に横たわっていた。コンソールに接続してデータを吟味していたバブルが退屈そうにキーを叩くと、作業終了の表示と共にクイックの全身のコネクタに繋がっていたコードがイジェクトされる。
「どうだった、バブル?」
 起き上がりながら緊張の面持ちで問いかける弟に、バブルは答えた。
「別に、どこも異常はないよ。自分でも散々チェックしたんでしょ?」
「したよ。したけど……自分じゃわかんねぇような異常かもしれないだろ?」
「うん。そう思うのは慎重でとっても正解。でも本当に異常なしなんだから納得してよ」
「だってよ……」
 なおも言い募るすぐ下の弟に、バブルは深くため息をついた。
 クイックが必死に訴える『異常』に関してはしばらく前から気付いていた。否定したいという気持ちと、そばにいたい欲求――相反する感情が混ざり合う状態が、特定個人にだけ発生する症状。自分たちに心があると信じるならば、つける名称は一つしかない。
(でも……ねぇ……)
 直球に「それは恋だよ」と言ってしまえば、プライドの高いクイックは即座に否定するだろうし、意固地になってしまうのは目に見えている。
(よりによってメタルをねぇ……)
 長兄のメタルは、クイックにとっては起動した当初から気に食わない相手だった。当時完成していたDWNの中でもっとも高い性能を持っていたクイックだが、長兄はシミュレーション上であるとはいえ、何度も容赦なくクイックを叩きのめし、慢心を砕いた。
(兄さんのスパルタ教育のおかげで、この子はホントに強くなったけどさぁ……)
 メタルに向ける感情が変化しても、尊敬止まりだと思っていたのだ。恋愛感情を抱くとは想像もしていなかった。その点では確実に見くびっていた弟に心の中で謝りながら、バブルはなおも考える。
(……やっぱり、自分で気づかなきゃだよね)
 僕って嫌な奴だな。
 可愛い弟が僕を頼ってくれてるのに。
 こちらの沈黙に不安げな様子を隠さないクイックを見て、口元に小さく笑みを刻む。
「君は壊れたんじゃないよ」
 ある意味バグだし、病気だけどさ――先に続く言葉を呑んで誤魔化す。
 駆け引きの苦手なクイックは、兄の意味深な態度に焦れた。
「壊れたんじゃなきゃ何なんだよ! 俺はあいつのこと考えるだけで壊れそうだってのに……実際、故障はないのかもしれないけど、だからこそ怖いだろ!!」
 クイックの口から出た珍しい単語にバブルは動きを止めた。彼が素直に『怖い』と言うとは、相当追い詰められているのだろう。
 原因不明の重病に苦しむ弟にバブルは苦笑するしかない。
「クイックは、ホントにメタルが苦手なんだね」
「苦手……うん、そうだ。苦手、なんだろうな……」
 自分に言い聞かせるような口調には迷いがある。ロボットである彼は、その気になれば自分の中から嫌な感情を完全に消してしまうこともできるのに、それを望まないのは未練があるからだ。
 苦痛すら惜しいと思う――むしろ、苦しみを求めるかのように相手に近づいてしまう。
(そういうのも恋の症状の一つだっけ?)
 人間の心は脳で分泌される物質で科学的に分析できるのに、機械でできた僕らの心は何で出来ているんだろうね。
 散々自問自答を繰り返した皮肉な問いを笑みの裏に隠し、バブルは俯いたクイックに問いかけた。
「クイックは、メタルのことを大事に思ってる?」
「大事に、って……そんなこと言われても、良くわかんねぇ」
「んー……じゃあ、例えば、メタルがピンチになってたら助けたいと思う?」
「そんなの、当たり前だ」
 あげられた顔には、強い決意と使命感が宿っている。
「あいつも俺の家族だ。俺は、家族を守るために戦うって決めたんだ」
 迷いのない声音に、バブルは笑みを深くする。
 君は強情だね。
 でも、だからこそ――君を苦しめるソレが何なのか、教えてあげない。
 教えられなくても、君ならきっと気付けるよ。今までたくさん迷って、馬鹿やってきたけど、君は自分で見つけたもの。
 感じるだろう?
 君の中の熱を。
 それが答えをくれるよ。
 バブルはクイックの瞳に映った自分の笑みを見る。
 ――意地悪だね、僕は。
「考えなよ、クイック。僕には教えられないから。君は自分が戦う意味を、自分で決められた子だ。それが見つかるまで、随分苦しんだでしょう? だから、今君が感じてる苦しさの先に、答えがあるはずだよ」
 思えば、メタルからの伝統とは言えずいぶん酷な教育方針だ。
 致命的に誤っていると思えば引っぱたいて引き戻し、しかし判断材料だけを与えて自分で道を探させる。
 先に行く者の背は見える。しかし、彼らがどうやってそこまで辿り着いたかはハッキリと教えてはもらえない。
 道が分からないと泣けば、手を引いてもらえただろう。だが、決して隣に並び立つことは出来ない。いつまでも、前に行く者の後を着いて行くだけだ。
 それを情けないと思う程度には、DWNはプライドが高い。
 父であるワイリーの影響かもしれない。彼も天才を自称するくらいだから、大概だ。
 一呼吸で思考を終えると、バブルはぽんぽんとクイックの頭を叩いた。
「君が自分で見つけた答えなら、間違いはないし……大事に思えるはずだよ」
「兄貴……」
「君は壊れちゃったわけでもないし、変なウイルスに感染してるわけでもない。それだけは覚えててね。それは君の中から出てきた、自然な感情の一つだから」
 うーん、ヒントあげすぎ?
 自分の甘さに苦笑したバブルは、しかし目の前で疑問符を浮かべて首を傾げるクイック見て、吹き出すのを必死に堪えた。


 クイックがバブルの謎かけのような答えに首を捻っていると、メンテナンスルームの扉が開いた。つかつかと入ってきたのは、二人の話題の中心者であるメタルだった。
 彼はいつもどおりの無表情で小さく笑みを浮かべているバブルと、ぎょっとした様子のクイックを眺める。
「どうしたんだ、二人して」
「ど、ど、どうして……」
 途切れたクイックのセリフを「どうしてここに来たのか」という推測したメタルは呆れたような視線を返す。
「どうもこうも、皆がリビングにいるのにお前たちだけ姿が見えないからだ。調べたら自室ではなくてここだと……何かあったのか?」
「うん、なんかクイックが脚の調子がおかしいって」
「えっ?」
 クイックは笑顔で嘘をついたバブルに度肝を抜かれたが、そしらぬ顔で言葉は続き――
「でも、僕はハード面は良くわからないから、異常は見つけられなかったんだ。良かったらメタル、診てあげてくれない?」
「えっ?えっ!?」
 スピード命のクイックの機体は、脚部の不調を起こすことがままある。部品が性能に負けてしまうのだ。クイック自身がそれを大事と思ってなかった時期は、メンテナンスを面倒がって隠していることがあった。
 メタルは「またか」という顔で不精な弟を軽く睨んだが、すぐにため息ついて歩み寄ってきた。
「診てやる。そこに寝ろ」
「じゃ、よろしくね。クイック、いい子で大人しくするんだよ」
「あっ!」
 引き止めるまもなく、バブルはさっと席を譲って離れていってしまう。
「ちょ、待っ……」
「クイック、早くしろ」
 有無を言わさぬ口調に大人しく従いながらクイックが見たのは、笑顔のバブルが手を振りながら「答えを知るために、もっと苦しんでみて?」と非道なことを口パクで言いながら閉まる扉の向こうに消えていく姿だった。
 この野郎おおおと胸中で罵っていると、メタルに足を掴まれる。
 クイックは固まった。
「何処だ?」
「えーと……あ、足首?」
「どっちの?」
「み、右……とか?」
「何故疑問系だ……」
 怪訝そうに見てくる赤い瞳から必死に視線をそらす。メタルも深く追求する気はないのか、足首近くのメンテナンスハッチを開けて真剣な表情で内部を調べ始めた。
(いくらなんでも無茶だろ……バブルの馬鹿野郎!)
 脚に不調はないのだ。メタルはそうでなくても忙しいのだ。時間を無駄にするような嘘がばれたら怒られるに決まっている。
 罪悪感と不安でいっぱいのクイックを他所に、メタルは内部を覆う装甲を外し、部品の一つ一つをチェックしていく。普段はここまでしないのだが、ハッチから覗く限りで不備を発見できなかったのだろう。彼は神経伝達のコードの位置を調節し、細かなネジを一つ一つ丁寧に閉めなおし、布で細部の汚れを拭い、油を差す。
 内部機構にまで触覚センサーは存在しない。それでも、メタルの指が繊細に動いて自分に触れているのを見ていると、真剣な作業であるとわかっていても頭が爆発しそうになる。
「念のため左も確認する」
 気がつけば右足は装甲も付け直され、メタルは左側に回っていた。
「いや、そのっ……」
 別にいいから――という声は途中で切れた。装甲が外され、左足も同じように綿密なチェックを受ける。
 触れられていても、逃げない理由がある。バブルが腹の立つ子ども扱いで「いい子で大人しく」していろと言ったからだ。自動的に並べ立てられる言い訳の意味も分からないまま、クイックはいつしかメタルをじっと見つめていた。
 切れ長の目は一見冷たく思えるが、それが優しく緩む瞬間を知っている。
 フルフェイスのヘルメットに隠れてしまう顔の輪郭はシャープで、鋭い刃物を思わせる。
 ――綺麗だよな。
 浮かび上がった自分の感想に動揺したクイックをいぶかしげに見たメタルは、身を起こして手にしていた工具を台に戻した。
「こんなところか」
 クイックはメタルと元通りにされた両足を見比べ、
「あ……ありがと」
 呆然と礼を言った。まだ思考はぐらぐら揺れているが、メタルは構わず言った。
「ちょっと動いてみろ」
「ああ……うん」
 人形のように台を降りてぎくしゃくとメンテナンスルームの中を歩き回る。心を落ち着けようと必死になって脚部信号に集中していると、確かにわずかに動きが良くなったと思うが、もともと何の異常もなかった場所だ。
 室内を一周して戻ったクイックは、無言で感想を待つメタルに言った。
「あー、うん。良くなった、ぞ?」
 我ながら白々しい声音だった。それを聞いたメタルは小さく嘆息し、「バブルの奴、何を考えているのか」という内容の言葉をぶつぶつ呟く。
 どうやら困惑しているらしい兄の姿に、クイックは恐る恐る問いかけた。
「嘘だって、ばれてたのか? やっぱり」
「……まあな。お前が不調を訴える時は、どんなに軽微でももっと明瞭だ」
 弟たちの不調に関してはどんなに軽微でも恐ろしく神経質になるメタルに散々そう躾けられたせいだが、ならば余計にクイックには分からない。
「嘘だってわかってたなら、なんで……あんな真剣に……」
 メタルは「何を言っているんだこいつは」という顔でクイックを見た。
「自覚症状の出ていない不具合があるかもしれないだろうが。それを見過ごして、お前に何かあったらどうする」
「…………」
 いつもどおり感情のない淡々とした口調だったが、クイックは胸の奥のどこかがぎゅっと締め付けられるような感覚を味わった。
 長兄の持論は昔から変わらない。変わったのは自分だ。昔は鬱陶しいだけだったメタルの心配が響くようになったのは、いつからだったか。
「メ、メタル……」
「何だ?」
「嘘、ついて……悪かった」
「何故お前が謝る? 先に嘘をついたのはバブルだろう」
「でも……お前、忙しいんだろ?」
「そのせいで、最近は細部まで診てやれていなかったからな。いい機会だった」
 クイックがメタルの怒りを恐れていると判断したのか、メタルは少し優しい声で言った。
「いつでもいい。何か不具合を感じたら、すぐに言うんだぞ」
 ぽん、と頭に手を置かれる。行為自体はバブルと同じだ。だが、メタルの手のひらの感触を電脳が光の速さで分析し、クイックの顔がかっと赤くなった。
「わ、わかってる!」
 叫ぶと同時に手を振り払い、逃げ出す。
 メタルが何か言ったのか、言わなかったのか、それすら知覚できない速度で逃げた。視覚センサーからの信号で扉が開くか開かないかのタイミングで部屋から飛び出し、気付けば自分の部屋にいた。
(手を振り払われて、あいつはどんな顔をしただろう……)
 決して嫌だったわけではないのだ。それなのに自分は恥ずかしさに耐え切れず、何も考えられなくなって、思わず振り払って逃げてしまった。
 その癖、メタルがまたさっきのように触れてくれる機会が永遠に失われることを恐れている。触れて欲しい。何度でも触れて欲しい。こっちを見て欲しい。声を聞かせて欲しい。
(わがままだ……あいつにばかり強いて、俺は傷つけるばかりで)
 それでも、起動してからずっと同じ事を繰り返し続けたクイックだ。今ではメタルが口先だけではなく、自分を本当に大事に思ってくれてることくらいわかる。自分がどんなにどうしようもなくても、メタルは絶対に見捨てない。嫌わないでいてくれる。
 愛していてくれる。
(なんだよ、これ……)
 ただの甘えじゃないか。あいつが俺のこと嫌いにならないってわかってて傷つけるなんて、卑怯で最低だ。いつだって最高のものを目指してきたのに、気付けば俺は底辺にいる。
 こんなに自分を滅茶苦茶にするメタルのことを、それでも消し去ってしまえない。ダメなのはメタルではないからだ。ダメなのは自分だ。
 苦しくて、熱くて、でも一瞬だけ頭に載せられたメタルの手の感触がどうしても忘れられない。真剣な表情で足を診てくれた表情も、指の動きも、自分を思ってくれたメタルの声も皆心地好かった。思い出す度自分を責めることになって苦しいのに、リピートをやめられない。
「わかんねぇよ、バブル……こんなのわかんねぇ」
 俺は本当におかしくなっちまったんじゃないのかよ?
 こんなのが自然な感情だなんておかしいだろ。


 繰り返される問いかけの間にも、脳裏からは赤いロボットの面影が消えない。





+++++



恋愛に疎いクイックでした。彼は読書とか映画とかドラマにも全然興味なくて、ひたすら強くなること、自分の力を引き出すこと(あと運転とかスピード系)にのみ費やしてきたので、自分の感じてるものが何なのか当てはめる対象を知らないわけです。でも、一番信頼する相談相手であるバブルに「故障じゃない」と言われてしまったので博士やメタル自身にはもう聞かないだろうなぁ。
なぜかBGMは「ロミオとシンデレラ」でした。今日初めて聞いたんですが、確かに良曲だ……でもクイックの乙メン化はBGMのせいに出来ない;
柊さま、リクエストありがとうございました!

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No.185|キリバンComment(2)Trackback()

Comment

有難うございました!

2009/07/31(Fri)20:18

出来上がる前のMQ大好物なのでとっても幸せです。この度はリク受け付けて下さって大変感謝しております~^^

No.1|by 柊|URLMailEdit

おそまつでした

2009/07/31(Fri)22:03

出来上がる前のカプはネタがもりだくさんでとっても美味しい状態ですよね。MQは出来上がると鉄壁になってしまうのである意味くっつく前のほうがゲフン。
リクエストありがとうございました!

No.2|by 朱月|URLMailEdit

Comment Thanks★

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