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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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003:じゃんけんぽん(ALL)

2008/11/16(Sun)00:12

くだらない小ネタのはずが何か長く……でも分けるにはアレな内容なので一つにしてあります。

時系列的には【守るべきもの】の後。なんだかんだいって兄弟全員出てきました。
ほのぼのというか……アホの子たち?




↓↓↓



【じゃんけんぽん】


 基地のリビングに緊張感のない声が響く。
 絨毯の上に座り込むのは三体のロボットたちだ。
「「「じゃーんけーん」」」
 ぽん、と出された手はぐー、ぐー、ぱー。
「やったぁ! 勝った勝ったぁ!」
 飛び上がって喜ぶヒートを見て、ウッドがにこにこと微笑んでいる。彼は勝っても負けても楽しそうだ。長兄と次兄は少し離れたテーブルで幼い子供のような遊戯を和やかに見つめている。
 そして、クラッシュは自らの手を眺めながら呟いた。
「また、負けた……」
 無表情なその顔にも、どことなく悲哀が滲んでいる。
 通りすがりのフラッシュは三人を見つけて眉をひそめた。
「何やってんだお前ら……」
 呆れたというより、面妖なものを見たような呟きに、三人が口々に答える。
「じゃんけんだよぉ。見ればわかるでしょ?」
「クラッシュ兄ちゃんが新しくハンドパーツつけたじゃない。その訓練なんだよ」
「ぜんぜん勝てない……」
 暗雲を背負う二つ上の兄にヒートは容赦なく指摘する。
「だってクラッシュ、さっきからぐーとぱーしか出さないんだもん」
「ちょきは難しいんだ。あんなにさっとだせない」
「……訓練?」
 フラッシュは聞きなれない単語であるかのように繰り返した。その単語と目の前ののん気な光景がどうしても結びつかない。
「フラッシュ約束したんでしょ、クラッシュの訓練に付き合うって。でも帰ってきてからずっと忙しそうにしてるから、僕たちが代わりに付き合ってるんじゃん」
 ねぇ、と弟と目を見合わせるヒート。ウッドは微笑み返してからフラッシュにも笑みを向ける。フラッシュが忙しいのは、バブルと共に前回の任務で持ち帰ったデータの解析に借り出されているからだ。大変なのちゃんとわかってるからね、という末弟の視線にフラッシュは思わず頭を撫でてやりたくなった。
 それはそうと、クラッシュの訓練が思うようにいっていないらしいのは良くわかる。前回の任務のとき、フラッシュは一つ上の兄に手指のついたハンドパーツを付けるよう勧めた。その際訓練に付き合う約束は確かにしたが、『じゃんけん』というのはフラッシュが脳裏に描いていた訓練の光景とはかなりかけ離れたものだ。まあ、手を開いたり閉じたりするので指を動かす基礎訓練と言えなくもないが。
 先ほどちらっと見たが、クラッシュはぐーを出すのにももたついていた。しかめっ面で一生懸命ちょきを作る兄を見ながら、フラッシュは箸を使う練習なんて夢のまた夢だなと思う。
 ハンドパーツをつけてから判明したのだが、手指を操作するための基本プログラムはクラッシュのシステムと相性が悪く、不器用な兄は赤ん坊のように自力で手指を動かす練習をしなければならなかった。練習によって同じ動作を繰り返せば自己成長プログラムに経験が蓄積される。それにより自力で構築したプログラムならばシステムと齟齬が起こることもない。
 が、遠く険しい道のりであることは明白だった。
 フラッシュは大げさなため息をつき、三人の輪に加わった。
「わーったわーった。今休憩中だから付き合ってやるよ」
「じゃあ今度は四人でじゃんけんだね!」
 何が悲しくて戦闘用ロボットがじゃんけんなぞしなくてはならないのか。三人にあわせて「じゃーんけーん、ぽん」を言ってやる自分もつくづく付き合いがいいと思う。
 フラッシュが参加してから十回ばかり勝負をしただろうか。
 二回しか勝てなかったクラッシュは肩を落とし、ウッドとフラッシュが二人がかりでなだめながらちょきの練習をさせていると、軽い足音と共にクイックがリビングに走りこんできた。
「どうしたクイック、何かあったのか?」
「いや、ちょっと腹減ったからE缶……」
 メタルの問いに首を振ったクイックは、冷蔵庫に行こうとして足を止めた。
「……何やってんだお前ら?」
 彼は絨毯の上に座り込んで握ったり開いたりした手を出し合っている弟たちを見て、不思議そうに首をかしげる。フラッシュと同じ問いかけにヒートは面倒くさそうに口を尖らせる。
「だからぁ、じゃんけんだってば!」
 クイックはますます不思議そうな顔をした。
「……じゃんけん、て何だ?」
「えー、クイックじゃんけん知らないのぉ!?」
「知らん」
「まあまあ、兄ちゃん……僕たちだって子供たちに教わるまで知らなかったじゃない」
「ま、そうなんだけどぉ」
「なんだ。ガキの遊びかよ」
「違うよぉ。クラッシュの訓練なの」
「訓練?」
「クラッシュ兄ちゃん、ハンドパーツつけたでしょ?」
「できない……薬指と小指だけ曲げるなんて無理だ」
「馬鹿、親指も曲げんだって」
 こう、と見本を見せるフラッシュの手を見ながら必死の形相のクラッシュ。
 その隣ではヒートとウッドがクイックにじゃんけんのルールを教えている。
「ねぇ、ねぇ。クイックもやろ?」
 せっかく教えたのだからと参加させる気満々で兄の腕を引くヒート。
「はいはい。ちょっとだけな」
 あまりの単純明快なルールにがっかりしたのか、適当に相槌を打ちながら座り込むクイック。
 皆でやった方が楽しいよねとにこにこ顔のウッド。
 こわばった顔でちょきをつくるクラッシュ。
 いい加減イライラし始めているフラッシュ。
 弟たちを見ながら平和だなぁと頷いていたエアーは、長兄の表情がやや曇っていることに気が付いた。
「どうしたメタル?」
「いや……」
 言葉を濁すメタルの視線の先で五人の勝負が始まっていた。
「「「「「じゃーんけーん」」」」」
 ぽん。
 ぐー、ぐー、ぱー、ぱー、ぱー。
「やった! 勝った!」
 にこにこ顔のクラッシュの隣で、握りこぶしを見つめて納得のいかない表情のクイックは言った。
「おい、もう一遍やるぞ」
「よーし、やっつけちゃうもんねー!」
 勝負は二回、三回と続いていく。
 単純な子供の遊びとはいえ、一応は勝負の形式を取っている。
 負けず嫌いのクイックがはまらない筈はなかった。
 勝負が十回に差し掛かったころ、ある現象が起きはじめた。誰もがそれを偶然だと思い、不審を押し隠して口を閉ざしていた。
「「「「「ぽん!」」」」」
 ぱー、ぱー、ちょき、ちょき、ちょき。
 三十回が過ぎた頃、無残に敗れ去った自身の掌とはさみ型を作った相手の手を見比べ、クラッシュは呟いた。
「クイック、また勝ってる……」
「ふふん。まあな」
 じとっとした目を向けられ、クイックは得意げな笑みを浮かべた。
 何故か、途中から彼は不敗になったのである。あいこ以外では絶対に勝っていた。
「クイック兄ちゃん、強すぎるよ……」
「この勝率はおかしくねぇか?」
「何かずるしてんじゃないのぉ?」
 四人の弟から疑いのまなざしを向けられた彼は、なんだよと睨み返す。
「俺は清廉潔白だ!」
「クイック……嘘はよくないぞ」
 背後からかけられた言葉に、全員が振り返った。先ほどから成り行きを観察していた長兄が腕組みをして立っている。メタルの言葉に真っ先に反応したのはヒートだった。
「うそって何? やっぱクイックずるしてんの?」
「ずるといえばずるだな……クイックにはお前たちの手が見えてるんだ」
「どういうこと?」
「クイックの動体視力と反応速度は通常モードであっても俺たちのゆうに数倍はある。じゃんけんの手はぐーちょきぱーの三種類しかない。クイックは、お前たちが出す手を見てからそれに勝てる手を出す。それくらい造作もないことだろう」
 冷静な分析にクイックは言葉を詰まらせた。そこへ、弟たちの冷たい視線とヒートの糾弾の言葉が突き刺さる。
「それ『あとだし』って言うズルなんだよぉ? クイックの卑怯者ぉ!」
 正々堂々を信条に掲げるクイックの心に、『卑怯者』の三文字は深く突き刺さった。
「み、見えちまうもんは仕方ないだろっ! 俺はずるなんかしてない!」
「言い訳たぁ見苦しいな。なーにが『俺は清廉潔白だ』だよ」
 うすうす察しのついていたフラッシュは大して怒っているわけでもなかったが、日ごろ態度の大きい兄を弄る絶好の機会とばかりにニヤニヤし、クラッシュは無言のまま恨みがましい目つきを向ける。ウッドにまで「ずるはよくないよね」と言われたクイックは必死に自己弁護する。
「勝負は勝負だろ? 俺は自分の力を尽くしただけだ。何も悪いことなんか――」
「だから、クラッシュの訓練だって言ってんだろうが。兄貴みてーのは、大人げねーって言うんだよ」
「もー、クイックはじゃんけん参加禁止!」
「うう……」
 メタルはうつむいて呻く弟の肩をぽんぽんと叩いたが、種明かしをした張本人に慰められたくないとばかりに振り払われた。
 リビングにやってきたバブルは、その光景を横目に見ながら歩いて冷蔵庫へ行き、E缶を飲みながらエアーに問いかけた。
「……何なの、アレ?」
 黙って一連のやり取りを眺めていたエアーは、一つ下の弟に重々しく頷いた。
「……今日も平和だということだ」
「そう……」
 どこかずれた答えにため息をつくと、バブルは椅子を引き出して腰掛けた。
 休憩時間が過ぎても帰ってこないフラッシュを探しがてら補給をしに来たのだが、当の相手は何やら盛り上がっている。わいのわいのと騒ぐ弟たちをうむうむ頷きながら見ているエアーと自分の感想は、おそらく同じだろう。
「ま、楽しそうだからもうちょっと休ませてあげようかな」
 缶の中身を飲み干すまでの間くらいは――胸のうちでそう呟くと、バブルは目を細めて缶を傾けた。





 +++++++++

皆だって戦闘モードになればクイックと張り合えるんじゃないかな!
クラッシュはむりぽですが。

何か8人の距離感が自然に出ましたね。
ヒートのしゃべりが予想以上に幼いことが判明。ウッドはヒートのみ「兄ちゃん」で、それより上の兄は「メタル兄ちゃん」のように名前をつける模様。
バブルとエアーは精神年齢が高すぎるのでお子様に混ざらず(というか混ざれず)小動物のように鑑賞してるっぽい。メタルもそのクチですが、揉めそうなら口はだす。クイックとフラッシュはなんだかんだ言いつつも気づいたら一緒に楽しんでるタイプ。



……E缶を口から摂取するということは、胃(?)があるってことか(絵的にも飲むタイプの方が好きですが)。
食事はしない設定のつもりなんですけどね。
ヒートはボムを食べるので、何らかの形でエネルギーを摂取する器官がおなかにあるんだろうなぁ。

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No.28|ロックマン小話Comment(0)Trackback()

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