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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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007:かくて、世界は今日も輝く_01(Q+M+Dr.W)

2009/01/12(Mon)12:55

ネタはあったけどQとFの話を書いてなかったので、息抜きに書いてみようと思います。話のさわりはタイトルどおりの面子なのでFでてきませんが。
お兄ちゃんが怒ってるので苦手な方は気をつけてくださいね。


そういえば「ロックマン、腐女子」の検索で来られる方がいらっしゃるようですが……がっかりさせてすいません。あんまり掛け算なくて。

タイトルは模倣坂心中[http://jinx.in/mire/]からいただいてます。



【かくて、世界は今日も輝く_01】




「馬鹿か貴様!」
 それがメタルの第一声だった。


 最近なにやら膝から変な音がする。
 油でも差しておけば直るだろうと、自分で簡単な手入れをしたのが数日前。
 それでも異音は消えず、今日になって両膝への信号に遅延が生ずるようになった。
 流石にまずいと判断したクイックは、メタルとワイリーのいるラボに向かった。
 怒られるだろうなとは思ったのだが、まさかこれほどとは。
 クイックは作業台に横たわり、いまだに収まりが付かないらしいメタルの怒りの視線から必死に顔を背けていた。珍しく声を荒げた第一声から今までになく真剣な説教が始まり、その十分後にワイリーがそういうことなら急いでメンテしないととメタルを説き伏せてクイックを作業台に寝かせた。メタルはその後も延々と暢気な弟を叱り続けていたが、ワイリーが苦笑を通り越して呆れた顔をしているのには気づいていないらしい。
 説教の言葉自体は大して耳に入っていなかった。何よりメタルの目が恐ろしくて直視できない。彼の存在を必死に意識の外に追いやっておかないと恐怖で悲鳴を上げてしまいそうなのだ。しばらく前に聴覚センサーをオフにしたので何を言っているのかは聞こえない。わずかに残った冷静さのオブラートで爆発寸前の怒りを包み込んだ声なんて、聞いているだけで動力炉が止まりそうになる。
 体内時計を確認して呆れた。
 すでに一時間近くメタルの説教は続いている。流石のワイリーも微妙にうんざりした表情だ。まったく良くネタが続くよな、と思った瞬間、メタルのレーザーケーブルが首筋のコネクタに突っ込まれた。
 脳ミソに直接メタルの声が送り込まれてくる。
《聞いているのか貴様》
 首周りの制御を内的に奪い取られたクイックは、強制的にメタルと顔をあわせることになり、胸中で呻いた。
 怖い――!!
 どうやらクイックが聴覚センサーを切って説教を無視していたことに気づかれてしまったらしい。先ほどより明らかに怒りのボルテージが上がっている。クイックの顔を覗き込んでくるメタルの目つきときたら、気の弱い人間なら簡単に睨み殺せるし、獰猛な肉食獣だって尻尾を巻いて逃げ出すに決まっている。呼び方まで普段の「お前」から「貴様」に変わっていて、その分冷静さを欠いていることが見て取れた。
 ワイリーはプライドの高い四男の顔に力の無い笑みが浮かぶのを初めて見た。
 もちろん笑って誤魔化せるメタルではない。
《何故俺が怒っているかわかるか?》
 平坦な声が余計怖い。もう怖いという表現以外浮かばない。怖すぎて泣くことさえ出来ない。
《お、俺がちゃんと話を聞いてなかったから?》
《――十点》
 回路から直接聞こえるメタルの声が計り知れない激情に軋む。
 ダメだ、もうゴメンナサイも通用しない。
 絶望するクイックに、メタルは背筋が凍りつくほど優しい声で言った。
《もう一度最初から繰り返してやる――馬鹿か貴様は》
 傍目から見ると黙りこくってしまったように見える二人の息子を横目で見ながら、ワイリーは作業を続けた。クイックの腰から下の電源を落とし、メンテナンス用の機材に繋いでそこから電力供給。イかれてしまった神経回路を特定。膝周りは全部取り替えんといかんなぁ、こりゃ時間がかかるわいと呟くが誰も聞いていない。
《貴様の身体は速度と耐久性とのギリギリのバランスの上で成り立っているんだぞ。特に脚部は命だ。ここ数日は任務がなかったとは言え、トップスピードで走っている最中に転倒でもしてみろ。五体バラバラになるくらいじゃ済まんのだからな》
 メタルは止まらない。煮えたぎる汚泥のような声が回路から流し込まれてくる感触だけでクイックは発狂しそうだった。
《いつもいつもいつもいつも言っているだろう。関節の音がちょっとでもおかしいと思ったらすぐに博士か俺に報告しろと。もし戦闘時に体機能が正常に作動しなかったら、その時がお前の最期のときかもしれないんだぞ》
 恐怖に引きつった息子の様子を見かねたか、ワイリーが咳払いをしてメタルの注意を引いた。
「メタル、説教もそれくらいにしてこっちを手伝え。両脚外して作り直すしかないわい」
 長兄の頭は一瞬で冷めたらしい。正気に戻った――つまりはいつもどおりの冷静な目つきでワイリーを見る。
「そこまでひどいのですか?」
「クイックの速度に部品が負けちまっとる……十分計算したつもりだったんじゃがなぁ。ほれ、こことここが磨り減っちまっとるじゃろう。回路も大分焼け付いておるしな」
「やはりこまめにパーツを取り替えるしかありませんね。回路周りはもう少し弄る必要が――」
「な、なぁ」
 腰から下が全く動かせないクイックは、自分を無視して話し込む二人に声をかけた。
 メタルとワイリーが同時にこちらを向くのにまだビビりの抜けない神経がびくつく。
「け……結局、どうなんだ?」
「…………」
 二人は顔を見合わせ、小さく頷きあう。
「すまんが、脚は作り直しじゃ。お前の性能はわしの予想以上じゃったからな。計算しなおさんといかん」
「俺と博士はしばらく手が離せん。しばらくは予備の脚で生活しろ。せいぜい反省するんだな」
「はぁ? おい、ちょっと待てよ!」
 問答無用で脚が外された。



>>【かくて、世界は今日も輝く_02】


++++++++++++++


製作者の想像以上の力を発揮するって、ほんとはあっちゃいけないのかもしれませんが、でも好きです。
最近アップしてた小話とキリバンがメニューにリンク繋がってなかったのですが、これから出かけるので帰ってきたらリンク張りますね。

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No.80|ロックマン小話Comment(0)Trackback()

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