ようやく再始動。別ジャンルのスパコミの原稿に入る前に少しでも!……と。メタル以外全員です。exって「~以外」って意味で;
某所の絵茶に行きたい……!けど、明日は仕事……そのうえオイラひっきーだから o...rz
明日もなぁ……仕事さえなければッ!!
本文はいつもどおり追記からです。
【再構築_04 tear/water drop】
再起動したクラッシュは、いつも以上の無表情でむっつりと黙り込んでいた。明らかに普段とは違った様子だ。彼を囲んでいた四体のDWNは顔を見合わせ、フラッシュが代表して声をかける。
「おい、兄貴……大丈夫か? なんかエラーでも――」
「……に、された」
「は?」
聞き返したフラッシュをぐいを見上げ、クラッシュは言った。
「ロックマンに、馬鹿にされた」
「それって、コア閉鎖直前の……」
再起動をかける前にはクラッシュの電脳にもちゃんと接続をかけて現状を説明したのだが、あまり聞いていた様子はなかった。無表情のままハンドパーツのついた腕を震わせ、フラッシュがロックマンであるかのようにじっと睨みつけてくる。
「命令されたから、戦ったんじゃない。自分の意志で、戦ったんだ」
クラッシュにとって、『自分の意志で戦う』というのは非常に重要なことだった。初起動時よりもかなり改善されているが、それでもクラッシュが全力で戦うときは暴走の危険が付きまとう。その際、自分を制御するためのキーワードがそれなのだ。
明確な意思を持って破壊の力を行使すること――それがクラッシュの誇りであり、自ら悪の道に加担したワイリーナンバーズ全員の誇りでもある。
ロックマンがクラッシュに言った言葉は大体想像がつく。
クラッシュはコアの閉鎖直前に抱いた悔しさをそのままに再起動したのだ。完璧な無表情は、逆に彼の怒りの大きさを物語っている。
「わかってる。ちゃんとわかってるって……」
「悔しい」
「わかってるっての……あのな、悪ィけど、これからヒートとウッドも起動すっから早くそこからどいてくれねぇか?」
フラッシュが困り顔で言うと、クラッシュは無言で作業台を降りて邪魔にならないよう壁際に移動し、エアーとクイックがヒートの身体を台に横たえるのをじっと眺める。端末と結線したバブルが起動の準備を行い、他はコードを繋ぎ、その間クラッシュは無言で立ち尽くしていた。
真っ先に妙な緊張感に耐えられなくなったのはエアーで、彼は弟の傍に歩み寄り膝をかがめて目を合わせる。
「クラッシュ、よかったらお前も手伝いをするか? 見てるだけでは退屈だろう?」
彼は次兄を見上げ、言った。
「くやしい」
「クラッシュ……」
一つの感情に縛られたように繰り返す弟の気持ちは痛いほどわかった。エアーはいたわりの気持ちを込め、装甲がないせいでひどく華奢に見える肩にそっと手を置く。
それがスイッチであったかのように、幼さの残るクラッシュの顔がくしゃくしゃにゆがんだ。
「う、ゔゔゔ~~~~~っ!!」
クラッシュは装甲のない軽い身体で地団太を踏み、獣のように、赤子のようにうなり声を上げて泣いた。
「ク、クラッシュどうしたんだ。おい、お前たち……どうしたら……」
おろおろと弟たちを見たエアーの腹に軽い衝撃が走った。地団太を踏むのをやめたクラッシュは、兄の巨体にしがみついて泣き続ける。
「ゔゔ~~~っ! ゔ~~~~~~~っ!」
「おい、お前たち……」
助けを求められたフラッシュとクイックは顔を見合わせ、コンソールで目を閉じたバブルを見た。カメラで様子を見ていたバブルがスピーカー越しに言う。
《こっちは大丈夫だから、エアーはクラッシュについててあげて》
「そうだな……起動はバブルがやるし、他の作業は二人いれば十分だ」
「兄貴は泣き止むまでついててやってくれよ」
「あ……ああ……」
てきぱきと作業を再開する弟たちから視線を戻す。
クラッシュの気持ちはわかる。きっと自分たちと同じだ。
悔しくて、哀しくて、情けなくて、腹が立つのだ。
馬鹿にされたことが悔しくて、
仲間を倒されたことが哀しくて、
負けたことが情けなくて、
夢を砕かれたことに怒りを覚えている。
同じだ。ただ、表現方法が違うだけだ。
エアーは小柄なクラッシュを抱き返し、その頭を撫でてやった。その行為が何かを思い出させたのか、細い肩がびくりと震える。
「ひっ……うう……」
クラッシュは新たな涙を流しながら、エアーの身体に顔を押し付けてより強くしがみついた。
「では、メタル以外の起動は終わったんじゃな?」
《はい。パーツが足りなくて完全修復とは行きませんが、稼動はしています。今のところ再起動によるバグも見つかっていません》
「そうか……」
ワイリーはひとまず安堵のため息をついた。ライバルでありかつての友であるトーマス・ライトに保護されている彼は、DWNたちと連絡をとるにもライト研究所の端末を借りなければならない。隣街にいる彼らの元へ行くことができるのはまだ先の話だろう。
モニターに写っているのはバブルだが、彼の背後には他のロボットたちが見えた。
片づけをしながら時折こちらに視線を向けるエアー、クイックは彼らしくもない硬い表情で腕組みをしたままうつむいている。壁際のベンチに座って泣いているのはクラッシュとヒート。一番下の弟であるウッドが二人に寄り添い、肩を抱いていた。
《ずっとあの調子なんです……全員起動が終わったのは二時間くらい前なんですけど》
《クラッシュとヒートはガキだからな……あれじゃどっちが兄だか弟だか》
バブルの肩越しに皮肉ったフラッシュは、しかし三人に柔らかい視線を向けている。
ワイリーは苦笑し、この場にいない最後の一人について聞いた。
「それで、メタルの状況はどうなっている?」
《……ボディ部分はまだ半分だけです。起動が可能なDWNを優先にしたので、パーツがなくて》
「ううむ、パーツの確保が最優先じゃな……」
《フラッシュが電脳空間に作っていた隠し口座がありますし、凍結された博士の口座が何とかなれば買いに行くこともできます。でも、破損したコアの修復は……正直、僕らには荷が重いです》
《ステータスをこの端末で見れるようにすりゃ、博士ならアドバイスできるでしょう? それで指示を出してもらえれば……》
顔を曇らせるバブルの横から顔を出したフラッシュが言う。何もしないよりはマシだとワイリーは頷き、
「よし。とりあえずメタルのステータスログを全部こっちに送ってくれ。何、ライトの奴の研究所じゃ。大容量の通信なぞ屁でもないじゃろ。確認して指示を出す」
《わかりました。僕たちだって、ただ黙って手をこまねていているつもりはないですから》
バブルが笑う。無理をした笑いだとすぐにわかった。
長男の不在は残された弟たちにかなりの動揺を与えているようだ。
ワイリーは主であり父だったが、ほとんど研究室にこもっていた。実質的に彼らをまとめていたのはメタルなのだ。
そのメタルが今はいない。支えを失ったような気持ちなのだろう。
彼らの傍にいてやれないことが悔やまれる。
「指示はメールになるだろうが、次の通信もなるべく早く――」
《いい加減にしろ、いつまで泣いてるつもりだ!》
突然の怒声にスピーカーが音割れした。ワイリーは驚きに軽くのけぞり、バブルやフラッシュも背後を振り返っている。
怒鳴ったのはクイックだった。
《泣いてたって何もならないだろ! やらなきゃならない事は沢山あるんだ。それにヒート、お前はウッドの兄貴だろ? 情けないと思わないのか!?》
クイックがこんな風に激しく誰かを叱責することなど初めてだった。クラッシュとヒートは泣くことも忘れて目を丸くし、二人と親しいフラッシュが音を立てて席を立つ。
《おいクイック! そりゃちょっと言いすぎだろうが!》
《フラッシュ、喧嘩は止めろ!》
エアーが仲裁に入ったが、画面外でクイックとフラッシュの言い争う声が響いた。クイックとフラッシュの喧嘩は珍しくもなく、戦闘能力はほとんどない今ならば大事になることはないだろうが、今回は普段のそれとは質が違った。
クイックがあんな風に苛立つのも、フラッシュがそれに過剰に反応してしまうのも、大きな不安が内にあるせいだ。
「大丈夫かの……?」
《ええ。まあ、殴り合いになっても大したことはできないですし》
「すまんな……一刻も早くお前たちの元へ帰れるよう、わしも頑張るからな」
《はい》
頷くバブルの背景で、怒鳴られてぽかんとしていたヒートが弟を見た。
《ウッド……》
《いいんだよ兄ちゃん。僕は大丈夫だから》
末っ子はそう言って笑ったが、それは眉尻を下げた笑みだ。それを見たヒートの目から、止まっていたはずの涙が溢れた。
《ウッド……ご、ごめんね。ごめん、ごめんね……ぼく、お兄さんなのに、ウッドを慰めてあげなきゃいけないのに、ごめん……ごめんね》
《兄ちゃん……泣いてたらまたクイック兄ちゃんに怒られちゃうよ。僕は大丈夫。皆がいるもの。メタル兄ちゃんだって、すぐに良くなるよ》
兄の小さな身体を抱きしめるウッドを眺めていたクラッシュは、濡れた頬を手の甲で拭い、口をぎゅっと引き結んでうつむいた。
「…………」
許されるなら今すぐ彼らの元に飛んでいって抱きしめてやりたい。
彼らが流すものをただの洗浄液と呼ぶか、それとも涙と呼ぶのか。
破壊された息子たちを前に自分が流した涙と彼らのそれはどう違うのか。
彼らの涙は、紛れも泣く本物。
彼らの悲しみは、彼らだけのものだ。
ワイリーは胸の奥に湧き上がる熱い疼痛に目を細めた。それに気づいたバブルが首を傾げる。
《……博士?》
「ん? ああ、なんでもないわい。じゃあ、そろそろ通信を切るからな。早いところデータを送ってくれ」
《わかりました博士。すぐに……あの》
「なんじゃ、バブル?」
《いえ。ただ、おやすみなさい……って。ほら! 皆も、博士に挨拶しなよ。通信切っちゃうよ?》
声をかけられた兄弟が次々にモニターの前にやってきて、遠く離れた父とおやすみの挨拶を交わす。
「おやすみ、お前たち。あんまり無理はするんじゃないぞ」
にっこりと笑ってワイリーは通信を終えた。同時にモニターに新たな表示が浮かび、データが転送されたことを告げる。バブルがメタルのステータスを送ってきたのだ。
「メタル……わしの名に懸けて、必ず助けてやるからな」
端末を叩いてファイルを開き、知らぬ者に文字と数字の羅列にしか見えないデータに目を通していく。
おやすみとは言ったものの、ワイリーの一日はまだ終わりそうになかった。
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【再構築_05】へ
一応の注意書き:05は腐向け(M←Q)になります。相変わらずメタル不在ですが。
++++++
ロックが謝ったのはクラッシュが停止した後なので、クラッシュはそれを聞いてません。泣くクラッシュとヒートのセリフが書きたかった……んだ。
この話、プロット切ったら10話で終わる感じになりました。
頑張って最後まで書こうと思います。
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