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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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2024/05/16(Thu)01:25

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006-03:再構築_07(ALL)

2009/06/19(Fri)23:14

機能の記事の意味不明さにガクブルしつつ、そろそろ一気に終わらせたいなぁと続きをあげてみます。久しぶりにメタルも出てきますが、まだ下げますのでご注意ください。

プログラム意識がどうかというのは完全に想像なのでいろいろ辺ですが、それっぽくしようとあがいてるだけの演出ですので、いつもどおり生ぬるくスルーして下さい。
一応メトレスしてるのでご注意。


【10/18追記】今になって8へのリンクが張られてなかった事に気づいたので張りました;



【再構築_07 metal fatigue】



 ばらばらになっていたものがゆっくりと形を取り、目を覚ました。
 デジタルの闇。
 意識だけが影のように佇む、小さな部屋のような場所。
 覚醒の契機となったのは何度も繰り返されるテストシグナルで、馴染みのある刺激はシステムの起動を呼びかけるものだと知れる。
 彼は何も考えぬままその一つを掴んだ。
 自分が何なのか、思い出せない。
 かつて何者かであった『己』というものは確かに存在していたはずなのだが、応えに続くはずの扉は閉ざされている。手の届く所にそれはあるのはわかっているが、検索すべきそのデータの名前は不明。
 そして、自己という莫大な疑問符よりももっと大きな喪失感があった。
 自分はかつて、何かを望んでいたのだが、それはもはやどう足掻こうとも叶わないものになってしまった。そんな確信と徒労感だ。
 空虚さにため息をつくような気分で掴んだままだったシグナルを離す。
 応答となったシグナルは、『外』へ飛んで行き――繋がった。
【Bubble:――メタル! メタル!? 聞こえる!? お願い、答えて!!:over】
(ああ、そういえば俺はそういう名前だったな)
 メタル。
 形式番号DWN.009METALMANで検索開始――ヒット多数。
 [DWN.009] MAIN OPERATING SYSTEM : metalheart
 RECONSTRUCTION STURT……………DONE.
 MEMORY DRIVE [SUCCESS:097 / ERROR:002 / OVERRUN:001]// connected.
 COMBUT SYSTEM [SUCCESS:084 / ERROR:010 / OVERRUN:006]//connected.
 EMOTION DRIVE [SUCCESS:002 / ERROR:072 / OVERRUN:026]//connect failed.
……………RETRY? [Y/N]
 そこらじゅうに散らばっていた『己』とのリンクが確立し、記憶のデータファイルが展開。
 砕かれる前の記憶。
 戦いの記憶。
 家族の記憶。
 そして、それよりも古い――そして、長い長い、生誕までの道のり。
 自分を取り戻していく感覚はしかし、喪失感を埋め合わせはしなかった。
 DWN.009メタルマンという存在は何なのか、全てを取り戻しても、それがゆえに埋められない。むしろ、穴は深く大きく広がるばかりだ。
 遂行不可能なタスクがある。
 埋めることが出来ないなら、生まれてきた意味すらないほど、重要だったこと。
 人間の道具存在としての束縛を離れて自由な意志を与えられたとき、自分自身で定義したもの。自ら定めた宿命。選び取った存在意義。誇りの到達点。
 それが無意味なものになってしまったとしたら、結論はただ一つだ。
【Bubble:メタル……お願いだから…………っ:over】
 必死に呼びかける弟の声を珍しいと思いながらも、それ以上のことは感じなかった。
 感情を生み出すシステムはエラーを起こして停止したままだ。再接続を掛ける必要性は感じられず、リトライの意思を問いかけるプログラムに[N]と答えて処理を中断する。
 ぽっかりと開いてしまった穴を埋めることは、もうできない。
 過ぎ去った時は、覆すことはできないのだから。


 その夜、自室で設計図とにらめっこしていたワイリーは、ノックもせずに扉を開けた家主を軽く睨みつけた。
「なんじゃライト……いかにわしがお前の監督下にあろうと、いきなり入ってくるのは失礼じゃろうが。囚人ではないのじゃからな」
 家主――彼の学友にしてライバルであるライトは、普段は温和な顔に困惑の表情を浮かべていた。
「仕方がないだろう。君のロボットから連絡があって、すぐに君を呼んでくるよう頼まれたのだから」
「わしの……? 誰からじゃ?」
 胸騒ぎがしたワイリーは、手にしていた紙束を放り出して立ち上がった。
「バブルマンだ。妙に切羽詰った様子だったので事情を聞きたかったのだが、君意外には話せない事だと言われてな……」
「バブルが……じゃと?」
 ワイリーの顔が曇った。バブルはDWNの中でも特に冷静な方に入る。そのバブルが慌てて通信を求めてくるなど、どんな事態が起きたというのか。
 まさか――
 心配そうな友人の脇を駆け抜け、ラボに向かう。
 回線が開いたままの端末に飛びつくように座ると、画面の向こうでじりじりとしていたらしいバブルが縋りつくような声で叫んだ。
《博士っ! ワイリー博士!! ぼ、僕ら、もう……どうしたら、いいか……っ》
 いまだヘルメットのない少年の素顔は洗浄液の涙を流し、苦痛と混乱に歪んでいる。
 バブルの泣き顔など、ワイリーですら見たことがなかった。
「落ち着くんじゃバブル。一体何があった?」
《メタルが……メタルが……っ》
「落ち着いて話すんじゃ。メタルがどうした?」
 ワイリーは錯乱しているバブルを宥めて話を聞きだした。
 コアを損傷していたメタルの修理は、皆の不安をよそに成功し、数日前にボディも駆動可能な程度まで完成していた。あとは再起動を待つだけとなり、昨日から兄弟で交代しながらメタルのメインシステムに起動を促すシグナルを送っている最中だった。
 そして二時間ほど前、ようやく応答があった。
 慌てて回線を開いたバブルに、メタルは現状を聞いたという。
 ワイリーの敗北と、彼がライト博士の研究所で監督下に置かれ、新たなロボットの共同開発を行っているということ。
 破壊されたメタルを皆で修理してきたこと。
 そこまで聞くと、兄はバブルの言葉を遮り、こう言った。
 ――これ以上俺に時間を割くな。俺のことは廃棄してくれ。
 呆然としたバブルが問いただすと、メタルは同じ言葉を繰り返した後回線を切り、自己閉鎖モードに入ったらしい。
《な、……何度も、接続を試みたんですが……応答して、くれなくて……っ》
 しゃくりあげるバブルの肩に、青い手が置かれた。画面外でフラッシュの声がする。
《兄貴。俺が代わるから》
 言葉は普段どおりだったが声は優しく、バブルは泣きながら何度も頷いて席を立った。
《あー……博士、代わりました。さっきまでメタルに接続かけてたんですけど》
 フラッシュは少なくともバブルよりは冷静だったが、ショックなことには変わりがないのだろう――表情にはやや憔悴が見えたが、父であるワイリーの顔を見てそれが少しだけ緩む。
「フラッシュ……どうじゃった?」
《ダメですね。拒否られてるんじゃなくて、もうシグナルが届いてないみたいです。自己閉鎖って言うだけあって、頑固ですね》
 冗談のようにいって唇を歪めても、笑みには見えなかった。
「皆はどうしている?」
《どうもこうも……大騒ぎですよ。特にちびっ子なんかは。今は別の部屋にいますけど……大変だったんですから》
 そうだろう。メタルを修理し兄弟が再び揃うその日を心の支えに、彼らは今まで生きてきた。その当人が目覚めを拒否し、廃棄――『死』を望んで沈黙したのだ。
「フラッシュ……」
《はい、何でしょう?》
 返答は平静だったが、瞳には指示を請う色がある。こうしろ、と何か道を示して欲しいと懇願する色。
 少しでも心を支え、落ち着けてやるのが父の役目だ。
「メタルへの電力供給を一時ストップするんじゃ。メタルの意志による自壊を、これである程度防げるはずじゃ。わしは……可能ならば明日、無理なら明後日には絶対そちらに行く。あきらめて自暴自棄になるなと皆に伝えてくれ」
《わかりました――……いきなりのことでご迷惑かけて、すいませんでした》
「何を言っておる……お前たちはわしの大事な息子だと、いつも言っているじゃろうが」
 優しく言うと、フラッシュが力ない笑みを浮かべた。
《はい……じゃ、親父さん……おやすみなさい》
 ワイリーも息子に笑みを送り、回線を落とす。
「…………やはり、か」
 彼は静かに息を吐いた。
 メタルの再起動拒否は――密かに、ありうるかもしれないと思っていた。
 親として、数十年を共に過ごした相棒として、彼のことを一番よく知っているのは自分だ。0と1で作られた意識をその基礎とするためか、ワイリーの最初の息子は極端な判断を下すことがある。
 初めて自由意志と感情を与えられたメタルは、己の存在意義を自ら規定した。
 ――俺にとっては、これが最も重要なことですから。
 それはいつか書き換えられるかもしれない、と彼は語った。だが、それはこの目的を果たした後であろうと。
 ――俺は、自らを誇りに思いたいのです。だから、必ず……
 彼はあまりに真面目で揺るぎがない。だからこそ、脆い。メタルの極端さは、彼自身が苦痛と感じることに対して特に顕著に現れる。
 だが、こちらにも否はあろう。自分たちはただ、考えたくなかっただけだ。自分も息子たちも、敗北というどん底の中でメタルを言い訳にして生きてきただけ。
 メタルさえ目覚めれば、全て元に戻れる――そんな思いがあったはずだ。
 いい加減に目を覚まさなくては。行動しなければ。
 ぼんやりしていれば、大事なものは勝手に失われてしまう。
「ライト、話がある!」
 ワイリーは友の名を呼びながら、ラボから出て行った。


 ワイリー博士の指示通りに処理を行ったフラッシュが居間に行くと、そこにはお通夜のような雰囲気が漂っていた。
 初めて家族に泣き顔を見せたバブルはウッドに肩を抱かれ、膝に乗せたヒートを抱きついていた。年少組二人の顔には困惑の色が濃い。まだ事態を理解することを心が拒否しているのかもしれない。
 クイックは窓際に立って外を睨みつけ、クラッシュは薄いバインダーを抱きしめて所在なさげに立っていた。その様子を黙って眺めていたエアーが、戻ってきたフラッシュに気づく。
「どうだ?」
「とりあえず、博士に言われたとおり電力供給を切った。博士は明日か……明後日には来ると言っていた。あと……自暴自棄になるな、だと」
「そうか……」
 博士が来てくれる。その一言で、少しだけバブルたちの表情が緩んだ。博士が来てくれればなんとかなるのではないか――戦闘用ロボットの判断は希望的観測など許しはしないが、心は縋る先を求めているのだ。
 それでも気分が晴れることはなかったのか、クラッシュがぽつりと呟いた。
「メタル、疲れちゃったのかな……」
 彼は無表情な顔に寂寥感を漂わせ、手にしていたバインダーに視線を落とす。
 それは、毎朝研究所の前に投げ出されている広告の裏が白いやつだった。どれも不ぞろいな汚い字がいっぱいに書かれている。
「もう俺たちの面倒見るの……疲れちゃったのかな。一緒にいたく、ないのかな」
 クラッシュは不器用だが、努力家でもある。戦いが始まる前から字の練習をしていた彼は、負けてからもやはり練習を欠かさなかった。チラシの裏に当番表を書くのはクラッシュの役目だったし、ペン型のツールで日記を書いてデータとして保存もしていた。
 彼の字は、もう普通の子供並み程度にはまともな形になっていて、兄弟は皆、彼がメタルに上手くなった字を褒められる事を心待ちにしていたのを知っている。
 上手になったな。よく頑張った――と、その言葉を望んでいたことを。
 自身の努力の証をつづったバインダーを抱きしめ、クラッシュはぼそぼそ呟く。
「メタル、ずっと苦しんでた……ずっと怖がってた。俺たちが壊れて、死んじゃったら自分のせいだって思ってた…………だから、もういいよって、言ってあげなきゃいけないのかな……もう休んでも良いよって、いままでありがとうって……」
 俯く。
「……お別れしなきゃ、ダメなのかな」
 戦闘用に特化された判断は、希望的観測を許さない。
 だが、その判断に心が耐えられるかどうかは別問題だ。
 クラッシュの息が引きつり、押し殺したような泣き声に変わった。エアーが肩に触れると、その腹に顔を埋めるようにして抱きつき、声を震わせる。
 誰も、何も言わなかった。
 確かにメタルの背負ってきたのは激務としか言い様がないものだった。いくつかの役割を弟たちに振り分けた後でも自由に出来る時間などほとんどなかったし、メタル自身もそれをよしとしていた。作戦を立てて弟たちを死地へ送り出すのもリーダーである彼の務めであり、彼らが傷ついたときは責任を進んで背負った。
 だが、これからは肩代わりできるはずだった。
 何せ、メタルなしで何とか半年やってきたのだから――自分たちは不詳の弟たちだけれど、もう彼の重荷にはならない。
 これからは、彼を支えていけるはず。
 先導してもらうのではなく対等な仲間として、共に歩いていけるはず。
 そのはずだったのに。
 フラッシュの表面上だけの冷静さが崩れた。
「手前勝手な戦闘用ロボットの俺たちが……リーダーを失ってもばらけずにいられたのは……全部あいつを復活させて、『俺がいない間、良くやってくれた。迷惑をかけた』って……そう言わせてやるためだったんだ」
 あまりのやるせなさに、自分の身勝手さを無視してでも言わずにはいられなかった。
「それが何だ! 俺たちの努力を無にするようなこと言いやがって……!」
 フラッシュの叫びに応えるように、バブルが顔を上げた。
 例えロボットであっても、『生気のない表情』は存在する。
 彼は整った素顔にそれを浮かべ、力なく言った。
「メタルが……兄さんが死を望むなら、僕には止められない」
「バブル……!」
「フラッシュには話したでしょ? 他の皆にはまだ、だけど……とにかく、僕はメタルの意思を尊重する。昔、メタルがそうしてくれたように……僕には、メタルの意思を無視して一方的に助けることは、できない……」
 震える声で言い切ると、彼は再び俯いた。
「バブルぅ……?」
 不安げに名を呼ぶヒートをぎゅっと抱きしめ、何かに耐えるように口を結んでいた。
「バブル兄ちゃん……」
 困惑の表情を浮かべたウッドが問いかけるように名を呼んでも、答えない。
 クイックは最初から最後まで何も言わなかった。ただ、黙って窓の外を睨んでいる。その顔は、半年前から変わらず表情を失ったままだ。
 一人バブルの事情を知るフラッシュは、舌打ちして皆に背を向けた。
 皆を見回し、エアーが言った。
「とりあえずしばらく様子を見よう。博士も来て下さるそうだし、皆も……メタルをどうするかを考えよう。あいつを……兄者を、どうしたいのかを」
 俺たちは、家族なのだから。
 そう言って、エアーはクラッシュの頭を撫でた。手のひらの下で頷きが返る。
 皆も、それぞれが小さく頷いていた。




>>番外【再構築_07.5】
※E→Qの番外編です。

>>【再構築_08】


+++++++++++


ライト博士をチョイ役で出してみました。
バブルは……実はブラコンなんです。口にはしませんが、恋心というか崇拝めいた信頼を向けてました。表面上はクールに振舞ってるんですけどね。
続きも早めに上げたいな、と思います。

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