ここからロック視点です。シリアスです。
悲しい話や辛い話が嫌いな方、ロックが絶対正義でなければ我慢できない方、ロックが苦しんだりするのは許せないという方は読まないほうが良いです。ロックにとっては辛い話を書いています。
OKな方はどうぞ。短めに切って04まで続きます。
【崩壊_02】
迷ってはいけない。
怯んではいけない。
躊躇ってはいけない。
戦闘用ロボットとしての本能は繰り返しそう言い聞かせ、忠告してくる。
それでも、ロックマンの足取りは重かった。
最後に残った転送装置の前で足が止まる。
ワイリー博士による二度目の世界征服計画。それぞれの基地を守っていた八体のワイリーナンバーズを撃破したときは、互いにあまり語るべき言葉を持っていなかった。
一度目の計画のときは、使命感に燃えていられた。
敵になっているのはワイリーに操られた自分の兄弟たちであり、彼らを助け、ワイリーを止めることに何の疑問も抱かなかった。
二度目の敵は、ワイリーが作ったロボットたちだった。
何故こんなことをする、と自分は問うた。
ある者は、そのために生まれたから、と言った。
ある者は、ワイリー博士の理想を叶えるため、と言った。
ある者は、ロボットを自由にするため、と言った。
ロボットと人が平等に生きる世界を作るのだと言った。
こんなやり方は間違っている――自分はそう言った。
ならば代案を示せ――『彼』はそう言った。
血の色を思わせる赤い装甲。戦意に輝くぎざぎざの刃を身体につけて、同じくらいに鋭い敵意を赤い目に宿して、彼は「こちらを間違いだというのなら、正しい方法を示せ」と告げた。
答えが出せないのならこれ以上問答は要らない。我らは我らがすべきだと判断したことをする。貴様もそうしろ――彼はそう言って武器を構えた。
操られていた自分の兄弟たちとはまったく異なる敵だった。
おとうさん、と聞こえた。
ワイリーの潜む城の置くには、八つの転送装置があった。
その先には修理されたDWNがいて……彼らは以前出会ったときよりも必死だった。
負けない、と言われた。
他の兄弟の所へは行かせない。
博士の所へは行かせない。
自分が守ってみせる。
八体のDWNは八つのスイッチを守っていた。
全てが起動すれば、ワイリーのいる場所への通路が開く。
ウッドマンが呟いた。
「ごめんなさいみんな――ごめんなさい……と……さ……」
おとうさん、と聞こえた。
激しい戦闘で聴覚センサーに異常が起こっているのだと思った。
今度はセンサーの異常などではなかった。
「……とうさん」
ヒートマンの目から光が消える。歩み去ろうとする足がエラーを起こして動かなかった。《ロック》が進むことを拒否している。わざとエラーを起こして足を止めている。
迷うな、と頭の中で戦闘用プログラムが《ロック》に囁いた。
ここで挫ければ全てがやり直しになるぞ、と。
立ち止まるわけにはいかない――心をねじ伏せ、歩き出す。
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