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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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キリバン05:もしもわたしが鼓動を諦めたのなら (W+A)

2009/01/10(Sat)18:39

5つめのお題担当ウッドです。エアーとの組み合わせってあんまりないのでエアー兄貴にしてみました。
エアーはほうっておいてもぐるぐる考えてくれるので面白いです。
相変わらずお題になってませんが……


【もしもわたしが鼓動を諦めたのなら】



 たくさんの命に囲まれているということは、
 たくさんの死に囲まれているということだ。
 生と死が回りながら連なって繰り返して、そうして世界は続いていく。


 いつものように風に当たろうと屋上に上がったエアーは、悄然と立ち尽くす末弟の姿を発見した。檜という高価な木材で作られた機体を持つ末っ子のウッドは基地の屋上で花を育てており、数日前までは満開の花が揺れていた。ウッドも満足そうだったのだが、一体どうしたのだろう。
「ウッド?」
「エアー兄ちゃん……」
 ゆっくりと振り向いたウッドは、こちらの姿を確めるとすぐに視線を戻してしまった。エアーよりもわずかに身長の高い弟に並ぶと、彼の見ているものが何かわかった。
 短い盛りを負え、花たちは枯れていた。まだ命を保っているものもあったが、数日と持たずに散るだろう。
 横目で様子を伺う。ウッドは泣いているわけではなかったが、やはり哀しそうだった。手塩に掛けて育てた花が枯れるのは辛いのだろう。だが、この弟が枯れた花を看取ったのは何も初めてのことではない。自分たちが造られてから、すでに幾度も季節は巡った。ウッドは何度でも花の種を蒔き、木々を育て続けてきた。
 花は咲いて枯れるが道理。
 命は生まれて死ぬのが道理。
 あるいはウッドこそ、自分たち兄弟の仲で最も残酷なこの世の摂理を知り尽くしている存在ではないか。
 哀しいのか、と聞くのは憚られた。哀しいに決まっている。それに、例え哀しいと答えられたところで自分に何がしてやれるわけでもない。そいつの苦痛は所詮そいつ自身でどうにかするしかない。口の上手くない自分には、気の利いた慰めの言葉も思いつかない。
(俺は一向に成長しないな……)
 どうにかしてやりたいと思うのに、どうにも出来ない無力さを思い知るばかりだ。昔から自分はそうだ。
 落ち込んで茶色く乾いた花弁を眺めていると、ふとウッドがこちらを見て笑った。
「エアー兄ちゃん、そんな顔しなくて大丈夫だよ。しばらくしたら種ができるし、僕はまたそれを蒔くよ。だってこの子達は、そのために咲いたんだから」
 きれいに咲いてくれてありがとうって、お礼を言ってただけだよ。
 花が美しくあるのは生存競争に勝ち残るためであって、自分たちがそれを愛でようと花自身には関係ない。それでも、彼らを愛でるために咲かせたのなら、その命に礼を言おう。
 それがウッドの心らしい。
 自然界というのは美しい見た目と裏腹に弱肉強食の戦いの世界である。そこには優しさなどというものが介在する余裕などない。特に植物は他者を排し、利用する術に長けている。
 いっそ清々しいほど『生きる』ことに特化した存在だ。
 いかに効率よく種を作り子孫を残すかしか考えていない彼らが、なぜこれほどまでに美しく見えるのか。
 それはきっと、剥き出しの命の美しさかもしれない。
 そう言うとウッドは笑った。
「エアー兄ちゃんらしいね」
「む……ど、どういう意味だ?」
「僕はそんなに難しく考えたことないよ。ただ、植物を育てるのが好きだし、楽しいし、皆が喜んでくれるのが嬉しくて」
 それこそ、この子達の思う壺なのかもね。
 そう言ってウッドは笑った。
「僕も、この子達みたいに生きたいな」
 それは決して、儚く散りたいという意味ではない。
 己の命を全うし、しなやかに、したたかに、最期まで生き切ろうという意志だ。
 自分たちはロボットだ。死しても土に変えることは出来ない。所詮人間によって作り出されたイレギュラーであり、自然とは相容れないモノなのだろう。
 それでも、いつか自分が鼓動を諦め、死を受け入れる日が来ても、自分は与えられた命を全うしたと胸を張って死にたいものだ。
「またエアー兄ちゃんはそうやって難しく考える」
「む……」
 ウッドに笑われたエアーは言葉に詰まった。
 自分は考えるのは苦手なはずなのだが。
「結構、自分じゃ自分の事ってわからないのかも」
「そうだな……」
「ほら、また何か難しいこと考えようとしてる」
「そ、そんなことはないぞ」
 二人が去った屋上では枯れた花々が風に揺れ、土に還る日を待っていた。



+++


不器用なエアー再び、でした。ウッドはヒートとコンビみたいなイメージがあったんですが、別に他の兄弟と一緒でも大丈夫だな。

BGMは「LION KING」のブロードウェイオリジナルキャスト版でした。サークル・オブ・ライフとかヒー・リブズ・イン・ユーとか、なんかウッドにぴったりだなと。もう一回観たいです。英語で。
生命感溢れる野性的なリズムに勝手に身体が揺れて、微妙に涙ぐんでしまうんですが、ロボットとかってそういうのあるんですかね?

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No.77|キリバンComment(0)Trackback()

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