ネタが浮かんできたので。
CとFの任務の話です。できたところからうpしていきます。
ロボットだって神頼みをする。
今日のチームはクラッシュとフラッシュだった。外部と接続されていない研究所に侵入してデータを奪うこと。他の面子が囮となって正面から派手に撹乱し、その隙に深部へ到達、中枢のマシンからデータを引っこ抜いて撤退という筋書きだ。
作戦の中核は電子情報戦に抜きん出た性能を持つ自分で、クラッシュはその護衛という役目である。護衛というなら他の兄弟でも良かったのだが、これがクラッシュということは、チーム分けをしたメタルに何か考えがあるのだろう。
研究所の裏口から進入したフラッシュは、短期記憶野からミーティング時の記憶を引っ張り出す。
『フラッシュと二人だけで組むのはこれが初めてだったな』
『うん』
いつもどおり冷静で淡々としたメタルと、弟と二人という初めての班分けに緊張気味のクラッシュ。すぐ上の兄の人形じみた無表情には、真剣さが滲んでいたように思う。
『知っているとは思うが、中枢システムへ侵入を始めればフラッシュは無防備になる。弟を守るのがお前の役目だ。いいな?』
『わかった』
こくんと頷いたときと同じままの緊張が、少年の姿をしたロボットの横顔に張り付いている。彼は、普段はメタルやエアーと共に行動することが多いし、あの二人はわかりやすい命令をくれるのでクラッシュとしてもやりやすいのだろう。しかし今回は彼こそが『兄』なのである。あの二人も他の兄弟と共にすでに研究所に突入しているはずだが、作戦中はこちらの行動を知られないため、極力連絡はしないということになっていた。頼るべき相手はいない。
知能と情緒のバランスが取れていない――わかりやすく言えばお子様なクラッシュには荷が重いのだろう。無表情の下で責任という重圧に必死に耐えていることは、フラッシュには見え見えだった。
あまり緊張されるといざという時暴走するかもしれない。それは困る。
フラッシュは兄の緊張を解すべく声をかけた。
「クラッシュ」
「!」
橙色の頑丈な装甲に包まれた肩がびくんと震えた。ぐるんと振り返った顔の中、薄いグリーンの目は見開かれ、動揺に震えていた。
「……緊張しすぎだっての」
「だって」
「俺たちの仕事は中枢に辿りついてからだろ? 今からそんなんじゃ、ロボットだって疲れちまう。ちょっとリラックスしろよ」
「うん……」
「それまでの間は警備とかもタイムストッパーでやり過ごしてくんだからな? 敵を見つけてもすぐ戦闘態勢に入るなって、メタルにもうんざりするほど聞かされたろ?」
「うん……」
ちゃんと聞いてんのかよ。
どうもこちらの言葉が耳に入っていないように見える。フラッシュはため息をつくと、さらに言葉を続けた。
「あとお前の戦い方な……頑丈なのはわかってるけど、過信しすぎなんだよ。動けなくなったりするんじゃねーぞ? 俺の腕力じゃお前担いで帰れないからな? そうなったら手足全部引っこ抜いてくことになるんだぞ。そんなの嫌だろ?」
「うん……」
三度目の返事もやはり虚ろだった。絶対に聞こえてない。この間買ったばかりの新品のカメラを賭けてもいい。
長兄のスパルタ方針というか、どうにも幼さの目立つクラッシュを厳しい状況に放り込んで成長させようという意図は別にいい。兄が経験を積んでくれるのは弟として仲間として願っても無いことだ。
だが、できるなら自分以外と組ませて欲しかった。面子を考えるに、自分以外適任がいないのは解っているのだけれど。
フラッシュはこっそりため息をつき、どうか何事もありませんようにと祈るしかなかった。
(神様……もしアンタが存在してるなら、どうか俺がこいつを担いで逃げ出すような羽目にはなりませんように)
ロボットだって神頼みをするのだ。
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