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愚者の跳躍

ロックマンの絵とか文とかのログ倉庫。2ボス、ワイリー陣営で腐ってます。マイナーCP上等。NLもあります。サイトは戦国BASARAメインです。

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スタンド・バイ・ミー_04(太陽と日輪)

2011/01/09(Sun)20:10

ぴくしぶより。
吉三、家→三、チカナリベースなので腐向けカテゴリで。

じっくり考えると意外と好きでした、このコンビ。今後もちょくちょく出てきます。
元就様、ひいてはアニキの年齢が不詳な感じですが、深く考えないほうが幸せになれると思った。




【スタンド・バイ・ミー_04 夕日の沈む朝】




「孤独ってのは、死んだ後も続くんだ! 毛利元就、永遠の孤独の底で、泣いて後悔しやがれ!」
 ああ、弥三郎よ。
 貴様がそれを言うのか。
 他の誰に言われた所で、これほどの衝撃は受けなかっただろう。
 言葉が身に沁みて、心を覆っていた氷河が弾け飛んだ。元就は激昂に身を震わせ、何かを叫んだ。
 それから先のことは覚えていない。ふと気づけば闇の中だった。
 ――ああ、死んだのか。
 数多の命を駒として使い尽くし、しかし道半ばで死ぬか。それが人の定めよな。だが、長曾我部が我の代わりに中国を治めるのであれば、我がなしたことは全て消されるか。我が生は無意味であったか。
 元就はふとため息をついた。
 死というのはこういうものなのか。やけに静かな心持ちだった。自分が死を迎えるときはきっと無念さを抱えて死ぬのだろうと思っていたがそうでもない。
 周囲を包む闇が動いた。無数の気配を感じた。群れるような――しかし、整然としたこの気配はよく知っている。
「我を待っていたか、駒ども……」
 応じるように闇がざわめいた。妙に静かだった。
 元就も同じ静穏さでもって、彼らに首を垂れた。
「そなたらの死を未来へ繋げることができなんだ。我を許せとは言わぬ。永劫の怨嗟を聞いてやろう」
 答えの代わりに、闇の中に新たな気配が生まれた。途方もない懐かしさが胸を突いた。思わず駆け寄って手を伸ばしてしまいそうになった。彼らの名を呼びたかった。だが、それはできない。自分にその資格はない。
 元就は限りない思慕と自責の念を込めて闇を見つめた。
「愛しき方々……貴方がたから受け継いだもの、我は結局取り落としてしまった。不甲斐ない奴よと、どうかお叱り下さい。御前へ逝く事など、我には到底許されぬ」
 自分の不甲斐なさにため息を着いたとき、背後からうっすらと光が差した。
『元就様! しっかりなさって下さい!』
『まだ息がある! 必ずお助けするのだ!』
『医者を呼べ! 早う!』
 声に引かれるように背後を振り向くと、そこには道ができていた。
「我に戻れと?」
 頷く気配がした。闇の中に佇む魂たちは、元就にその道を行けと言っていた。
『元就様!』
『声をかけ続けろ! 呼び戻すのだ!』
『元就様! 目を開けてくだされ!』
「……ふ」
 自分を生き返らせようと必死なその声に、思わず笑みがこぼれた。
「いまだ休息は許されぬか。それも当たり前のこと。命が尽きてもいないのに、歩みを止めることなど……」
 元就を誘う様に伸びる道は眩しかった。その光の下には、また幾多の苦難があるだろう。だが、元就は己が定めを愛している。誰に理解されなくても、そのように生きると決めていた。
「ならば我は戻ろう。いまだ辿るべき道があるのなら」
 元就は最後に闇を振り返った。
「今後も黄泉にて我を監視し続けよ。我が怯懦から歩みを止めることなきように」
 そして彼は柔らかに微笑み、歩き出した。
 二度と振り返ることはなかった。



 瞼を開くと、澄み渡った青空に日輪が輝いていた。
 この光を目指して歩き、戻ってきた。
(ならば常と同じよ……)
 ぼんやりと考える元就の周囲で、わぁっと歓声があがった。
「元就様!」
「元就様!」
「おお、目をお開けになられた!」
「医者はまだか!」
 意識がハッキリすると同時に痛みを感じた。元親の碇槍をまともに受けたのだ。鎖骨と肋骨の数本は折れている。内臓も傷ついているだろう。ぐっしょりと身体を濡らすのは流れた血か。生きている方が不思議なほどの傷だった。
 だが、自分はまだ死なないのだろう。その確信はあった。だから、多少の痛みなどどうということはない。いずれ治るものなのだから。
「貴様ら……」
 傍らで指示を飛ばしている将の一人を睨みつけ、元就は呻いた。息子の一人だったが、軍として行動している間は将駒の一つである。他者と扱いは変わらない。
「なにを猿のようにはしゃいでいる……」
「申し訳ございませぬ! ですが、我らにはまだ貴方様が必要なのです!」
「我くらいおらずとも中国は安泰、くらい言えぬのか……無能どもめ」
「申し訳ございませぬ!」
 叱られた将だけでなく、元就を囲んでいる全ての者たちが嬉しそうに破顔した。目覚めて早々の毒舌に安堵したに違いない。
 愚か者どもめ。
 それでも、何の感慨もないわけではなかった。
 此処は我の国だ。
 我はこの国のものだ。
 いままでになく強く、しっかりとそう感じた。
「毛利」
 兵たちの列が割れ、一人の男が現れた。
「徳川……」
 家康は妙に嬉しそうな顔をしていた。恐らく、毛利軍に『絆』とやらを見出したのだろう。度し難い理想家は、元就の側に腰を下ろすとにこにこして言った。
「ワシとしては、お前とはうまくやって行きたい。天下のために、お前の力を借りたい」
 理想家だが計算は上手い。だからこそ天下に手を掛けられる。
 腹の立つ男だ。
 元就はそう思いながら、家康の目をまっすぐ見返した。倒れ、指一本動かせない状態だったが、王者の矜持を失ったわけではないからだ。むしろ、今はつま先まで誇りに満ちていた。
「負けはしたが、帰属はせぬ。我を屈服させようとはせぬが良い」
「お前の望みは?」
「中国が独立と繁栄を保つこと。我は二度と、我と我が掌中にあるものを誰かの良いようにはさせぬ。それが我の望み。我が戦う全ての理由ぞ」
「そうか」
 家康は笑った。元就が嘘をついていない事を悟ったのだろう。
 そもそも、元就は己の望みについて嘘をついたことなど一度もない。詳しく説明する気がなかっただけだ。
「全てをワシの色に染めてしまおうなどとは思っておらん。そうしようとして、多くを傷つけた……後悔はしておらんが、もっと良い方法があるならワシはそれを知りたい」
「……フン」
「中国に手を出さぬなら、ワシに協力してくれるか?」
 元就の謀略を知っているくせに、家康は屈託なくそう言った。
 ――この男、存外狸だな。
 元就を取り込めば、旧友の元親に遺恨が生まれるだろうに。
 いや、元親は『忘れる』と宣言していた。それを逆手に取る気か。
 やはり狸だ。だが、この男がそのつもりであるなら――
「……よかろう」
 元就の答えを聞いた家康は、ニッコリと笑った。そして、顔を近づけて小声で言った。
「最後に毛利……ひとつだけ聞かせてくれ」
「なんだ」
 家康は無表情に囁いた。
「――“冬の蝶”はまだ飛んでいるか?」
「…………」
「…………」
 二人の間に一瞬の沈黙が下りた。
「……貴様、相当な狸だな」
「で、どうなのだ?」
「我も知らぬ。虫篭に入れはしたが、再び飛べるかどうかはわからぬ」
「そうか……」
 家康の沈んだ顔は、少なくとも嘘ではないようだった。
 迷いの多い狸だ。
「なぁ、また“蝶”の話をしてもいいか?」
「かまわぬ……“月”の話もしたかろう」
「ああ、そうだな」
 立ち上がった家康に、元就は言った。
「徳川……貴様は優しいのではない。ただ、どこまでも強欲なのだ」
「ハハ……やはりそうか。お前には、わかるか」
「わかる。貴様とは趣味が合わぬ。だが、我と貴様は同じだ」
「そうだな……」
 へらへらと笑っていた家康は、声を上げるのを止めて寂しげに微笑んだ。
「そうかもしれん」
「徳川」
「なんだ?」
 あっけらかんとした顔を睨みつけ、元就は宣言した。
「覚悟せよ。貴様が天下人となるのなら……言わねばならぬ事が山とある。我にしか言えぬ事がな」
「タハハ、おっかないな。だが、……頼りにしている」
「フン」
 家康は去り、長話に疲れた元就は目を閉じた。大分血を失っている。快癒には時間がかかるだろう。
 だが、そんなことはどうでも良いことだ。
 ――日輪が二つ、日の本を照らしよう。我が光が消されぬのなら、それは我の勝利でもある。
 そして隻眼の海賊を思った。
 全てを忘れるといった男の事を。
(生き残ったのならば……全てはふりだしに戻るか……)
 これから忙しくなる。早く怪我を治さなくては。
 少しでも体力を取り戻すため、元就は眠ることにした。

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